泣きたい俺は帽子をかぶる
皆さん大好きシェイクスピアが言ってた、
恋ってのは、それはもう、ため息と涙でできたものですよ。
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もういやだぁぁあ!もやもやする!
ゆきまじでなにやってんの…ヤってるの?嗚呼、考えても無駄か…
久しぶりにスマホゲームでもやろ。
ん?ログインボーナスでなんか貰った、なにそれ?箱?チョコ?あっ!?
「そうか、バレンタインかぁ!!!」
ゆきは友達とチョコ買いに行ったのか…安心したわ。
きっと今頃俺のために手作りチョコでも作ってるんだろうな、微笑ましい。
「兄貴うっせぇ!このクズノチビタマムシが!」
実在する昆虫の名前で呼ばないで、我が妹よ!?
そう、我が妹は反抗期である。
昔はお兄ちゃん大好きとか言ってたのにな…
お兄ちゃんのお嫁さんになるんじゃないの?
「はいはい、分かったよ、ちっちゃな頃から優等生の妹よ。」
「うっせぇわ!」
例の曲大好きなんだよね、我が妹は。
「もうすぐバレンタインだし、お兄ちゃんに渡したいものとかないの?」
「ないよ。」
隣の部屋にいる妹の声が思ってたより十倍ぐらい冷たかった…
壁越しでも分かる、我が妹はツンデレなんかじゃない、本当に俺のことが嫌いなんだ…
「ていうかバレンタインもう過ぎてるし、うちの兄貴バカなん?バカだな。」
「自問自答すんな…ん!?もう終わったん!?まじで!?」
「うん、まじ。」
携帯の日付を見ると俺は絶望した。
もう2月16日やん、なんでゲームのイベントまだ終わってないんだよ…
そういえば今年彼女からチョコ貰ってないかも…
手作りチョコどころか市販のやつすら貰ってない…
これって終わったんじゃね!?
「お兄ちゃんショックで家出するわ、探さないでね。」
「夕飯前に帰ってね、クズノチビ兄貴。」
それ虫の名前じゃなくてただの悪口やん…
「分かった。行ってくる。」
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さて、何しようかな。
一人カラオケでもするか、陰キャでごめんね。
最近一人の時間が増えたよね…ゆきいつも忙しいとか言うから、めっちゃ寂しい…
ひとりで街を徘徊するのってこんなにの辛いんだね…正直泣きたい…
誰か、彼女をここに召喚して~
「ゆっきー、この後どうする?」
ん?ゆっきー?まさか…
目の前に知らない男と手を組んでいるゆきがいた…
どうしよ、バッチリ目撃したわ…
さて、現実逃避のお時間ですね!
あの男はきっとゆきの弟だ、そうに違いない!
「…」
バレないようにパーカーの帽子を被った俺は彼らの後を追うことにした。
がちで寝取られそうで怖いんだけど…
NTRって地味に怖くね?(´-ω-`)