表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

75/145

セロの想定外

 作戦を即座に切り替えることで焦りや不安をパーティーメンバーに伝えずに済んだセロであるが、その内心はともすればこの場に居合わせた誰よりも穏やかではなかった。仲間が一撃も入れられずにボロボロにされたという以上にある事実が彼の心を蝕んでいた。


 というのも彼の持つスキル“神眼”が敵にまったく効かないのだ。これは誰にも話していない彼のスキルの弱点であるが、魔力量が自分よりも多い相手に対して効き目が著しく悪くなるのだ。


 だから、ヨミと対面した時もほとんど読めなかった。内心は当然、過去も未来もろくに見ることができなかった。ただ、敵がこの街に来ていて、それが今港に現れることだけは読み取れたから今彼らはこうして戦えている。


 こんな経験は初めてではないが、それよりもSランクの勇者以上に今の敵の情報が読み取れないという事実が彼を混乱の底に叩き落としていた。というのはともすれば勇者よりもあの男は強いかもしれないということを意味するのだ。


「クックック!今度はお前が来るのか?」


 自分の近くにいる傷だらけの二人からは興味を失ったかのように視線をセロに向ける。


「そうだ。さすがにメンバーをやられてリーダーが黙ってるわけにはいかないな。」


 今セロが使っている結界魔法 冬空駆ける木枯し(ウィンタースカイ)は単純な結界内の味方にバフを与える結界である。先程の結界以上の効果をもたらす代わりに戦場を終えるほどの規模ではなくなっている。ただ、確実に味方は全員を中に含められるほどではあるが。


 セロは飛行魔法だけでなく、風魔法も活用して最速である光魔法に匹敵するほどの速度で空中を移動する。


 彼の中で思考が高速で巡る。これまでの戦闘から得られる情報を的確に分析していく。このスキルが芽生える前までは当然のようにやっていたことではないかと、自身を叱咤しながら。


 まず魔法による攻撃が効かなかった。相手の肉体がそこまで強固なのか、それともスキルなどのまったく違う要因で無効化されたのかを判別しなければ。


 そしてパーティーメンバーのアニの神速の攻撃を回避したのはどんな原理で?その後彼女の体が一瞬硬直したのは見間違いではないはず。これも何かのスキルか?


 最後に彼が乗っているのは海神リヴァイアサンだ。海神からは攻撃の気配を感じないが、本当にないもしてこないのか?もし海神が動けば……。


 ……いずれにしても情報をもっと集めないと。まだ仮説を立てられるほど情報はない。


「……いくよ。」


 小さく呟いた直後、彼は風の槍を3本繰り出した。そして瞬時に移動し反対側からも同様に風の槍を放つ。


「無駄だぁ!!」


 男は挟まれるように放たれた風の槍を剛腕を振るうことでかき消す。すぐさま周囲を見渡しセロの姿を探すが、相変わらず彼の姿は見えない。


「くっそ!速ぇな!」


 毒づきながら男は早々に目で追いかけることをあきらめた。目を閉じ、それ以外の感覚を研ぎ澄ましていく。


 次の瞬間、男は全方位から自身に迫る気配に気づいた。


 セロは離れた場所から魔法を放てるヨミ程器用ではなかった。そのために、高速で移動を繰り返し、その都度魔法を発動させることで全方位を覆うことにしたのだ。


「フンッ!!」


 小さく気合の声を上げた直後、男の全身を風の槍が覆いつくした。


 風でできた大量の槍は共鳴し、空までまっすぐ伸びる強大な竜巻となって男に襲い掛かった。しかしそれもすぐにかき消された。


「クックック!やるじゃねぇか!死にかけたぞ、クソ野郎!」


 かすり傷さえも負わずに佇む男はそんなことを嘯く。その様子を観察しながらセロはゆっくりと姿を現した。


「お?鬼ごっこはもうおしまいか?」


「ああ、おしまいだ。魔法はもう撃った。お前はおしまいだ。」


 空を指さしながらそうセロは言い放った。


 セロの指差した先からは何かが渦を巻きながら近づいてきていた。


「なんだ?あれは?」


「よく見ればわかるだろ。竜巻だよ。ただ、さっきとは比べ物にならないほど強力だけどな。」


 風を切る不気味な音を立てながらそれは近づいてきており、男から見てもそれはとてつもない威力を内包していた。


「クソッ!あれはさすがにだるいな。」


「逃がすとでも?」


 セロはリヴァイアサンの背に降り立つと剣をぬいた。


「なんだ?魔法使いが剣で俺と戦おうとでも?」


「遅れてるな。Aランクたるもの、一芸では生きていけるほどぬるい世界ではない。」


 瞬時に距離を詰め、剣を振りかぶったセロだが、男は逃げも受けもしようとしない。


「無駄だ。この程度の攻撃じゃ、俺には届かん。」


 セロの剣は何か見えない壁のようなものによって進行を阻まれていた。それどころか何かにつかまったように引くことすらできない。


 ――これはスキル、なのか?


 男はセロに見向きもせずに空を見上げている。まるでタイミングを見計らっているかのように。


「今だな。食らえ、酸魔圧縮砲(アトミックブロウ)!!」


 竜巻の足がちょうど魔法の発動地点との中間に至ったところで男は空に向けて拳を振りぬいた。


 セロは目の前で起きた爆発に吹き飛ばされながら、自身の魔法が爆発に飲まれ相殺されているのを見た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ