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ううむ、予想通りではありますが……

冒険者:冒険者カード


表面に冒険者の名前、ランクが、後面にギルドに預けている金額や依頼達成度などが書かれている。ただし、ステータスやスキルについては記載がないが、本人はその両方を感覚で理解している。


例えば、スキルを得た時にはその瞬間にその内容が頭の中に入ってくる。ステータスであれば、あくまで目安であるが把握できる。そしてその総合の数値が実際のランクとほぼ確実に適合している。

 さて、街に帰ってきました。今日も今日とて昨日と同じくらいの魔物を狩ってきましたよ。アイテム袋が重たいです。


 街の守衛の兵士さんに昨日は驚かれましたが、今日はそんなことはありませんでした。なんだよ今日もか、みたいな感じで見られましたけど。すいませんね、夜しか動けないんです。


「さっさと今日狩った魔物を解体場にぶちまけて帰りましょう。ごはんを食べる必要もないので帰ったらお風呂に入ってすぐに寝れますね。」


 気分はルンルンですよ。もう何も私を止められないぜー。うおおお。


「ふわぁーあ……。まあ、食べる必要はないが食べてはいけないわけではないんだがな。それよりもいいのか?確かギルマスから話があるとか言ってたような気がするが。」


 ……あぁー。そんな話がありましたね、そういえば。……えぇ?これからですか?テンションダダ下がりなんですが。


「……最悪です。行きたくありません。」


「行っておけ。ギルマスを敵に回したら後が大変だぞ。紹介状も書いてもらえるんだろ?」


「仕方ありませんねぇ。少し我慢してあげますか。」


 あと少しの辛抱です。……厄介ごとも回ってきますけど。多分、おそらく、ほぼ確実に。




「おはよう、よく帰ってきたね。」


「……はあ、なんで待ち構えてるんですか。」


 冒険者ギルドに入った私を待ち構えていたのは文字通り軽薄な男でした。まあ話があるっていうのは聞いてましたから予想はしてましたけど。


「あれ?話があるって伝言を頼んだはずなんだけど、聞いてない?」


「聞いてますよ。でもなんで玄関で待ち構えてるんですか。ギルマスらしく偉そうにしてればいいじゃないですか。」


「ははは。そんな余裕がなくなってしまってね。ちょっと上まで来てもらうよ。」


「はいはい。」


 案内された先はギルマスの執務室でした。ギルマスは仕事が早いのか、する仕事がないのか部屋がきれいなんですよね。あるのは机と他の街や村と連絡を取るための魔道具くらい。のはずなんですがねえ。あれは、魔石ですかね、その山が出来上がっています。


「で、話って何ですか?その魔石の山と関係があるんですか?まだ時期じゃないのに随分と集めたようで。」


「そうだよ。とはいえ、これは冒険者とか他の街から買いあさったとかじゃない。どこも魔石に余裕なんてないし、なんなら冒険者はギルドに報告こそしても売ったりはしないからね。」


 でしょうね。魔石がついている武器とそうでない武器とでは性能の差がとてつもないことになりますし。杖であろうと剣であろうと、盾であろうとも同じことが言えます。


「はあ、それで?何が言いたいんですか?」


「これ、全部ヨミのなんだ。」


 ……はあ。


「何言ってるんですか?そんな大量の魔石を一体いつ私が手に入れたっていうんですか?」


「え、昨日だけど。」


「昨日!?昨日魔石を持っているような強い魔物とは戦ってませんよ!?それもそんな大量の魔石は考えられません!」


「いや、本当だよ?っていうか気づいてるよね?これが全部スタンピードの前兆だって。」


 あー、知りません、知りません。何言ってるのかかけらも分かりませんね。


「はあ、まあ分かってたけど。いやだと思うけど聞いてね。


 この魔石は全部昨日ヨミが取ってきたものだ。この数から分かるように、解体された魔物ほぼすべての死体から魔石が発見された。つまりこれはスタンピードを引き起こせるくらい強力な魔物が発生したことを示している。

 以上を踏まえて、ギルドはスタンピードに備え厳戒態勢に入ることになった。通常の依頼をすべて取り下げ、また同時に24時間ギルドを開けることとする。冒険者にはいつスタンピードが起こってもいいように万全の態勢を維持させ、街の警備隊にも樹海方面の警戒をより一層強化してもらう。当然、そのための援助もある。何があろうとスタンピードがこの街にたどり着く前に抑え込む!


 っていう決定をさっき下したんだ。もうギルド職員には伝達済みで、冒険者にも張り紙をしたからすぐ広まるだろうね。」


 はあ。またギルドがあの無駄にピリピリした空間に戻るんですか。まあ普段からいないのでなんでもいいんですけど。ただ、スタンピードとか関係なしに私に絡んでくる馬鹿どもは多かったので。……ああ、思い出しただけでこの街にいる理由がないし、出ていきたい理由がどんどん増えていきますね。


「……頑張ってください!私はこの街から出るとします!」


「いや、そんな顔してもだめだから。あと緊急時だから冒険者の出立は認められないんだよね。」


 ちーん、逃げ場がなくなりました。一瞬ですね。これを聞く前に出てればよかったです。


 ……いいや。まだあきらめるには早いです。まだ別の手段があるはず……!!考えるんです、私の頭!!


「いやなのはわかるんだけど、高ランクの冒険者としての義務を果たしてほしい。Cランク冒険者としてこの街のために戦ってくれ。」


 はあ、そういいますよね。この街のことを考えたらそりゃギルマスが言ってることは正しいんでしょう。でも、やだなぁ。


 その時、執務室の扉に無数の亀裂が入り崩れ落ちました。


「ギルマス?聞こえてきたけど、どういうこと?」

「この街のためにヨミさんがしなきゃいけないことってもうないよね?」


 その扉の先には短剣の柄に手をのせてギルマスを睨んでいる瓜二つの少女二人が立っていました。

登場人物紹介


アリス(双子・姉)


体力:E

魔力:C

物理:C

魔法:C

総合:C


ウリオールの街で数少ないCランクの冒険者。妹のイリスとタッグを組んで活動している。容姿はイリスと瓜二つだが、真面目で正義感が強く、また実力主義な考えを持つためかクールな印象を与える。金髪碧眼の少女だが、その見た目からは考えられないほどの実力がある。剣と魔法両方を一流の腕前を持つが、スタミナがないため長期戦が苦手。


「はあ、はあ……。体力が……ない。……絶望的……。」


そんな彼女は以前のスタンピードでヨミに助けられた経験を持つ。その時にヨミの実力を目の当たりにし、以降ヨミのことを師匠として敬意をもっている。ゆえに実力がないのにヨミのことを見下しているこの街の冒険者のことは大抵嫌っている。ゆえに視線は常に鋭く、だれに対しても冷たい態度を取ってしまう。クールな印象を持たれているのはこれが原因かもしれない。現にイリスやヨミ、仲のいい受付嬢と話すときは小さいが笑顔を浮かべることもあるようだ。

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