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対面

「ごふっ……。」


 口から大量の血があふれ出てきます。それは当然でしょう、今私の胸の中央にはリヴァイアサンの鋭い爪がささっています。


 ですが、目的を達成することは出来ました。これで帰ってくれるといいんですけど。




 私はあの強風の中で覚悟を決めました。それは自分がたとえどんな攻撃を受けたとしても私の魔法を当てるということです。


 ……私は絶対死なないので代償が小さすぎますけどね。


 その覚悟を決めてから私がしたことは二つです。目に大量の魔力を回し、かつそれを魔法陣で強化すること。そして次に詠唱なしでも黄泉平坂より(メメントモリ)を発動できるよう、死のイメージをより深く作り出しました。初めて作った時と同じくらい掘り下げましたね。


 不幸中の幸いというか、私は身動き一つとれなかったので随分集中できましたよ。


 一つ目の方は正直賭けでした。真祖の瞳に威圧の効果があることは知ってましたが、相手は海神です。少しでも身動き止めてくれればいいなと思って用意してました。魔法陣は中心の属性を抜いて、外側の強化の効果を持つ魔法陣だけを目の中にできる限りたくさん作りました。眼球の容量的に10個しか作れませんでしたけど。


 二つ目は本命中の本命です。何度も説明しましたが、魔法の発動に詠唱は不要なんですよね。ただ速度を取ることになるので威力は落ちますが、っていう。なら逆転の発想です。威力が低いならバレないですよね?

 ということで無詠唱でちょっとづつ威力を上乗せしていくことで完全詠唱時と同じくらいの威力まで引き上げることができました。いやー、これは我ながら天才的ですね。


 その準備が終わったところで吹雪がすべて吹き飛ばされました。もうこの段階に至っては吹雪を出してもしょうがないので結界魔法に流す魔力を意図的に絞ることで吹雪を止ませました。


 そこでリヴァイアサンがのこのこ近づいてきます。


 これは正直想定外でしたが、まあやることは同じです。目で動きを止め、その隙に魔法を発動させ、攻撃を食らっても当てる。


 手をまっすぐ私の方に伸ばしてきました。おや、これは帽子をどけようとしてますね。まさか勇者様にもらった帽子がここでも活きるとは。さすがの慧眼ですね。


 確かに見えないっていうのは相手の興味をそそりますもんね。ただ、この帽子に触られるのは嫌なのでその前に仕掛けましょうか。


 少し近づいてきたタイミングでまっすぐにリヴァイアサンの目を見つめ返しました。それと同時に魔法陣を起動させ、威圧の効果をはね上げることも忘れません。


 少しでもひるんでくれたら御の字でしたが、思ったよりも有効でした。リヴァイアサンの体が一瞬ですが止まりました。


 その隙に無詠唱で準備していた魔法を発動させます。瞬時に右手が黒に染まり、そこから半透明の黒い手が伸びます。


 この距離なら外さない、そう確信を持って放った魔法は確かに命中しましたが、それの代償に私はリヴァイアサンの鋭い爪に突き刺されました。


 ……現状整理は以上でいいでしょう。それよりあれはいったい何でしょう?


 私の魔法がリヴァイアサンに当たった直後、何かが破裂する音と共にリヴァイアサンの首に武骨な首輪のようなものが浮かび上がってきました。


 そこからは5本の鎖が伸びていて、そのうち二つは途中で途切れ、残りの3本はまだどこかにつながっています。


『……すまない、勇敢な少女よ。大丈夫か?』


 どこからか声が聞こえてきます。しわがれてはいますが、それでもまっすぐ芯の通った声です。この感じはアリエルと話してるのと似てますね。


『私が不甲斐ないせいで、愛し子に手をあげてしまった。』


 手をあげてしまった……?ということはまさか、この声の主は……!


『案ずるな、リヴァイアサン。私の娘だぞ。この程度では死なん。』


『その声は……。懐かしいな。目を覚ましたんだな、アリエル。』


『ああ、今回のことは貸しにしておいてやる。さっさとその鎖を破壊して帰れ。まだその時じゃない。』


『そうしたいところなんだがな。これがなかなかに厄介な代物なんだ。私の力をもってしても条件を満たさないと壊せないんだ。』


『条件だと?』


『ああ、これをつけてきた輩の命令を5つ聞かないとこれを壊せないんだ。』


『はぁ!?それは禁忌指定してその技術も遺物もすべて抹消したはずじゃないか!一体誰がそんなものを……。しかもお前に強制するほどのものを。』


『わからない。だが、言えることは一つだ。これは間違いなく()()が作ったものだ。だれかが隠し持っていたのだろう。』


『……それしかないか。一つ間違えば私達真祖もそれには抗えないかもしれない。なら打てる手は一つだな。……術者を殺すぞ。だからその手を引っ込めろ。』


『ああ。お前の娘ならそのまま抜いても大丈夫だな。』


 その声をと共にゆっくりと体から爪が抜けていきます。それと同時に大量の血が傷口からあふれ出てきます。……まずいですね。ここからでも修復できるんですかね?思わずハリボテの結界魔法も維持できなくて解いてしまいました。


「アリエル……。」


『落ち着け、ゆっくり息を吸え。肉体の修復は私も手伝う。……おい、お前も手を貸せ。娘の体の中でいつまでも寝てるんじゃない。』


『言われなくても!……ちょっと待って、ため込んだ魔力を全部回すから。っていうか肩に乗ってるのがお母さんだったんだね、知らなかったよ。』


『無駄口を叩くな。さっさとしろ。』


『へいへい。』


 あー、もう。さっきから頭の中で会話しないでくださいよ!体から血が抜けまくって気持ち悪いのに、もっと気持ち悪くなってきました!


 でも、確かに魔力が大量に回ってきて修復も始まってきたのでよしとしましょうか。まだ体の真ん中にできた穴は治りませんけど。でも出血は止まりました。


「クックック!おう、久しぶりじゃねぇか!あの時は治してくれてありがとな!!」


 その時、耳障りな声がリヴァイアサンの上から聞こえてきました。

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