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プロローグ 世界の影で蠢くもの

2章開始です。

二日か三日に一話を目安に更新していきます。よろしくお願いします。

 多種族連合と王国の境にて双方から独立した都市、領都ツェペシュ。きれいな円の形をしているここではエルフやドワーフ、小人や巨人といったいわゆる亜人と呼ばれる者たちと人間の交流が唯一取られている。そのために、他には見られない独自の文化が築かれている。


 多くの種族が住むが故に大小様々な家が並ぶ街並みは歪でありながら、それでも独特の魅力を持っていた。当然、並んでいるお店も大小様々で、提供している商品も異なる。お店が並ぶ商店街は常に賑わい、種族を超えた交流を実現している。


 その賑わいを冷ややかに見つめる視線が一つ。


 それは都市の中央に鎮座している大きなお屋敷から向けられている。小高い丘に都市を見下ろす形で建てられたそのお屋敷の外観は満月のように明白く、正面には三つの大きさの扉が付いている。


 一階は謁見やパーティーのみに使われる大広間にすべて使われており、ここの主はただ一人2階に住んでいる。数人の従者もいるものの、日中は常に外出している。


 主は二階にある自身の部屋から、壁一面に張られたガラス窓を通して街を見下ろす。しかし、その表情は氷に閉ざされたように固まっており、その瞳にすら感情の色を映さない。


 燕尾服に身を包んだ従者が音もなく主の元に現れた。


「勇者とその従者らしきものがこの街に接近中です。いかがいたしますか?」


 広い窓から街を見下ろしていた主は若干顔を歪めた。が、すぐに無表情に戻った。


「……通せ。その従者とやらもな。その後は周辺の監視に戻れ。」


「はっ!」


 返事と共に音も残さずその従者は消えた。


「……相も変わらず律儀なものだ。やつも精霊師ならば、あえて来ずとも連絡など取れようものを。」


 主は大きい部屋で鈴のような声で小さく呟いた。 





 そして夜、そんな繁栄を極める領都に夜闇に紛れ一人近づくものがあった。


 その者が来ている全身を覆い隠すような服の肩にはハートの中に逆さ十字が埋め込まれている紋章のようなものが付いている。


 秘密結社“AS”。


 彼らは神に与えられるスキルというものを崇拝し、そしてそれを研究する者たちだった。


 しかしスキルを崇拝しているが、彼らはスキルを持つスキルホルダーに対してはそんなものをかけらも持ち合わせてはいない。なぜなら彼らはスキルそのものを崇拝しているのだ。スキルホルダーとは言ってしまえば純粋な形のスキルを汚している存在に他ならないのだから。


 この男も例外ではない。何人ものスキルホルダーが彼の前に命を落としている。


 彼らの台頭を機に、スキルホルダーをそれを秘匿するようになった。もっとも、奥の手の重要性を知っている実力者たちはそれ以前からスキルを保持していることを隠していたが。


「クックック!せっかく俺様の遊び場にしてやるんだ。少しは面白おかしく舞ってくれよぉ……!!」


 気味悪く笑うその男の背後には惨たらしい死体が横たわっている。


 一陣の風が吹き、彼の顔を隠していたフードが少しめくれた。その奥には左右両方の頬にクロス字の怪我が刻み込まれた顔があった。片目はつぶれ、真っ赤な眼球に怪しい青い瞳が浮かんでいる義眼のようなものをはめ込んでいる。



 奇しくもこの男が街の監視を殺し領都に入った次の日に勇者とヨミが到着したのだった。

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