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それぞれの戦い ※イリス視点

「キャッキャッキャ!」


 私の前で手足の長いサルがファイヤーボールをお手玉のように手でもてあそびながら甲高い声を上げてる。……イラっとする!ムカつく!


「バカにしないで!」


 短剣に魔力を纏わせ、風属性が乗った三日月型の斬撃を感情任せに何回も放つ。一発一発が当たれば一撃で倒せるくらいの魔力がこもってる。それはあの上位種のファイヤーモンキーでも同じこと。なのに!!


「キャキャッ!!」


 もおお!!なんで相殺されるの!?っていうか、魔力感知ができてるってこと!?しかも追撃までしてくるし!!


 ファイヤーモンキーから放たれるファイヤーボールを魔力を纏わせた短剣で切り裂いていく。……なんか量多くない?しかもよくそんな甲高い声をずっと出せるね?


 ……。


 ……ピキッ。


「もおおおお!!キャッキャ、キャッキャうるっさいんだよおおぉぉ!!」


 短剣を何度も振り、三日月型の斬撃を乱発する。激情に任せながらも、ファイヤーモンキーが放ってきてるファイヤーボールを空中で撃ち落としていく。


 だが、その勢いは収まることがなく、次第に防御から反撃に転じている。互いの攻撃のぶつかる中心点がイリスからファイヤーモンキーに近づいていく。


 それを見てファイヤーモンキーも焦ってきたのか、ファイヤーボールを投げるスピードを上げていく。


 それでも間に合わない。どんどん互いの魔法の衝突点が近づいてくる。


 そしてとうとう、相殺が間に合わなかった一撃がファイヤーモンキーの肌を掠った。その怪我は大したものではなかったが、攻撃を受けたという事実がファイヤーモンキーの意識に恐怖を叩きこんだ。


「キャァァァァァ!!!キャァァ!!」




 がむしゃらに斬撃を放っていた私はファイヤーモンキーの耳をつんざくような悲鳴で正気を取り戻した。


「はっ!またやってしまった。」


 心がさっきまでの激情に引っ張られてざわついてる。落ち着いてない。まだ若干浮足立ってる。でも問題は私の内面以外にもあるんだよね……。


 なんか、ファイヤーモンキーの体全体から炎が上がってる。……え?こんなだったっけ?


 ……ふぅぅぅ……。落ち着きなさい。感情を荒立てないで、落ち着くの。感情任せはダメ。今やりたい放題やったら、ヨミさんに迷惑をかけちゃう。


 ……もうかけちゃったけど。ほんっとに不甲斐ない。魔法にあんな使い方があったなんて、考えもしなかった。お姉ちゃん以上に体力に難ありで魔力に余裕があるってわかってたから、その使い方を思いつけたはずななのに……!ヨミさんには必要のないものを私達のためだけに作ってもらっちゃった。


 嬉しい!じゃない、悔しい!!いや、嬉しいんだけど、本当にもらってばかりで何も返せてない。


 だから、せめて


「お前くらいは秒殺しておかないとね。」


 もうヨミさんに顔向けできないよ。


 まず、あれを魔法のごり押しで倒すのはわりとしんどそう。魔力残量からしてそれなりに攻撃してたはずなのに倒せてないからきっとそう。……順当にいけば、この魔力でもギリギリどうにかなりそう。いや、でもそれじゃダメ。これでおしまいっていうわけじゃない。


 なら奥の手、ってわけじゃないけど、魔法剣士の面目躍如といきますか。


 手に持っている短剣に再度魔力を込める。


「ウインドバレッド」


 5発の風の弾丸の後を追うように私は駆けだした。


「キャァァァァァ!!!!」


 体全体から炎をまき散らしながら、ファイヤーモンキーが5発のファイヤーボールを繰り出した。互いの魔法が空中でぶつかり、消滅した。


 ファイヤーモンキーの攻撃はそれで終わることなく、絶えず私めがけ火の攻撃を仕掛けてきてる。でも


 ――私の勝ちだよ。


「ウインドルーム。」


 小さく呟いた直後、私の周囲に覆うように球状の風の結界が出来上がった。


 動きのスピードが格段に上がった。どんなに小さな動きでも風が後押ししてくれる。思ったように体を動かせる。


「これなら!」


 迫ってくるファイヤーモンキーの攻撃を風の結界でそらしながらまっすぐファイヤーモンキーとの距離を詰める。


「キャァァァァァ!!!」


 自らの攻撃があたらなかったことの怒りか、はたまた自らの弾幕の中を平然とかけてくる敵に恐怖したのか、再度自らを奮い立たせるように叫んだ。


 ファイヤーモンキーの攻撃が次第に激しさを増していく。その中をイリスはその顔に小さな笑みを浮かべながら難なく潜り抜けていく。


「キャァァァァァ!!!!」


 余程イリスを近づけさせたくないのか、ファイヤーモンキーは一瞬のためを作って、一面に攻撃を放った。右にも左にも、イリスがよけられるスペースを作らないように放たれたその攻撃が最後の力だったのか、ファイヤーモンキーの体から上がっている炎が消えていっている。


「あははっ。」


 その攻撃を前にしてイリスはおびえるどころか、その顔に笑みを浮かべた。よけるスペースは確かにない。右によけても左によけても、攻撃を多少はそらせてもこれだけの量があれば当たってしまうだろう。


 ――なら上なら?


 イリスは大きく地面をけってその攻撃を飛び越えた。


「キャッ!?」


 そして空中を泳ぐように滑らかな動きでファイヤーモンキーに近づき、その首を短剣で斬った。


「初めてやったけど、やってみればどうにかなるもんだね。まあヨミさんの真似だし。本当にすごい。

 ……でも思ったよりも魔力使っちゃった。少しだけ、休憩。」

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