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話し合い

 ノア=スプリングフィール……?


 誰のことを言っているのかは分かりませんが、彼女は私を見てその名前を言いませんでしたか?私はヨミっていう名前があるんですけど。


 メイドさんもはっとした表情で私を見ていますし。……えっ?私ってそんな名前だったんですか?


「違うよ。この子の名前はヨミだ。そして彼女はまだ見つかってない。」


「いや、何を言ってる?髪の色も目の色も、なんなら気配も違うが間違いない。


 それに長い付き合いだ、知ってるだろう?私が人を間違えたことがないことくらいは。」


 彼女はキョトン、と顔を傾けながら心底疑問に感じているようです。


 メイドさんも同じ疑問を感じているようで、勇者様の方を返答を求めるように見ています。


「……彼女の話はまたあとでしよう。


 それよりも話さないといけないことがあるんだ。来る戦争について、帝国という脅威について。」


 戦争、帝国という名詞を聞いた二人は明らかに態度を変えました。緊張感が走り、表情も固まっています。さっきまではあくまで興味の範囲でしたが、今は仕事の範囲。一言たりとも聞き逃すまいという覚悟が見えます。


 ……私はここにいてもいいんでしょうか?



 帝国。この大陸、ラウンドの北半分を所領とする巨大な国家だ。歴史は長く、多種族連合よりも王国よりも長い歴史があると言われている。Sランク冒険者次席の“魔王”が独裁統治するここでは常に実力主義が取られている。そのため生まれに関係なく、実力があればどんどん昇格していく。一方で貴族という身分はなく、あくまで多くの実力者を輩出する名門止まりである。当然、一般市民と名門の間に身分の差は存在しない。


 ――魔王か、それ以外


 こんな言葉を帝国は掲げているが、名は体を表すとはまさにうまくいったものである。


「……それか。確かに厄介な問題だ。それで?魔王陛下とは話せたのか?」


「うん。一応、従者として“正直者”スキルを持つものも連れて行ったから、彼女が嘘をついているなんてことはあり得ないよ。


 ……戦争を起こすつもりのようだよ。それもそこまで遠い話じゃない。遅くともこの一年の間には起こるだろうね。」


「そうか……。それで国王陛下はなんと?」


「勇者、剣神、精霊王の3人のSランク冒険者を筆頭に冒険者、騎士団総出で連合と共同の防衛線を引けと。万が一、片方が帝国の手に落ちたら時間の問題だからね。」


「まあ、当然か。……それ以外は?」


「彼女の目的は分らない。ただ、大陸中央の世界樹に何か関係があるらしい。」


「世界樹に?あれは精霊を生み、育てるものだろう?精霊師でもない魔王陛下があれでなにをするんだ?」


「分からない。それに戦争の話の最中にちらっと世界樹は巻き込まないようにって話した時に妙な間があったっていうだけだから。」


「……なるほどな。それで頼んでいたことは?


「秘密結社についてだよね。残念ながら魔王陛下は本当に何も知らないようだったよ。」


「……そうか。」


「ただ、帝国の特質上、そんな組織が存在していてもおかしくはないとも言ってた。なにせ実力主義と言ったら聞こえはいいけど、実際あそこではびこってるのは蟲毒みたいなものだしね。」


「強者のみを育て、弱者を捨てるか。気味が悪いほど効率的だな。あの魔王陛下が好みそうなことだ。」


「その通り。……今度はこっちが聞く番だね。なんでわざわざ秘密結社のことを聞こうとしたの?あれってあくまで帝国の中でしか活動してないって話だったけど。」


「そんなわけがあるか。王国(そっち)じゃまだ把握できていないようだがな、連合では毎年行方不明者が増加している。それも冒険者でもない、一般の市民での話だ。ダンジョンに行って死亡したとかっていうことじゃない。」


「……つまり?秘密結社の魔の手が大陸中に伸びているっていうこと?」


「そうだ。それもここまで人数以外の証拠を残さないで攫っているとなれば、時間をかけて綿密な計画を作っているということだろう。大陸中にやつらの潜伏地があってもおかしくない。」


「……なるほどね。想像以上に事態はまずいみたいだね。急いで国王陛下に伝えないと。」


「まあ、待て。あわてるな。話さないといけないことはまだある。カレン、お前もよく聞いておけ。


 端的に言うと、おそらくその結社の人間がこの街に入り込んでいる。しかもかなりの実力者だ。」


「……一応その根拠も聞いていい?」


「そうだな。まず前提としてこの街について話してやろう。この街は私の精霊魔法で外界とのつながりを絶っている。その結界が一時的に破られた。


 そして結界以外にも私の従者を街の周囲の警戒のために派遣していたが、昨日の夜警備担当だったものが帰ってきていない。


 この二つからそれなりの実力者がこの街に入り込んでいることはほとんど間違いじゃないだろう。」




 ……えっと?私は本当にここにいてよかったんでしょうか?絶対聞いたらまずい話でしたよね、今の?

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