表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/45

30.シマエナガに似ています


翌々日から、ルークさんとの見回りが始まった。

万が一の事態がないようにと、フォルカ様もついて来てくれている。


緊張しつつも特にトラブルもなく、順調に見回りは進んでいった。

モンスターはいるにはいたが、小型で危険度の低い種類のみのようで、この程度なら人里近くの森でも珍しくないそうだ。

放置しても問題ないらしいが念には念を入れ、魔石のためにも浄化で退治していく。


 見回りの6日目。

今日見つけたのは、猿とトカゲを足して2で割ったような、細長い手足と鱗を持つモンスターだ。

集中し、素早く浄化の魔術を放った。


『光よ、害あるを拭い不浄を清めたまえ!』


 私を中心に、仄かに周りが光を帯びる。

 残念ながらまだ離れた場所にピンポイントに、魔術を届かせることはできていない。


 なので多少ズレても当たるように、広範囲に浄化の魔術を行使していく。

 狙い通り今回も、モンスターが浄化を受け黒い煙となり消えていった。


「相変わらずでたらめな力だな」


 ルークさんが小さくうなっている。


「何度か高位の神官が浄化を使う場に居合わせたことはあるが、こうもあっさりと、広範囲への浄化を使うのは君くらいだぞ?」

「……人前では、できるだけ使用を控えますね」


 やはり大っぴらには使わない方がよさそうだ。


 注意を新にしつつ、モンスターが残した魔石を拾っていく。

 6日間で合計、9つの魔石が手に入った。

いずれも小型のモンスターから採れた小さな魔石だけど、全部あわせれば料理屋の開業資金には足りそうだ。


 魔石は小さいものでも、そこそこのお値段がつくらしい。

 瘴気で構成されたモンスターは人間が直接触れると害があるが、魔石は無害なようで少し不思議だ。

魔石を乾電池のように使う技術も存在し、私も魔石コンロにはお世話になっていた。


「今日はもう少し行ったところで見回りを終わりにする。じきに道が見えてくるはずだ」

「西隣の大きな町へ続く道ですね」


 森の中、比較的木々のまばらな場所を切り開き、道が設けられているらしい。

 しばらく歩くと、行く手に木が少なくなっていく。

 森から道へ、人の手の入った領域に近づいて、ほっと息をついた。


「……待て」


 ルークさんの制止が入った。


 どうしたんだろう?

 私は動きを止め、ルークさんの様子をうかがった。


「道に人の気配がある。それにこれは……」

「‼」


 私にも聞こえた。

 小さくだが羽ばたきのような、何かが飛んでくる音がする。


「モンスター⁉」


 咄嗟に反射的に、浄化の魔術を周囲へと放った。


 私を起点に広がる白い光。

 斜め前から飛んできた、鳥の形をした何かが一瞬動きを硬直させた。

 が、黒いモヤが吹き出し消えることは無く、羽ばたきを再開しこちらへとやってくる。


「モンスターじゃな――――わっ⁉」


 一羽の鳥が私の近くで、羽ばたきしきりに飛び回っている。

 人間に対する警戒心が無いのか、ちょこんと肩へとのっかってきた。


「白いスズメ、いやシマエナガ……?」


 言ってみて、どちらも違う気がした。


 大きさはスズメほどで、白い胴体と丸々とした姿は前世写真で見たシマエナガに似ている。

 けど頭にはぴょこんと長い飾り羽がついているし、尻尾や羽の先端がほんのり青く染まっていた。

 初めて見る種類の小鳥のようだ。


「ちゅちゅい? ちゅちゅちゅんっ!」


 小鳥が何やら囀っている。


 初対面なのに懐かれた?

 つぶらな黒い瞳が、じっとこちらの顔を覗き込んでいた。


「その方はもしや……」

「その方? この小鳥のことですか?」


 ルークさんには心当たりがあるのか、気になることを呟いていた。

 詳しく話を聞こうとしたところで、


「――――て――――ま―――れ」


 声がこちらへと近づいてくる。

 耳を澄ますと、高い子供の声が聞こえた。


「待ってくれ! そんなに早く飛ばな―――――うわっ⁉」


 小鳥が飛んできた方から、今度は子供が、おそらくは少年が飛び出してきた。

 金色の髪に緑の瞳。着ている服は上等な、仕立てのよいものに見える。


 年は私より少し上。十歳か十一歳くらいかな?

 少年は私と小鳥を見て固まっている。


「嘘だろ? 初対面の相手にせ―――――」

「エル様」


 ルークさんの声に、少年がはっとし口をつぐんだ。


「こんなところでどうされたのですか?」

「……ルーク?」


 少年がびくりと肩を揺らしている。

 いたずらを見つかった子供の反応に似ていた。


「……ルークこそなんで、こんな森の中にいるんだよ?」

「俺は任務の一環です」

「そんな小さな女の子と一緒に? その子何者なんだよ?」

「リナリアです」


 簡単に自己紹介しておく。


「この森の近くにある、メルクト村を中心に生活しています」

「メルクト村で? 見慣れない顔だな」

「エル……様もメルクト村によく行くんですか?」

「様はいらない。エルと呼んでくれ」


 エルがにこりと笑った。

 気さくな性格の持ち主のようだ。


「リナリア、その方をこちらへ渡してくれ」


 その方、という呼び方がまたもや気になるけど、きっとこの小鳥のことだ。

 肩に手を伸ばすと軽く羽ばたき、指先にとまってくれた。


「ちゅちゅんっ……」


 小鳥は体を一度指へとすり寄せると、エルの肩へ向かって飛んでいった

 エルも慣れた様子で、小鳥を肩にとまらせている。


「可愛いですね。名前はなんていうの?」

「フィルと呼んでくれ」


 教えられた名前を試しに呼んでみる。

 ちちち、と囀りが返ってきて楽しかった。


「エルとフィルは、森の中の道を進んでいたの?」

「メルクト村へお忍びに向かうところだ」

「お忍び……」

「どうだ驚いたのか?」

「いえ、納得だなぁと」


 ルークさんが敬語だし、服もいかにも高そうだ。

 ただの平民です、と言われた方が無理があった。

 エル自身は溌溂とした印象だけど、気品というかオーラというか、メルクト村の中で会う子供たちとは異なる雰囲気も漂わせていた。


「ちぇ、つまらないな。これでも結構、平民らしい服装と行動をしてるつもりだったのにな」

「だからさっき、エル様ではなく呼び捨てにしてと言ったんですね」

「堅苦しいし、これからもエルでよろしくな」


 エルが握手を求め腕を伸ばしてきた。


「はい、エル。よろしくお願いしま――――わわっ⁉」


 私の手を脇を、エルが突然くすぐってきた。




シマエナガ、かわいいですよね。

いつか北海道にいって、生エナガちゃんを見てみたいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ