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巫女ねえちゃんは、ひまじゃない!  作者: 日々一陽
第8章 巫女姉ちゃんは押しかける
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三話

「大丈夫です、すぐ近くですから」


 桜井三兄妹が住むアパートの一階、健太は彼女を家まで送り届けると申し出た。


「でも、もう真っ暗だし」


 歩いてたった五分の|道程、美月子と健太は少し離れてゆっくり歩く。

 健二と初穂はお留守番、ふたりきりの今、言いたいことはたくさんあるのに、ただ沈黙だけが支配する。美月子は少し上を向く。街の明かりが邪魔をして星は数えるほどしか見えない。昔、思い描いた桜井先輩より実際の彼はもっともっと素敵だ。穏やかで優しくて楽しくて。でも彼は私のこと、どう思っているのだろう。それに関して美月子は全く自信がなかった。こんなに好意を示しているのに、まるで高い壁があるみたいに。


 街灯の下、先に口を開いたのは健太だった。


「ごめんなさい、あいつらがいつも迷惑かけて」

「謝らないでください、私の方が遊んで貰ってるので」

「…………」

「また、よかったら寄せてください。こう見えて、普通に料理も出来ますから」

「いえいえそんな、申し訳ない」


 申し訳ない、なんてない!

 どうしてこう遠慮ばかりするのだろう。美月子は思い切って言っているのに。女の子がここまで言っているのに。美月子は恨めしそうな目で睨む。


「あ、えっと、吉住さんのおかげで健二も初穂も大喜びで、ほんとにありがとう――」

「桜井先輩は?」

「え?」

「桜井先輩はどうなのですか? ご迷惑ですか?」


 狭い一車線の道路、後ろからヘッドライトが迫る。健太は美月子を前に行かせた。


「うれ……」

「えっ?」


 その声は騒音にかき消される。

 赤いテールランプが坂を下りて見えなくる。

 また並んだふたりは神社の小さな駐車場の脇を通り過ぎた。


「ごめん、仕事休ませちゃって」

「いえいえ、本来、平日の受付はないんです。私の気まぐれなんです」

「そうなんだ」

「だからきっと神様も許してくれます」

「ああ、巫女さんは神様に仕える身ですものね」

「ええまあ」

「僕は信じてないけど、神様」

「え?」

「あ、ごめんなさい。今の、忘れてください」


 美月子の家は神社の近くの二階建て。


「ただいま」

「おかえりみっちゃん。お風呂入れるわよ」

「あとでっ」


 階段を上って自分の部屋に入るとベッドに座り、そのまま仰向けに倒れ込んだ。

 どうしてかしら、彼の家にお邪魔しても、みんなでクッキーを焼いて晩ご飯をいただいても、桜井先輩は少しも近くにならない。


(僕は信じてないけど――)


 神様を信じない人なんて、世の中にたくさんいる。いや、信じている人の方が少ないのかも知れない。でも桜井先輩はちょっと違う。お参りの時、お賽銭を上げても手は合わせない。弟と妹が手を合わせてる様子をじっと見ているだけ。そんな人、美月子は知らない。

 それに三人のご両親のことも――


「姉ちゃん、あれ、彼氏か?」

「うわあっ! って大輝、ちゃんとノックしなさい!」

「したじゃん」


 ニタニタと笑いながら弟の大輝はズカズカ部屋に入ってくる。


「返事してないでしょ!」

「姉ちゃんだって勝手に入ってくるじゃん」

「大輝が寝坊するからよ!」

「で、さっきまで一緒だったの誰?」

「先輩よ、先輩」

「え? 姉ちゃん女子校だろ? あれ、男装した女か?」

「あれ言うな!」

「じゃあ、彼女?」

「彼よ!」

「あっ、やっぱ彼なんだ」


 ニヤけ顔の弟を見て美月子は小さく息を吐いた。


「だったらいいけどね」

「えっ? 」

「あ、今のうそうそ!」

「ふ~ん。へへ~~」

「あっ、こら大輝、勘違い、それ勘違いだからあっ!」


 弟が出ていった部屋のドアから、窓の外に視線を移す。

 さっき幾つか見えていた星の光は、ここではひとつも見えなかった。



第8章 完


とってもお久しぶりです。桜井健太です。

お菓子が作れる女の子って素敵ですよね。

クッキーとか簡単そうに思えるんですけど、でも多分僕が作っても可愛い形とか無理だろうし、たとえ物理的組成が同じでも、気持ち的にも美味しくない気がするんですよね。

それに健二も初穂もあんなに吉住さんに懐いちゃって、嬉しい反面、世話役の僕としてはちょっとだけ微妙です。まあ僕の料理より彼女の方が美味いだろうし、しかり方も上手っぽいけど、兄の価値っていったい……


さて次章は吉住さんが通う高校の文化祭のお話です。

女子高だけど文化祭は一般開放するらしく健二も初穂もノリノリ!

ってまた困ったことになりそうな……


ではまた次章でお会いしましょう。

桜井健太でした。


PS:次章開始前に別の小説を連載開始する予定です。

   次章以降もゆっくりの更新となります。

   ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!

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