くぅ…… 前
「さて、今日どんな情報が集まったか共有しようか。」
あっという間に一日が過ぎて夜になりました。今日も今日とて勇者様の部屋で夜ご飯を食べましたとさ。
それでとうとう情報交換の時間になったわけなんですが……。
「ヨミはどんな情報を集めた?」
「……すいません、ほとんど集められませんでした!」
はい。その経緯を説明するには今日の朝に遡ります。
勇者様と一緒に冒険者ギルドに向かって個々のギルマスと話したのはいいものの、その後なんです。勇者様と別れて私はとりあえず街中の依頼を受けようと思いました。なにせ敵はこの街に潜んでいるんです。だったら街中を巡れる依頼を受けたら、一人じゃ絶対に行かない所にも行けるし依頼人に少し話を振れば異変がわかるんじゃないかと。
さっすがBランクにもなれば考えることが違いますね。とか思いながら受付に行ったんですよ。そしたら
「冒険者カードを見せてもらってもいいですか?あとあったら紹介状も預かります。」
「えっ!?Bランク!しかもソロで!?その年齢ですごいじゃないですか!」
「え?街中の依頼?それはBランクなら分かるかと思いますが、低ランクの冒険者向けとなっていてですね。Bランクのあなたには受けてもらうことができないんですよ。」
「ああ、この街を知りたいと。そういうことですか。……そうですね。ならこちらのパーティーの指導係になってくれませんか?この二人の指導係についていた方が引退してしまって。彼らはこの街の住人なので詳しいと思いますよ。」
「……一週間くらいしかいられないんですか。そうなんですか。そうなると確かに指導係には向かないかもしれませんね……。」
「……これは出来れば内密にしていただきたいんですが、この二人なんですが適性ももらっているし、魔力も十分にあるんですよ。ですが、これまで魔法を教えられる人がいなかったからまだ使えないんです。だからいる期間だけでいいので世話を見てあげてくれませんか?そうしていただけるなら街中の依頼も少しだけ出せるかと思います。」
「え!?いいんですか!?ありがとうございます!!じゃあ早速呼ぶので少し待っててください!」
という感じで、なぜか私はこの街でも指導係になってしまいましたとさ。
……目論見が外れました!街中の依頼を大量に受けてこの街のことに詳しくなることが目的だったのに!まさか、また誰かに魔法を教えることになるとは……。
ちなみにこの街でBランクはそこまで珍しくはないようです。Aランクも数人いるとかなんとか。ただソロでBランクというのはここでも珍しいようで、ひたすらに大きい帽子をつけてることも相まって注目の的になってしまいました。
何やってるんでしょう、私……。
なんてボーっとしていた私の元に受付のお姉さんに連れられてやってきたのは……ハーフエルフらしい(受付嬢さんがそう言ってました)色白の少年と少女でした。
少年はジャイロ、少女はアイシャという二人は兄妹らしいです。人間との混血で、目がピンク色なのは先祖返りが原因だそうです。若干上ずった声でそんなことを言ってきました。
持っている適性はジャイロが闇、アイシャが火とのことです。まあ基本だけなので適性が違っても教えることはできるので問題はないでしょう。問題は……
……いやいや。ハーフエルフじゃないでしょう。
「始めまして、私はヨミ。一応Bランクの冒険者です。今日からあなたたちに魔法を教えることになりました。よろしくお願いします。」
「ぼ、僕はジャイロ。適性は闇です!それで……」
「わ、私はアイシャッス。適性は火ッス!お願いしますッス!」
緊張しすぎですよ。……まあ理由は分るんですけど。
「それで?あなたたち、本当にハーフエルフなんですか?」
外見的特徴は確かにエルフと人間のハーフです。少しピンと伸びた耳に私ほどではないにしても十分な魔力量。森の賢者と言われるだけの素質はありそうです。
ですが……、それって実は吸血鬼も同じなんですよね。大量の魔力と伸びた耳というのは。実際私の耳も髪で隠してはいますが、伸びています。
「私はエルフにまだ会ったことがありません。なので本当かわからないので聞いています。疑っているわけではありません。」
……あちゃー。固まってしまっていますね。一応気づいてないふりをしてみたんですが、あちら側もしっかり気づいているようです。
さすがに冒険者ギルドの中で明かすわけにはいきませんね。別に吸血鬼のことを隠しているわけではありませんが、誰も気づかないのなら知らせる必要もないでしょう。なにせ人数は極端に減っているようなので。
「とりあえず外に出ましょうか。ここではできない話もあるでしょうから、ね?」
かくかく、と二人の頭が人形のように揺れました。
……あなたたちハーフヴァンパイアじゃないですか!




