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くぅ…… 中

「さあ、街の外に出ましたよ。人の目は少なくなったと思いますが、それでも心配なら魔法で周囲を覆いますか?それともいっそのこと空飛んじゃいます?」


「い、いえ。ここで大丈夫です。なあ、アイシャ?」


「はいっ!大丈夫っす!」


 相変わらずのガチガチっぷりですね。まあ空飛びたいなんて言われたら私の方が困ってしまうので助かったのは私の方なんですけど。


「はあ、まああなたたちも気づいてるんでしょう?」


 私も理由は分かりませんが直感で気づいてしまいましたし、この二人も不自然に強張っているので感づいているのでしょう。吸血鬼であれば互いにそうであることを認識できるということなんでしょうか。あとでアリエルに確認してみましょう。


「あなたたちも吸血鬼なんでしょう?半分だけ、というのが正しいかもしれませんが。」


「は、はい。その通りです。僕達は母が吸血鬼で父がエルフなんです。」


「で、できれば私達のことは内緒にしてほしいッス!里から出るときに絶対に知られるなと言われてるッス!」


 知られたくない、じゃなくて知られてはいけない?もしかして隠してるんですか?しかも里って。おそらくはエルフの里なんでしょうけど、そこから知られるなって指令が出てるんですか。……なんか怪しくないですか?


「吸血鬼であることを知られたくない、じゃなくて知られてはいけない、ですか。それはどんな理由があるんですか?」


「えっ!?よ、ヨミさんはご存じないんですか!?」


 声は相変わらず上ずってますね……。どうしてでしょう?確かに私の方が格上だと何となくわかるんですけど、そんな緊張させるほどなんでしょうか?


「落ち着いてください。吸血鬼なのはお互い様でしょう?……それで何があるんですか?」


「は、はいっ!吸血鬼はですね、昔々の大戦で世界にその牙をむいたとかで、その存在がばれるだけで酷い目に合うらしいんですよ。……これまでもばれただけで何度も街を追い出されましたし。」


「そうッス!ただ自分から明かさない限りはバレないし、もし何も言わずとも吸血鬼だとバレてもそれは相手も吸血鬼だから大丈夫だと教えられたッス!」


 ……なるほど、やはり吸血鬼であれば互いに認識することも可能なんですね。それにしても吸血鬼だとバレたらそんな目に合うんですね。これまでは人数が少ないからバレたら面倒なことになりそうなんていう甘い考えでしたが、これからはしっかりと隠していかないとダメですね。


『……ヨミ。ちょっと周囲を氷で覆え。私からもお前達に話しておきたいことがある。』


 意識を改めていると、突然肩に乗って昼寝をしてたはずのアリエルから念話が送られてきました。突然ですねー。


「二人とも、ちょっとこっち来てください。」


「あ、はい。」

「了解ッス。」


 二人が少し近づいてきてくれたところで、ちょっとだけ頑張りますか。


「氷属性魔法 アイスドーム。」


 私達の周囲から氷が盛り上がっていき、高さ3メートル程の氷のドームになりました。内部の照明などは一切ないですが、なにせ氷でできているので太陽の光でそれなりに明るいです。


「と、突然なにを!?」


「すいませんね。お母さまからの命令でしてね。」


 周囲からの視線を氷で完璧に遮断できたところでアリエルが肩から飛び降りました。スタッと地面に着地すると同時にその輪郭がぼやけていき、少女の姿に変わっていきます。


 ……もう普通に変われるんですね。なんかリスクがあるからうんぬんかんぬんとか言ってたような気がしますが。何なら昨日の夜も普通に少女の姿で私のベッドを勝手に使ってましたもんね。


「そういうことだ。突然すまんな。私はアリエル。ヨミは私の娘のようなものだ。」


 少女のような見た目の癖に艶やかにほほ笑みながらそんなことを言ってます。本当反則ですよね。あんな顔されたら誰でも何でもイエスと言ってしまいそうです。


 そんなことを思いながら二人の方を見ると、


「ブクブク……。」

「兄ちゃん!?大丈夫っスか!?」


 ジャイロが泡をふいてました。……いや、なんでですか?





「すまない。私達始祖特有の覇気を忘れてた。」


 どうやらアリエルをはじめとした3人の始祖たちは他の吸血鬼たちを無意識のうちに威圧してしまうそうです。まったく、困ったものです。


 私は膝の上にジャイロの頭をのせて回復魔法を当てています。……回復魔法って意味あるんですかね?


 いや、ちょっと待ってくださいよ?ということはさっきまで不自然に声が上ずっていたのはアリエルのせいだったのでは?


「……私のせいとでも言いたげな目だな。違うぞ、ヨミも含まれている。」


「え!?そうなんですか?私ってただの吸血鬼じゃないんですか!?」


「私達といったろう?始祖である私の血を大量にやったヨミもどの吸血鬼よりも始祖に近い。だからヨミもしっかり覇気の制御を覚えるように。これから夜の間特訓だな。」


「マジですか!?」


「よかったじゃないか。


 ヨミは二人に魔法を教える。二人はヨミがしっかり制御できているか教える。それだけの話だ。」


「まあ、それはそうかもしれませんが。」


 確かにその覇気とやらを制御できてるかどうかは吸血鬼同士にしかわからないんですもんね。でも吸血鬼ってほとんどいないんですよね?制御できたところで関係あるんでしょうか?


「当然だ。覇気とは言ってもただの魔力の流出だ。制御できれば無駄な魔力消費を抑えられる。」


「なるほど。でも私魔力は十分あると思うんですけど。」


「スタンピードの時を忘れたのか?最後へばっていただろう?


 それに加えていえば、吸血鬼は魔力に敏感だから少しでも魔力が漏れ出てしまえばあてられてしまう。その逆をすれば、ヨミがあの街を出る前に雑魚二人にしていたように、人にも威圧ができるようになるさ。」


 あー、そんなこともありましたね。そういえば確かに睨みつけただけで腰を抜かしていたような……。まあやるだけやってみましょうか。

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