魔法って深いですよね。
「早いですねー。しかもまた同時じゃないですか。」
つい出そうになってしまったため息を押し殺し、再度立ち上がりました。
「さて、では魔法使いとしての下準備はすべて終わりました。あとは詠唱を覚えて、ひたすら魔法を使ってください。そうすれば次第に詠唱破棄や、簡易詠唱でも魔法を使えるようになります。」
まあ最初は出来れば詠唱破棄とか簡易詠唱はしてほしくないですけどね。まずは完全詠唱で魔法の威力を安定させて、その後にそれらはするべきです。基本的にこれらの手段は発動までの速度を上げる代わりに威力を下げてしまうので、できる限り威力を下げないようにするためには完全詠唱での慣れが必要なんです。……あまり気づかれていませんが。
そうして簡易詠唱、詠唱破棄でも繰り返していけば威力は安定し、上昇します。そうしたら、今度は完全詠唱に戻します。そうするとこちらでも不思議と威力が上がっているんです。最初は戸惑いもありますが、次第に慣れ、威力は安定します。
まあ要は、これをひたすら繰り返していくんです。完全詠唱で威力が安定したら簡易詠唱、詠唱破棄に切り替え威力を落としながらも速度を上げる。威力が上がってきたら、今度は完全詠唱に戻して再度威力を安定させます。このサイクルに終わりはありません。
「あとは詠唱のやり方ですね。まあいくつかあるんですが、どんなのを知ってますか?」
私が普段使ってる詠唱のほかにも一つ詠唱方法があって、他にも魔法陣を使うのもありました。私はそこまで得意じゃなかったので、魔法陣はほとんど使いませんが。
「ええとですね。何か不思議な模様の何かが浮かび上がってたような。」
「確か魔法陣って言ってたッス。詳しいことは何も教えてもらえませんでしたけど。」
……魔法陣ですかー。私が教えるのはわりとしんどいですね。
「そ、そうですか。では魔法陣について教えてあげましょう。
魔法陣に限らず、他の詠唱でも最初に基幹部分にある属性から決めます。その後に形状、数、付与効果の順番に決めていきます。
魔法陣の場合だと、中央部に属性を配置し、そこから外部に向かって形状とかを決めていきます。」
実際に手に魔力を集めて魔法陣を作り出します。……っく。あんまり慣れてないせいか、結構時間がかかってしまいますね。
手のひらを上に向けるとそこから魔法陣が浮かび上がりました。魔法陣の色は氷属性だったので青色ですが、それ以外の情報は魔法陣からは読み取れません。ですが、
「アイスランス。」
小さく呟くと魔法陣から氷の槍が1本放たれました。その氷の槍はアイシャとジャイロの間を通って奥の木に突き刺さりました。
「こんな感じです。さあ、やってみましょうか。」
「いやいやいやいやいや!それだけじゃわからないですって!」
「そうッスよ!どうやったら魔法陣が手から出てくるんッスか!?」
「まずは手に魔力を集中させます。あとはイメージどんな魔法を使いたいのかをイメージしながら手から魔力を解放すれば、……ほら、このように。魔法陣が出来上がります。今日は基本のランスの魔法の練習をしていきましょう。」
ふふ、これはきっと大変ですよ?なにせ最初は魔法陣が歪みまくっててまったく発動しませんでしたから。きれいな円形の魔法陣を作れないといつまでたっても魔法を発動させることはできません。
……まあ、この点から言うと、詠唱は覚えさせすれば発動させることができるので簡単ですね。魔法陣は一段階上級の技術であると言えます。ま、せいぜい頑張ってください。応援はしてあげます。
早くも3時間が経ちました。やはりまだ魔法を発動させるまではいたってないようですね。仕方ないことですが。
おかげで私の方も魔力支配の練習ができましたよ。……ほとんど進展はありませんでしたけど。なんていうんでしょうかね、あまりに手ごたえがなさすぎてしんどいです。何か重要な物を見落としているような気がします。
「はい、そこまでです。慣れないことをして疲れたでしょう。」
ストップをかけると、汗ダラダラの二人がこちらを振り返ってきました。……まあ、魔法は体力こそ使わないですが、集中力をめちゃくちゃ使うので不思議と大量に汗をかきますよね。まあぶっ倒れないだけましでしょう。
はいー。じゃあ適当に朝買ってきたご飯と飲み物をあげるのでしっかり休んでくださいね?それを食べたら帰りますけど、ゆっくりよく噛んで食べてくださいね?
その間私はもうちょっと魔力支配の練習をしてます。……くう。
「そう言えば、まだ私から魔力って漏れてます?」
「え?あー。そうですね……。」
「遠慮なくいってほしいです。」
「遠慮なくですか。……ですと、ちょっと怖いかなー。みたいな?」
「本当ですか、アイシャ?昨日と比べてどうですか?」
「え?量はあんまり変わらないんじゃないッスかね?」
「……ジャイロ?なんで嘘ついたんですか?」
「え!?いやいや、嘘なんてついてないですよ!?」
「アイシャは昨日と同じくらいだと言ってますが?」
「い、いやいや!ちょっと待ってください!だって、僕普通に話せてますよ!?」
「……それもそうですね。ということは、アイシャ?」
「えーとッスね。何となくですけど、魔力量は同じくらいッス。これは絶対ッス。でも質っていうんスかね?それが違うッスよ。昨日よりは怖くないというか。」
「……なるほど?確かに昨日は不信感を持っていたような気もするので、敵意が魔力に乗っていたとしてもおかしくはないですね。」
「……ふー。危なかったッスよ、兄貴。感謝してほしいッス。」
「あ、ああ。すまない。ありがとう、アイシャ。」




