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領都騒乱・終結 その1

「あなたの仕事?私を止めるのが?ノア=スプリングフィール。」


「そうね。それ以外することがない、というのが正しい言い方だけど。」


 サーシャがカレンを追いかけるのであればそれを止めなければならない、と考えていたノアであるが、サーシャからは戦意はおろか、何の意思の気配も感じない。


「そう。なら安心して。追いかけるつもりはない。」


 サーシャは淡々とそう告げる。


「私の目的は、あなたに変わった。」


 サーシャは目を妖しく輝かせながら、そう呟いた。





 世界の崩壊と蒸発。その果てに完全な異世界を作り出した神性結界は崩れ、世界は一つに終息する。


 これまでなかったのがおかしかったかのように、世界が再度彼らのことを認識した。海の中にはボロボロのリヴァイアサン。その近くの空にアーサーとティターニアの姿があった。


 権能が使えないのはリヴァイアサンだけでなくティターニアも同じ。だが、リヴァイアサンの方が戦い慣れをしているのだろう、明らかに余力を残していた。対してティターニアには余裕はなく、戦えないだろう。

 そのため、この戦いは今、ティターニアの想定通りに権能が使えないリヴァイアサンとアーサーの戦いへとシフトしたはずだった。


 しかしティターニアに想定外があるとしたら消耗が激しく、身動きはおろか、飛行を維持するのすら厳しかったこと、アーサーが神性領域内の戦いで意識を失い、まだ帰ってきてないことだ。


 力尽きかけ、始祖精霊との同化も解けたティターニアの腕の中にアーサーの姿がある。


「――――――!!!」


 声なき声と共にリヴァイアサンから魔法が放たれた。海水が巨大な蛇の形を取り、海上に浮かぶティターニアへと襲い掛かる。


 もうティターニアはその魔法にすら気づけていない。視界は霞み、意識は沈み、感覚は遠い。だが、そんな意識と無意識の狭間をその光は掻い潜った。


「まったく、詰めが甘いな。悪い癖は治らんものだ、ニア。」


 少女の姿をしたアリエルがリヴァイアサンの魔法を振り払い、二人を空間転移で港へ移動させた。


「それで?そろそろ目を覚ましたらどうだ?もう十分暴れたろ、リヴァイアサン。」


 その間もリヴァイアサンは絶えず海水を生き物の形へと変え、攻撃を仕掛けている。


「――――!!!」


「声も出せないほどか。なら荒療治になるが、我慢しろ。」


 神像兵器たるアリエルの持つ権能は3つ。一つは空間を支配する“空間”、二つはこの星の最小単位である量子を支配する“量子”、そして運命律に手をかけることを可能とする“運命”。


「ニアの様子も気になるからな、お前にはそこまで手心は加えてやれんぞ?


 炎性結界、収束ーーー炎叢。」


 アリエルの周囲の空間が炎の満ちる地獄絵図と化し、しかしそれは収束し、まるで意志を持ったかのようにアリエルの周囲を揺蕩っている。


 空間を司るアリエルは、長年の鍛錬から特定の空間を創り出せる程度まで成長していた。彼女はその創り出した空間を始創空間と呼び、切り札の一つとしていた。


 空間のみを創る空性結界を始めとして、炎満ちる炎性結界、一面の銀世界である氷性結界、雷そのものである雷性結界。これらは瞬時にアリエルが使えるものであり、時間さえかければ空性結界から新たな結界を作り出すことができる。


 そして空間そのものを圧縮した。結果それはただの炎のように見えるが、普通の炎とは違い消えることはない。もし、消そうとするのであれば、空間魔法による中和のみだろう。


「運命交錯ーーー偽未来選別眼(フォルトナ)。」


 量子の権能を目に付与することで発動するのが偽未来測定眼(ラプラス)であれば、運命を付与することで発動するのが偽未来選別眼(フォルトナ)である。


 偽未来測定眼(ラプラス)が未来を測定し、アリエルの手でも選べない未来があった時偽未来選別眼(フォルトナ)を使う。


 特にリヴァイアサン等、同格以上の存在がいるとき、偽未来測定眼(ラプラス)のみでは対処しきれない。対して偽未来選別眼(フォルトナ)のみでは、未来が複雑に分岐する場面では未来を選定しきれない。


 そのため、アリエルは神話の時代の戦いにおいては、この二つを連動させて戦っていたのだ。


 炎が二条の槍と化し、それが螺旋状に絡まり、円錐状の形状へと変貌した。


「いくぞ、リヴァイアサン。---灼焔槍(グングニル)。」


 アリエルの手から放たれた炎の槍はまっすぐリヴァイアサンに向かって突き進んでいく。ただ最短距離をかけているように見えるが、運命操作によって当たることが確定してる。たとえリヴァイアサンが避けようとしても防ごうとしても、それらをすべて無視して最大威力を維持したまま命中する。


「お前の海神が復活するまで悶えているといい。それまでには片が付いてるはずだ。」


 リヴァイアサンの全身が燃え上がり、周囲の海水を蒸発させる。しかもその炎熱地獄はリヴァイアサンのフィールドである海の中で生み出された。

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