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エピローグ

「さて、それではそろそろ行くとしますか。」


「そうだな。もうこの街に未練はないんだろう?」


 部屋は買ってしまっていたのでその後処理に困りましたが、そこらへんの管理はギルマスに投げておきました。多少なりとも私に罪悪感があるようなので全力で利用しつくしてあげます。


 結局あの後グエルら3人は冒険者ギルドから永久追放されました。謹慎の処分を私欲のために無視したこと、そしてその際中にもかかわらず冒険者に危害を加えたこと。以上の理由によりギルマスにより、ギルドの信頼を脅かす存在であると判断されたからですね。


 その証拠として彼ら3人は左手薬指の爪を真っ黒に染められました。これは呪いのようなもので、一度かけられたら二度と解けることはありませんし、これがある以上、彼らは冒険者ギルドに入ることはできません。


 そしてコウセツ達ですが、……彼らはEランクの降格の処分を下されました。


『さっさとCランクに上がりたいんだっけ?さっきまでの発言からそれが本心だとはさすがに思わないけど、なら処分はEランクに降格でいいかな。それともう間違えないように誰か保護監督をつけよう。


 ……擁護するつもりはないけど、一回立ち止まって見るのもいいことだよ。人生長いんだし焦りすぎるのはよくないよ?』


 とはギルマスの話ですが、妥当な処分です。コウセツだって処分中に抜け出してましたし、何ならグエルの顔を殴っていましたが、それでもそこらへんは信頼の差なんでしょうね。


 そしてなぜかアリスとイリスの元で3人は荷物持ちをすることになりました。


『そういうことなら私達が引き受けましょう。私達以上の適任はこの街にいない。』


『それにヨミさんのために頑張ったってことは分かったからね。ビシバシ鍛えてあげよう。』


 二人の提案にコウセツ達は拒否することなどできるはずもなく、5人でパーティーを組むことになりそうです。……これはコウセツ達にとっては当然ですが、アリスとイリスにとっても挑戦になるでしょうね。


 結果としてアリスとイリスがこの街に残るということでゴリル達はこの街にいる義務がなくなりました。よかったですね。


 それで私はというと、―――


「待っていたよ。昨日の質問の答えを聞いてもいい?」


 この街の唯一の乗り合い馬車の停留所で彼は待っていました。余談ですが、ここから王国の主要都市にはだいたいいけます。


 さて、昨日の質問ということですが、最後まで抵抗を続けていたグエルの仲間達をギルマス達が追い出しに行った間に勇者様からお誘いを受けたんですよね。



『久しぶりだね、ヨミ。』


『はい、お久しぶりです。勇者様。』


『随分強くなったんだね。それに何があったかは分からないけど、彼らからも随分尊敬されているみたいだ。』


『……そうですね。途中いろいろとありましたけど、最終的には信頼し合うことができたのかと思いますよ。』


『彼ら孤児から信頼を得るのはとても難しかったはずだよ。生き抜くためには人の悪意に敏感にならないといけなかったからね。誰にもできるようなことじゃない、誇っていいことだよ。』


『……ありがとうございます。』


『そういえば今後はどうするの?この街でまだ活動する?』


『いえ、今度は王都にでも行ってみようかと思いまして。明日にでも出発するつもりです。』


『そっか。特に行く当てはない感じなんだね。なら、僕と一緒に来ない?』


『え?』


『僕が団長を務める近衛騎士団においで。僕達は君のような人を待っていたんだ。』



 というようなことがあったんですよ。まさか勇者様にスカウトされるとは、本当に世の中何があるかわからないですね。


「本当に私でいいんですか?そこまで強くはないと思うんですけど。」


 そうなんです。嬉しいんですが、あと少し不安点があるとすれば、勇者様に認められるほどだとは思えないんですよね。なにせこの街から出たことないので、私より強い人はギルマスかアリエルくらいしか知りませんし。


「全然大丈夫だよ。っていうかヨミ、君だからいいんだ。確かにまだ実力的に言えば未熟なところはあるかもしれないけど、それでも君がどういう人間だったのかは彼ら3人を見ればよく分かった。家族でもない人に対して自らの身を危険にさらしてまで彼は立ち向かった。それをさせたのは君への返しきれないほどの恩と感謝の気持ちだったはずだよ。


 ――困っている人がいたら助ける。これは僕の行動原理で多くの人が賛同してくれたけど、君以上にこれを実践できた人はいないと思うよ。君は自分を裏切った彼ら3人を助けるためにダンジョンで単身奥地に向かって、君のことを好ましく思っていないこの街の住人と冒険者のためにスタンピードで戦い抜いた。


 素晴らしいことだよ。きっと多くの葛藤があったと思う。他の人じゃこうはうまくいかない。嫌いな人間が不幸に喘いでいれば嗤うだろうし、その無様さを喧伝したっておかしくない。


 でも君はそれをしなかった。それだけで、僕にとっては近衛騎士団にいてほしい人材なんだ。


 だからヨミ、来てくれないか?」


 勇者様は穏やかな輝かしい笑みを浮かべながら私に手を差しのべています。


 その伸ばされた手を震える両手でしっかりと包み込みました。


 ―――心の奥でズキリと短い鈍痛が響きました。

これにて一章 冒険者の街ウリオール編は終了です。


次は舞台が領都に移ります。


元々領都に向かう予定だった勇者に連れられヨミもまた領都に降り立った。

唯一の多種族連合との窓口になっている都市でヨミはこの世界の敵の存在を知ることになる。

そして同時にヨミの体に変化が訪れる。それは吉報か、凶報か。


以上、次回予告のようなものです。2章からもよろしくお願いします。

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