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参戦、です

「うわぁー……。相変わらず地獄絵図ですね……。」


 外壁に登るとスタンピードの状況がよく見えます。きっとあのギルマスのことです、最初はそれなりに配置とかも考えてたんでしょうけど、今はもうただの乱戦ですね。でもまだ怪我をした人が後退できるくらいには余裕があるようです。


 その中でも一番前線で戦闘に身を投じているギルマスはやはり動きが違いますね。当然乱戦の中心あたりで頑張っているゴリル達も、門の近くで街の中にモンスターが入らないように一番後ろで最終防衛線として戦っているアリスとイリスもいい動きをしています。ですが、おそらくギルマスは最前線に立ちながら、全体をボーっと眺めてる私と同じくらいの視野を持てています。


 だからほら、立ち位置も少し違いますよ。倒している魔物の量はとてつもないですが、少し余裕がありそうな左側ではなく少し右側よりに立ってます。それに明らかに全力は出してないですね。ギリギリ倒せるくらいに調整しています。おそらくボスモンスターと戦うことも考えの中に入ってるんでしょう。


「まあそんなことを言っててもしょうがないですよね。とりあえず言われたことだけはしっかりやるとしましょう。」


 とはいえ、ここまで遠距離からの援護だとしっかり考えてからやらないと援護じゃなくなります。冒険者に当てることはなくても彼らの邪魔もしてはいけません。私の魔法に気を取られて戦いに集中できなくなられると逆に困ります。となると、せいぜいがいざ敗走するときになった時に援助することくらいですね。


 なら、今私にできることはそこまで多くありません。私の魔法を見てもそこまで集中力を欠かさないで即座に対応できるような人への援護ですね。ここにいる冒険者だと、ゴリル達かアリスとイリスか、……ギルマスですね。


 で、この中で一番援護が必要なのは考えるまでもなくギルマスですね……。はぁ、必要かどうか分かりませんが、手を貸してあげますか。ボスモンスターも倒してもらわないといけませんし。


 結構遠いですしまだ日も沈み切っていませんが、まあ今の私ならどうにかなるでしょう。それに万が一当たってもギルマスならどうにかできるでしょう。というかしてください。特に最初はどうなるかわかりませんからね。


 ……ふう、じゃあやりますか。


 ―――アイスバレッド




「ふぅ、……そろそろしんどくなってきたかな。」


 そろそろスタンピードが始まってから30分くらい経ったけど全然モンスターの数が減らないんだけど。それにまだボスモンスターの気配もしないし。波は超えた感じだけど、またすぐに次が来る。


 ……まったくどうなってんだよ。ボスモンスターが一番前で統率してるんじゃないのかよ。


「はぁーーー……。」


 それにヨミはどうしたんだよ?さっき少しだけ後方の士気が上がったから、双子が来たことはもうわかってるけど、まだヨミは来てない。


 ……やっぱり酷だったか。頼めたことじゃないってわかってはいるんだけど。それだけのことを僕達は彼女にしてしまったけど。


 ……いや、やっぱり僕は分ってなかった。分かったつもりになってた。彼女の苦しみも、悲しみも、その境遇も。


 ……ただ無駄に長く生きてきただけのつけが回ってきたね。人の感情の機微にやっぱり疎くなってしまう。


 考えなしの発言も、彼女の限界に気づけなかったことも、全部後悔してももう何も取り返せない。それだけのことをしてしまった。


 ……はは、なんで今更になってこんな後悔してんだよ。らしくないぞ、僕。どうせ僕はいつも適当で、それでいて結局はどうにかするんだから。誰に迷惑をかけてもそんなの素知らぬ振りをして、ちゃらんぽらんにしてればいいだろ。


 まだ魔力は少ししか消費してない。やろうと思えば、この程度の魔物だけだったら一晩中戦い抜くことだってできる。


「そうだ。僕一人でもできる。どうせ明日の僕は昨日は大変だったねー、とか言いながら冒険者達と酒でも飲んでるんだから。」


 遠くからまたワイルドウルフとかクレイジーモンキーが群れでやってきたよ。


「……かかってこい!!」


 誰が聞いてるわけでもないのにそう呟いて、剣を正中線に構える。……だいたい50体。少なくとも10体は引き受けないとな。そろそろDランクだと厳しくなってきているころだろうし。


 そう思った時、背後から突然魔法の気配がした。それも魔力からしてそれなりに大きな魔法だ。


 だれかが焦って暴発でもしたのか?それとも……?


 気になるが、後ろを振り返っているほど余裕はないね。どうにか頑張ってくれ。


 ―――そう思ってた時期が僕にもありました。


 剣を構えていた僕の目の前に大量の鋭利な氷の雨が降り注いだ。


「うぇっ!?」


 その雨は目の前の魔物の群れにも降り注いだ。倒しきれた魔物の数こそ少ないが、襲ってきた魔物全てに小さくないダメージを与えられてる。


 ……こんな芸当ができるのは一人しかいないな。


 頭の中に一人の冒険者の姿を思い浮かべながら、突然の攻撃に若干うろたえている魔物めがけ剣を振り下ろした。


 ……まったく不思議だ。まだまだ地獄は始まったばかりだっていうのに、笑みがこみあげてきて止められそうにない。


 もう負ける気がしない。そうだよね、ヨミ!?

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