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スキル ”共感”

「……ふう。」


 自分の部屋に入ってようやく一息つけました。本当に大変でしたよ……。


「ねえ、アリエル?あんなこともできたんですね?」


「……なんのことだ?」


 おやおや、しらばっくれるつもりですか?ならしょうがないですね。


 部屋に置かれている大きいベッドの上に腰をかけると、肩に乗っている黒猫を持ち上げました。むすっとした顔でそっぽを向いています。


「アーリーエール?あなたのおかげで生きた心地がしなかったんですけど?ティターニアさんよりもアリエルの方が怖かったんですけど?」


 上下左右に大きく揺らしながら問い詰めるとアリエルの顔が嫌そうに少し歪みました。……それにしても体すごい伸びますね。普段の1.5倍くらいは伸びてるんじゃないですか?


「……仕方ないだろう。あれはあのティターニアとかいうのが悪い。少し驚かせてやろうと思っただけだ。」


「少し?一歩でも彼女が近づいてきてたらためらいなく反撃するつもりでしたよね?」


「……それは、そうかもな。」


 アリエルはばつが悪そうに再度そっぽを向いてしまいました。


 そうなんです。ティターニアさんが魔力を放出し始めた時に肩に乗っているアリエルからあふれんばかりの激情が流れ込んできたんですよ。ただでさえティターニアさんからとんでもない量の魔力が放たれてたのに、そんなことも重なってしまって本当にパニックでしたよ。


 まあ私のために怒ってくれたのはシンプルにうれしいんですけどね。


「アリエル?どうしてアリエルの感情が私の中に入り込んできたんですか?」


「……それは血が近すぎるからだな。その結果、ヨミの中にもスキル“共感”が生まれたんだろう。」


「スキル“共感”ですか?」


「そうだ。血が近いもの同士の間に生まれるスキルで、その効果は互いの感情を無意識のうちに感覚で把握することができるというものだった。とはいえ、兄弟や親子程度ではだめで、双子で長い間共に暮らしていないとこのスキルを獲得はできない。」


「へぇー。そんなのがあるんですね。てっきりスキルってもっと派手なのだと思ってましたよ。」


「まさか。スキルは基本魔力を消費しないので発動できるのが強みだぞ。当然魔力を消費することでその効果を増幅させることはできるがな、そんな派手なものではない。」


 そんなもんなんですね。私は持っていないのでわかりませんが。……それにしてもスキル“共感”ですか。


 心の中でつぶやいたその瞬間、―――世界から色が消えました。


 アリエルに助けを求めようと声を出そうとしましたが、出ません。というか、そもそも口すら動いてないです。


 とすると当然体も動かせなくて、なぜか魔力も動かせない。


 心の底からパニックになっていると不意に頭の中に声が響いてきました。


『スキルーー共感を取得しました。

 効果ーー共感を持つ者同士で感情の伝達が可能になりました。


 これはスキルカードにも名称のみが記載されます。これからの健闘をお祈りしてます。』


 ……どこかで聞いたことがあるような声ですね。どこか幼さが残るようで、でもそれには不相応な機械的な文章です。


 それだけを言うとそれ以上声が聞こえてくることはなくなり、すぐに世界に色が戻りました。


「……どうした?そんな目を見開いて。」


 まだ私の手の上にいるアリエルはいぶかし気に私の顔を見てきています。


「いえ、どうやら私もスキル“共感”を獲得したみたいです。」


「そうか。それはよかったな。……じゃあそろそろ下ろせ。さすがにちょっと疲れてきた。」


 ……あ、そう言えばずっとこの体勢でしたね。すいません。


 ベッドの上に置くと、とてとてとベッドの中央まで歩いていって猫の姿のまま横になりました。


「?今日は戻らないんですか?」


 おかしいですよ?昨日は私のベッドを独占してたのに。


「うーん。気分が乗らないから今日はやめとく。それよりもヨミ、今から魔力のコントロールの練習だ。明日もあの小僧から頭突きをもらいたくないだろう?」


「うっ!そうですね……。でも具体的にどうすれば?」


「体の中で魔力を常に循環させるんだ。魔力は放置してるだけで勝手に体の外に流れていってしまうからな。ヨミも気づいてるだろう?」


「……まあ、なんとなくは。」


「ならいい。それでその体からの魔力の流出を完全に抑えることを()()()()()()()、という。世界で強者と言われる連中はジョブに限らずこれを体得してる。」


 さっきの場所にいた3人は全員出来てたな、とアリエルが続けました。


 ということは、このままいくと私は足手まといなのでは?……まあ分かってたことですけど。


「……やってみます。ちょっと見ていてください。」


 体の中央から漏れ出てくる魔力に意識を向けます。多少は制御できているので量はそこまで多くはないですが、それは体の中が魔力で満ちているとまっすぐに外に出ていこうとしてしまいます。


 これの方向を変えるっ……!


 少しだけ軌道が曲がったような気がしました。気、だけかもしれませんが。


「……先は長そうだな。」


 アリエルがそんなこと呟いてたような気がします。

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