さてさて、少しは調査に乗り出しますか。
「どうでした?魔法って面白くないですか?」
「確かに面白いです。イメージしたものを魔法で出すのは、広い可能性を感じますし。」
「でもそれ以上にむずいッスね。まだ魔力を集めて、それとイメージを合致させるというのがよくわかってないって感じッス。それにそもそもイメージがまだ固まっていないような気もするッス。」
領都に帰る道すがら、今日の感想を適当に聞いてみようと思ったのですが、……的確なことを言ってくるじゃないですか。
魔法を発動させる上で一番重要なのはイメージなんですよ。詠唱も魔法陣も、つまるところイメージを形にするときの補助でしかないわけで、イメージがグズグズだと魔法も残念なことになります。
「ヨミさんは普段どうやって魔法を使ってるんですか?」
ジャイロがおもむろに私にそんなことを聞いてきました。結構困ってましたもんね。
「あー、それを聞いてきてしまいますか?」
「えっと。ダメでしたか?」
「いえ、良いんですよ。いいんですけど、できれば自分で考え付いてほしいというか。
というのもですね、魔法を使う時って感覚が大部分を占めるんですよ。教えてもらった事を使うっていうのもないわけではないんですが、それは微々たるもので。それよりも自分で悩んで考えて、その先に感覚がつかめるときが来ます。それまで頑張ってみてください。
……私に言えるのはこの程度ですね。」
「……そうなんですね。頑張ってみます!」
「そうしてください。」
多分剣もそうだと思うんですよね。どこかの兵士とか騎士でもない限り、剣の握り方から振り方まで全部独学でもおかしくありません。なら、魔法もそうですよね?前提知識が必要なのは否めませんが。
「そういえばヨミさんって回復魔法も使えるッスよね?」
おやおや、今度はアイシャですか。まあ、この程度なら答えてもいいでしょう。
「もちろん使えますよ。ただ、光の適性を持っていないのでそこまで強くはありませんが。」
闇魔法だと回復はできないんですよね。光が正に特化していたとすれば、闇は負に特化しているのでどう頑張っても回復には転じません。なので私は水の浄化を利用した水属性の回復魔法しか使えません。不思議ですけどそういうもんなんです。
……さて、そろそろ真剣に話を聞きましょうか。アイシャの顔も緊張と期待でガチガチですしね。
「……一つお願いしたいことがあるんスけど、いいッスか?」
「ん?どうしたんですか?そんな顔して。」
「実は居候先のおっちゃんの怪我が思ったよりも深かったみたいで……。まだ起き上がることもできてないッス。この街に来てからお世話になりっぱなしだったッスから、助けてほしいッス。」
はぁ。なるほど?まあそういえばそんな話もしてましたね。……この目は嘘をついてなさそうですね。
「アイシャ!?それは、ダメだろう……。魔法も教えてもらっていて、そこまでしてもらうわけにはいかない。」
ジャイロは反対、というよりも申し訳ないといったところですか。
「なんでもするッス!お金も払うッス!……だから、助けてもらえないッスか……?」
うーん。どうしましょうね?正直なところ、いづれ連れて行ってもらおうと思ってたので行くのは当然いいです。話も聞きたいですし。
でもそもそもとして私の回復魔法で治せるのかどうかっていう話でもあるんですよね。
「……まぁいいでしょう。ですが、その前にいくつか確認させてください。」
「もちろんッス!何でも聞いてくださいッス!」
飛び跳ねるように喜ぶアイシャの影でジャイロは驚いたように私を見ていますが、そこまで非情じゃありませんよ?まったく。
さて、可能性はいくつかありますけど、私の手に負える範囲だといいですね。最悪、直接治すことはできないので少し頑張んないといけなくなりそうですが……。
「ポーションは使いましたか?」
「何度も使ったッス。でも少し痛みが和らぐ程度でそこまで効果はなかったッス。」
「治癒院にはいきましたか?あそこでも回復魔法をかけてくれるはずですが。」
「当然ッス。でもそっちも同じだったッス。」
「なるほど……。では最後の質問です。そのおっちゃんは夜な夜なうなされていたりしませんか?」
「そうッスね。私達は夜寝ないのでわかるッスけど、いっつも苦しそうッス……。」
「そうですか……。ありがとうございます。」
いやー、思ったよりもはるかに事態は深刻ですよ?このままいったら、この街の半数近くが死ぬことになるかもしれません。いや、もっとかも……?少なくとも海に出ることができなくなりそうです。
「えっと、ヨミさん。何か分かったんですか?」
「そうですね。おおよそ予測はつきましたが、直接見るまでは確信は持てません。これから向かいますよ。」




