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とうとうですか

 遠くから聞こえてきた咆哮の意味を正確にとらえられたのはギルマス、ヨミだけだった。かつてのスタンピードでボスと接敵した経験がある彼らは、その咆哮が前回のスタンピードが始まる直前にボスが放っていたものと同じであると気づいた。


 つまり考えたくもないことだが、これまでは様子見であり、本番はこれからであるということである。




「……はぁー?まじか。なに、これまでのは予想通りだってか?そこまで知性があるのは聞いたことないんだけど。」


 最前線で一人佇む彼は口では愚痴りながらも、頭ではどうすればいいかを考えていた。


 まず、Dランク冒険者を後退させなければならない。今の段階でそれなりに余裕を持てているが、それがかえって仇になりそうだ。それにもし予想通り、これまでが様子見だったらこれから来るモンスターはこれまでとは格が違うだろうし。だったら、パーティーに関係なしにタンクや剣士を街の入り口前に集め、広報や外壁の上から魔法使いに攻撃させた方がいい。外壁を攻撃されても多少はあきらめるしかない。その代わり、絶対に街の中にモンスターを入れないようにする。


 できればそこにゴリル達を指揮に当てたい。ゴリルの指示なら冒険者達も従うだろう。それで、双子とヨミの4人で前線にたてればベスト、かな。


「ただ、問題はどれだけ考えたとしても誰にも伝えられないってことなんだよね。……万が一、最後に偵察をしていたパーティーが帰ってきたらって思ってたけど、やっぱり帰ってこなかったね。生きてたらいいんだけど。」


 最悪、ランクとはいえ上位の5つのパーティーが誰も生還できないほどの強さをボスモンスターは持ってるってことか。……一人はしんどいかな。





「うわぁー……。マジですか。」


「?どうした?」


「いや、どうやらスタンピードはこれからが本番らしいですよ。最悪です。ボスモンスターだけでなく、それなりに強い魔物も大量にきますよ。

 モンスターの癖になんで作戦なんて考え付いたんでしょうかね。ただでさえ、厄介だっていうのに。」


 彼女は咆哮を聞いた瞬間に後ろを向いて外壁から降り始めた。彼女は自身の役割をしっかりと把握していた。

 この街のために戦うなんてできることならしたくないが、でも頼まれたことは基本断らないという彼女のスタンスがそれを許してくれない。



 ……この街を確実に守りきるにはボスモンスターとそれなりに強い配下を倒すこと。ギルマスと私と……アリスとイリスがいれば何とかなりそうですね。まあ二人のことを考えて短期決戦になりそうですけど、それで倒しきれなかったら私が守りながら頑張りましょう。


 他の配下は……それくらいはDランクでもできますよね。なにせ、スタンピードはボスモンスター以外は雑魚って呼ぶ所もあるらしいですし。もしできなきゃ、街が滅ぶってなれば頑張れるでしょ。ていうかそれくらいやって見せろってもんです。



 彼女は外壁にかかっていたはしごから飛び降りるように地面に降り立つと臨時ギルドに向かって走り出した。とりあえずさっき気づいたことを話して前線に行くこと、アリスとイリスを回収する代わりにゴリルを門に配置すること。


 ギルマスはDランクの生存率も考え全員引かせることを考えていたが、彼女はそんなことを考えていない。考えてみればいたって当然のことで、一体どこの世界に加害者のために動ける被害者がいるだろうか。いくら彼女が頼まれたことを基本的には断れないとはいえ、そこまで人間をやめたわけではなかったのだ。



「サブマス!いますか!?」


 臨時ギルドに飛び込んだ彼女が見たのは地面に倒れている職員らと机に両手をつきながらなんとか立っているサブマスでした。


「大丈夫ですか!?」


 サブマスは真っ青な顔をしながら私の方を見ました。息も荒く、目も苦し気に細められています。


「だい、じょうぶです。……それよりもやはり何かがありましたか。」


「……これからスタンピードの本番が始まります。これまではただの様子見です。」


「そう、ですか。とうとうボスが来るんですか。スタンピードが始まってこれまでボスらしき個体が見つかっていなかったので怪しいと思ってたんですよ。」


「……私もイリスとアリスと共に前線に出ます。私達とギルマスがいればどうにかなるでしょう。その代わりゴリルを下げさせるので、彼らと共にこの街に魔物が入ってこないようにしてください。いいですか?」


「任せてください。……すぐに指示を出します。」


「お願いします。私はもう出ます。」


 弱弱しくもはっきりとしたサブマスの声を背に私は臨時ギルドを飛び出しました。


 まず、イリスとアリスを回収しないと。さっき見た感じだと二人は門の近くにいるはずです。ゴリルは真ん中あたりに。……移動時間を考えるとギリギリもギリギリですね。……急がないと!



「アリス!イリス!いますか!?いたら返事をしてください!!」


 門を出てすぐに二人に呼びかけました。門の近くにはたくさんの冒険者がいます。魔物を街に絶対にいれないようにたくさん集められていたんでしょうけど、みんな謎の叫び声におびえているようで、地面に座り込んでしまっている人もいます。


「いったいどこに……?!」


 時間がありません、本当に見つからないようだったら計画はずれますが、私一人でも行かないと……!


「ヨミさん!」


「ここにいます!」


 急いで出発しようとしたその時に前方から二人の声が聞こえてきました。声のした方を振り返るとそこには手を大きく振っている二人の姿が見えました。


「見つけた!!」


 二人の元に走りながら頭の中で魔法を組み立てます。攻撃じゃない、ただの高速移動するための魔法を。身体強化と支援魔法は無と光の系統がない私には使えない。使えるのは氷と闇。……氷ですね。


 これまで考えもしなかったことです。攻撃するためでも自らを守るためでもなく、ただ速く移動するために魔力を消費するなんてありえませんから。


 氷で早く移動する魔法を。二人も運べて、しかも体力のない二人の体力も温存できるような。となると……!


「二人とも!手を!!」


「「!?」」


 訳が分からずともいわれた通りに出してきた二人の手を取り、魔法を発動させました。


 私達3人の足元から氷の足場がせりあがりました。


「なになにっ!?」

「わわっ!?」


 それはまるで大きな波が押し寄せていくかのように前方に進んでいきます。


「くっ!」


 初めてやる魔法だからか、魔力の消費がえげつないですね!ゴリゴリ魔力が持っていかれます!それに制御もままならないです!通り道にいる冒険者をよけないといけないし!


「ヨミさん!?」

「これはいったい!?」


「今は聞かないで!あと少し!少しで余裕ができるはず!」


 まず進むスピードはこのまま固定。とりあえず、ゴリルがいるところまで進んでからです。

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