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19.生活の文明レベルが急上昇しました


 ルークさんの案内で買い出しに行くことができた私。

 おかげでたくさんの道具と食材を、一度に手に入れることができた。


「お玉に包丁、フライパン、フォークにスプーン、コップにお皿に――――」


 小テーブルの上にずらりと、買い出しの成果を並べていった。


 文明的な生活ばんざいっ!


 木彫りの皿を手に、うきうきと心が弾んでいく。

 皿の置いてある小テーブルも買い出しで手に入れた品で、ルークさんがここまで運んでくれている。 ルークさんはとても親切で、これからも何かあれば、手伝おうと言ってくれていた。


「ルークさんと、それにゼーラお婆ちゃんにも、またお礼をしにいかないとね」


 これだけ道具が揃えば、ぐっと料理のレパートリーも増えるはずだ。

 美味しい料理が作れたら、また二人にお礼として持って行こう。


《ふむ、道具も揃ったようだし、これから何を作るのだ?》


 フォルカ様が横から、テーブルを覗き込んでくる。


 ルークさんがいる間はただの狐のフリをし黙っていたけど、昨晩ルークさんがクロルに乗り去っていくと、フォルカ様はすぐ私との会話を再開したのだった。


「新しい料理に挑戦しようと思います。今日は肉がありますからね!」


 頬がゆるゆると緩んだ。


 肉! 肉! お肉様っ‼

 お肉様がどーんと、テーブルの中央にのっかっている。

 鶏のももに当たる部位に、私のテンションがぐんと上がった。


《……おまえ、それほど肉が好きだったのか? 我が猪を狩ってこようとした時は、いらないと即答していたではないか》

「お肉は好きだけど、解体は難しいですから……」


 前世は節約のため自炊し、転生後も炊事を行っていたけれど。

 さすがに本格的な血抜きや解体の経験は無かった。


 フォルカ様に頼めば解体も何とかしてくれそうな気もするけど、あまり頼りすぎるわけにもいかない。 召喚術では今のところ肉や魚そのものを作るのも無理なので、久しぶりのお肉様なのだった。


「調理の前に浄化浄化、っと」


 念のため、もも肉にも浄化の魔術をかけておく。


 ……ちなみにこの浄化の魔術、ルークさん曰く普通は、瘴気という有害な物質に汚染された物体や生物、空間に対して使う術らしい。

 殺菌・消毒作用は副次的な効果のようで、私のように食べ物に対して使う人間はほぼいないらしかった。


 浄化は光属性の魔術であるため使い手が少なく、触媒抜きでは握り拳1個分の大きさで使うだけでもそこそこ魔力を食うため、まず日常生活ではお目にかからないそうだ。


「……けど、使えるものは使ってこそだよね」


 食中毒は怖いもんね。

 もし浄化の魔術が無かったら、私はお腹を壊し死んでいたかもしれない


「浄化はこれで完了。まずは下ごしらえをして……」


 もも肉に切れ込みを入れ、余分な脂を取り除いていく。

 革にぷすぷすとフォークへ穴をあけ、下味を刷り込んでいった。


 下味は買い出しで手に入れた塩と、召喚術で手に入れた胡椒だ。

 塩は比較的安く売っていたけど、胡椒は貴重で、大きな町に行かないと手に入らないらしい。

 これからは安価な食材はメルクト村で購入し、高かったりそもそも店に並んでいない食材のみを、召喚術で補っていく方針だ。


 下味をもも肉に馴染ませてる間に、にんにくを薄切りにしていく。

 フライパンにさっと油を引きにんにくを炒め、こんがりしたら取り出す。


 次はもも肉を皮を下にして入れ、皮がカリっとするまでフォルカ様に中火で焼いてもらう。

 もも肉を裏返したら火を弱めてもらい5分ほど焼き、フォークで差し透き通った汁が出たら火を止める。


 そのまま更に2、3分置いたら皿に移し、塩、胡椒を振りにんにくの薄切りを盛りつけ完成だ。


「ガーリックチキンソテー、出来上がりっ!」


 匂い発つにんにくの香り。こんがりと表面が焼かれたもも肉。

 切り分けると肉汁があふれ出し、ツヤツヤと皿の上で煌いた。


 外はカリっ、中はじゅわり。

 香ばしい皮と、柔らかくほぐれる肉からうま味が迸るようだった。


「んん~~~~。お肉っ! お肉最高‼ 圧倒的お肉の美味しさっ‼」

《おまえ、本当に肉が好きなのだな……》


 フォルカ様はやや引いた様子を見せつつ、しっかりとガーリックチキンソテーを完食していたのだった。



☆☆☆☆☆



 ガーリックチキンソテーを皮切りに、私は前世で食べた料理の再現に挑戦していった。

 買い出しで手に入れた食材をメインに、足りない分を召喚術で用意していく。


「う~ん、今日は失敗かぁ……」


 ぶすぶすとフライパンの上で、豚肉が焦げついてしまっている。


 豚肉の味噌漬け焼きを作ろうとしたのだけど……。

 予想より肉がフライパンに張り付き、火の通りが早くなったのかもしれない。

 油はちゃんと引いたはずだから、肉の下ごしらえが悪かったのか、フライパンとの相性が悪いのか……。


 原因を考えつつ、焦げた豚肉を胃に収めていく。

 前世とは使っている道具が違うし、豚肉やもも肉も、品種改良されてい日本のものとは、細かく性質が違っているのかもしれない。

 火力調整はフォルカ様のおかげで安定しているけど、料理の成功率は半々だ。


 ルークさんと一緒に行った買い出しから四日間。

 そろそろ足の速い食材が尽きてきたので、またメルクト村へ行く必要がありそうだ。


「肉に葉野菜、追加でスプーンを二本買って、それからそれから―――――」


 買い物リストを整理し、やるべきことを羅列していく。

 今度はルークさんがいないし、しっかり準備していかないとね。

 ゼーラお婆さんとなら喋れそうだけど、知らない人やギリスおじさんに似た人は難しいかもしれない。


 できるだけうろたえず、不審者に見られないよう頑張ろう。


お読みいただきありがとうございます。

明日からは夜9時ごろに投稿していこうと思います。

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