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脱出!!

「いたっ!?」


 気づいたら眠ってしまっていたようですが、突然顔に何か鋭い痛みが走りました。何事!?


 慌てて起きると、目の前に私の顔に手を伸ばしている黒猫の姿が見えました。


「おはよう、ようやく起きたか。」


「……おはようございます。……って血!?」


 顔を軽く手で拭うと手が真っ赤になっています!?なんで!?ってそんなの考えるまでもないですよね。


「何やってるんですか?アリエル……さま?」


「気持ち悪いことを言うな。もうアリエルで構わん。もう一回顔をぬぐってみろ。」


「え?まあいいですけど。」


 いわれた通りに手で顔をぬぐいました。


「何かあります?」


「顔の傷、治っていただろ?」


 え?……あ、本当だ。治ってますね。ああ、私吸血鬼になったんですもんね。


「それで?まだ聞いてなかったが、なぜこんなところに一人で来た?ここはそれほど大きくはないが、それでもダンジョンの最深部だぞ?魔物の強さもそれなりだろ。」


 あー、やっぱり最深部とかでしたか。これでもそれなりの魔法使いな私が全く手も足も出ない魔物がいた時点でなんとなく分かってました。それにしても未踏地区ではなく最深部でしたか。それは予想外ですね。


「まあ、簡単に言えばパーティーメンバーとはぐれたというか、まかれたというか……。」


「?パーティーメンバーに?仲間ではないのか?」


「いや、そこが少し複雑でして。なんだかんだあって彼らに嫌われてしまったみたいなんですよね。」


「はあ?嫌いならばそんなパーティー解散すればいいだろ。そもそも今のギルドじゃそんな間接的な殺人を許してるのか?」


 うーん、耳が痛いですね。許されてるわけありませんが、それでも証拠がないのでグレー判定なんですよね。


 例えば、自分たちでは太刀打ちができない魔物に遭遇したとして、そのときの正解が存在するのかどうか。誰か一人を囮にして逃げるのか、それともみんな揃って死ぬのか。誰かが殿を務めるのか、それとも誰かを置き去りにするのか。

 正解なんてないですよね。人の数だけ答えがでます。


 まあ、私の場合は私にも負い目があるのでなんとも言えませんが。


「許してないですが、それでもギルドは結果だけしかわかりませんからね。過程なんて報告次第で歪められますよ。」


「そうか……。ならいい。まずはここから出るぞ。」


「別に構いませんが、そんなに急がなくてもいいんじゃないですか?まだ全快ではないんでしょう?」


「全快ではない。それにもうこれ以上回復することもないから心配するな。それに……ヨミ、貴様は今や私の眷属だ。過去を探しても唯一の娘みたいなものだ。

 そんな貴様が謂れのないことを吹聴でもされていたら私がどう思うか、わからないか?」


 ーーー最悪街ごと消しかねんぞ。


「……!?」


 言われたことが一瞬理解できませんでした。これまで言われたことのないセリフが私の体の中を駆け巡り、内側からの震えが止まりません。

 膝の上にいた暖かい存在に思わず抱きついてしまいました。


 フグッ、と息を吐き出す音がかすかに聞こえましたが、その猫は私の中でこの暴れることなく私を温めてくれました。




「ありがとうございます……。それにすいません。苦しかったですよね。」


「気にするな。私はこれでも吸血鬼なんだ。たとえ骨が折れようともすぐ治る。

 それで?貴様は嵌めた奴らに何も思わないのか?」


「……わかりません。もともと組みたくて組んだわけではないですし、本当に私がはぐれただけかもしれませんし。」


「そうか。なら、とりあえず出てから考えればいい。復讐したいならすればいい。したくないならしなければいい。」


「そうですね。なら善は急げです。早速出発しましょう!!」


 そうして、私たちは始祖の祠(というらしいです)から出発しました。



「そういえばなんでアリエルはここにいたんですか?」


「なに、旧い友との約束だ。いずれ迎えに来るから待っててくれとな。結局誰も迎えになど来なかったがな。」


「その人たちはどんな人だったんですか?」


「同じ目標を持った数少ない同士だった。有り余る力を持っていた私達は世界をもっといいものにしようとよく話していたんだ。そのためにはやれ魔物がいたらダメだのダンジョンをもっと安全な物にしようだのとできもしないことを冗談半分で話していたさ。……そうだな、あれももう500年近く前の話なのか。」


「この世界をより良いものにですか。素晴らしい方たちだったんですね。」


「フン。愚か者ばかりだったさ。時間が足らぬといって転生魔法などという存在しない魔法を魔法原理そのものに立ち返りそこから作成し、それを自分たちに使ったはいいもののそれは失敗したのだろう。私一人を置いて全員死んでしまったよ。」


「……アリエルもそれを望んでたんですか?」


「ん、私か?……そうだな。やはり程度を知らぬ愚か者だったがそれでも私の大切な友人だったのだ。そんな奴らの望みだ、今いないのなら私が叶えるしかあるまい。……たとえどれだけの時間がかかろうとも、誰も協力してくれなくても。」


 ―――どうせ私は死ねないのだからな。

ちなみに今いるダンジョンは初心者向けダンジョン『ウリオールの巣窟』です。

ウリオールはこのダンジョンの近くにある街の名前です。次話以降に出てくる、はずです。

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[気になる点] あとがき >ちなみに今いるダンジョンは初心者向けダンジョン『ウリオールの巣窟』です。 >ウリオールはこのダンジョンの近くにある街の名前です。 普通に読むなら『ウリオール』という名の…
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