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怪しい動き

短めです。

「おー、うまくいきましたね。」


 私の魔法がギルマスの前方に着弾したようです。さすがに倒しきることはほとんどできていませんが、そもそも目的がダメージを与えるためだったので関係ありません。それにきっとギルマスも私がいることに気づいたでしょう。


「うーん……。」


 目的を達成はできたものの、どこか引っかかりますね。消費魔力も魔法の規模を考えれば相応のものですし、威力も申し分ありません。……あとは射程距離と精度?確かに初めての遠距離攻撃でしたけど、怖いくらいにうまくいきましたね。なんならギルマスに当たってもおかしくないと思ってたのに。


「どうした?体に不調でもあるか?」


 近くに誰もいないからか、アリエルが肩から話しかけてきます。


「不調……。確かにそうかもしれません。ただ、どこか引っかかるというか。」


「……そうか。まあそれは仕方のないことだ。その体に慣れてきたのかもしれないが、そもそもまだ体が吸血鬼として完成していないのだからな。直に完成する。そうすればそのつかえも取れるだろう。」


「そうですか……。」


 この体に慣れてきたと思ってましたけど、慣れる体が未完成だったと。はぁー、なら仕方ありませんね。まあこの程度なら少し感覚はずれますが、どうにかなりますかね。


 その時、手をグーパーしながら感触を確かめていた私の所に獰猛な叫び声が聞こえてきました。





 それは、樹海の近くから配下の魔物を通じて戦場を監視していた。何を考えているのかは分からない。だが、その狂気を孕んだ瞳の奥には確かな知性があった。


 ゆえにそれは小分けにして送り出していた配下が瞬殺されたその瞬間に、敵が切り札を切ったと考えた。それか余裕がなくなったのだと。どちらにせよ、敵勢力を削ることには成功している。そして残っている配下の数はおおよそ半分。


 切り札を切った敵なら自らを含め、残りの全勢力で一斉攻撃を仕掛ければ容易に殲滅できるとそれは判断した。


「グオオオォォォォォォ!!!!」


 その一斉進撃を告げる咆哮は街にまで届いた。だが、それは聞かれたとしても関係なかった。なぜなら、その巨体ならば戦場まで多少離れていても数分もかからずにたどり着いてしまうのだから。






 その咆哮は街の中にこもっている住人にも聞こえるほどの声量であった。当然、謹慎を命じられていた冒険者の元へも。


 だが、謹慎を命じられていた冒険者10名のうち、3名がその咆哮がたどり着く前にその場から姿を消していた。


 彼らを監視していた監視員もギルドの職員だった。ゆえにスタンピードが始まってしまった今、彼らも臨時ギルドへ向かってしまっていたために、出ようと思えばいつでも彼らは出ることができた。だが、その3名以外はそもそもその咆哮がなければスタンピードが始まっていることにすら気づいていなかったために外出の選択肢を持っていなかった。


 だが、彼らはスタンピードが始まっていることに気づいた。そしてそれと同時に隣の部屋から人の気配がなくなっていることにもほぼ同時に気づいてしまった。


 彼らにとって自らを犠牲にしてまで守ろうとした大切な師匠に対し、この街で一番の悪意を持つ輩が解放されてしまった。そしてそれに気づいてしまった彼らが取る行動は明らかだろう。幸か不幸か、彼らを止める監視員もまたいないのだから、誰も阻むものはいない。

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