へーって感じです
魔法使い
系統は6つに分かれる。火、水、風、光、闇、無。
この中から8割の冒険者は一つの系統に適正を持ち、残りの1.5割が二つ、最後の0.5割が三つ以上の適正を持つ。
「ふう、ようやくギルドにつきました。さっさと換金して帰りましょう。」
ちんたら歩いていたのでギルドについたときにはもう日が少し昇っていました。なのでお店とかはもう開いていますよ。
……何か私についているんですかね。やけに注目されたんですが。まあいいですよ、きっと昨日と同じなんでしょう。理由は思いつきませんが、仕方ありません。諦めます。
昨日と同じようにギルドに入ると、しかしその様子は一変していました。
「な……。何かあったんですかね?」
普段だったらたくさん置かれている椅子と机が端の方に重ねておかれていて、ギルドが大きな広間みたいになっています。床も何かこぼしたのか液体の跡がたくさん残っていますし、何なら壁には黒く焦げているところもあります。
それなのに光はいつも通りついているのが若干不気味ですね。
……え?本当に一体何があったんでしょうか?
「あ。」
突然声が聞こえてきました。思わず聞こえた方を向いてみるとそこにいたのはギルマスでした。
「げ。」
「げ、ってなんだ。げって。ここのギルドのマスターだぞ。」
ここのギルマスはスラッとした細い男なんですが、どうやらこの人は剣士らしいです。しかもBランク相当なのだとか。
「そりゃ、このギルドにはびこっている誤解はあなたのせいですからね。」
なんですか、デュアルキャスターになるなんて随分練習頑張ったんだねって。魔法の練習も頑張りましたよ。でも練習以外も普通に魔物と戦ってましたから。
それなのにここの冒険者共はデュアルキャスターは魔法の練習を頑張ったらなれる、だとかふざけたことを言い出したんですよ。私以外複数の系統に適性を持っている人がいないからどれだけ大変なことかわからないんですよ。
「それは申し訳ない。何度言われても、それしか僕にはいえない。まさか、ここまで不理解による差別が広まるとは思わなかった。少なくとも魔法使いには伝わると思ったんだけど。」
「別に謝ってほしいわけじゃありません。あなたが謝ったところで何も変わりませんし。」
「そっか。そうだよね。うん、王都に行ってみるといいよ。確かパーティー解散したんだよね?なら、もう君はこの街にいる必要もないだろう?王都には数は少ないけどデュアルキャスターもマルチキャスターもいるからヨミにとっても刺激になると思うよ。なんなら紹介状も書くよ。」
「言われずともそのつもりですよ。まあこの街を出る少し前くらいに受け取りに行くので準備をお願いします。」
すぐにでも出ていきたいです。この街には勇者様と出会ったという思い出もありますけど、それ以上に酷い目に遭ってきましたし。
ですが、今日アリエルに魔法を教わり始めたばっかりなんですよね。正直、魔力を使い切るのは大変ですし気持ち悪くなるので、できれば慣れ親しんだ場所がいいですし家があったらもっといいです。なので今のところもう少しこの街にいるつもりなんですよね。教えるつもりはありませんが。
「で、さっきから気になってたんだけど、何かあったのかい?髪と目の色は変わってるし、それに肩に猫も乗ってるし。あと随分疲れているようだけど。」
あー、それ気になりますよね。でもなー、うーん、言わない方がよさそうですよね。私が吸血鬼になったとか正直言われても信じられないでしょうし。しかももし信じられてもその後がめんどくさそうです。私自身吸血鬼は自分とアリエルしか知りませんし。
よし、はぐらかしましょう。
「ちょっと頑張っただけです。それよりもこの惨状はなんですか?」
「あ、はぐらかしたな。まあいいか。この街から出ていくときはしっかり教えてくれ。」
まあそれは。紹介状はあった方が何かといいので行きますが。
「で、この惨状について、ね……。まいっか。でも一応その場に居合わせた冒険者達には口止めしといたからそんなに広めないでね。」
へー、そんなことがあったんですか。まあ広めたくても、広める相手なんていませんけどね。
「あ、でも誰もいないから大丈夫か。いらない心配だったね。」
「はーあ?そんなこと言ってるから嫌われるんですよ。」
「ははっ、大きなお世話さ。……でここで起こったことだけど、まあ簡単に言えば喧嘩だよね。7人のDランクに上がったばっかりの冒険者とあと少しでCランクに上がるかもって思ってたDランクの冒険者が喧嘩したんだよ。」
おやおや、喧嘩ですか。随分久しぶりじゃないですか?確かこの人がギルマスになってからはほとんど起こっていなかったような気がします。
それになぜか聞いたことがある構成ですね。7人の新人にCランクに上がりかけの勘違い野郎ですか。
「しかもその原因は何だったと思う?」
「さあ?どうせくだらないことでしょう?」
「まさか。くだらないことだったら何も隠す必要などないさ。ただ、これはすこしシビアな話でね。さすがに放置はできなかった。
というのもね、ランクというものに対する不理解というべきものだったんだ。Dランク冒険者がCランク冒険者を貶した。そんなありえないことが喧嘩の原因だった。
誰のことかは分かるだろう?」
「え、ああ。私のことですか。」
「……驚かないんだね?」
「まあ。」
そりゃ、あれだけ陰口叩かれてれば気づきますよ。この街にいる最高ランクはギルマスのBランク。ギルマス以外はBランクの冒険者はいないから実質的にこのギルドでの最高ランクはCランクになります。しかもそのCランクにたどり着いたのは私とかゴリルとそのパーティーメンバー、あとはあの双子くらいしかいないです。合計で10人に満たない、本当に少数です。
それだっていうのに、私のことを分かるように貶してくるとか、本当何を考えているんだか。自分たちがそれ以下だとは気づけないんですかね。
本当に、へーって感じです。




