笑顔の訳を知りたい
第5話が出来ました!珍しく執筆がはかどっています!(照)今回は川上英隆の秘書、田崎富男の事情聴取です。田崎富男は62歳、川上英隆は63歳です。
おっと!
ここで読者からの感想が届きましたよ。
「三日月龍、私を好きと言ってよ。ねぇねぇ、好きと言ってよ、好きと言ってよ、私のことを好きだと言ってちょ!お願いだっぴ!✨好きと言ってくれなきゃ、今、ここで、全裸でカバディするわよ!カバディ、カバディ、カバディ、カバディ、カバディ、カバディ、カバディ、カバディ、カバディ、カバディ。ねぇねぇ、私をつかまえてごらん。三日月龍、私をつかまえてよ!私を離さないでよ~。うぇ~ん(涙)」(井上ドッカン子さん27歳)
情熱的な感想をありがとうございます!
ハードボイルド・コメディ―小説「三日月探偵事務所」の始まり~始まり~♪
※感想と井上ドッカン子さんは架空です。
田崎富男は愛想笑いを浮かべて何度も頭を下げながら回転椅子に座った。
「田崎富男さん、三日月龍です。よろしくお願いします」俺は田崎富男から視線を外さずに頭を下げた。
「どうも、どうも。何やら大変な事が起こったようですね」田崎富男は笑顔を浮かべて言った。
「と言いますと?」俺は様子を見ながら話す事にした。
「こんなにバタバタした状況は大変な事態以外には考えられないでしょう」田崎富男も俺の様子を伺いながら話しているようだ。
「青柳景子さん、川上英隆さんから何か聞いていますか?」
「いや、特に何も聞いてはいません。『ちょっと大事な話があるから私に着いてきて』と奥様に言われましてね、お昼ご飯を食べて直ぐに星座ホテルに来たわけなんです」
「それは御足労をお掛けしました。田崎さん、簡単な質問を1つ2つするだけですので、気楽にしてください」
「分かりました」
「田崎さん、最近、青柳グループや青柳一族で何か変わったことがありましたか?」
「いやぁ、特には。分からないですね。何も変わった事はないと思いますが」田崎富男はしきりに頭を左右に傾げながら言った。
「田崎さん、どんなことでも構いません。何かあれば思い出してください」
「そういえば、景子さんが娘のマチ子さんと何やら話し込んでいる姿を見ましたな」田崎富男はおでこに手を当てて言った。
「何時頃に2人を見ましたか? どんな話をしていましたか?」俺は目を細めた。
「何時だったかは覚えていませんが、たぶん、ここ1週間以内かな、朝の6時頃に話している姿を見ました。内容までは分かりませんな。2人とも深刻な顔をして話し込んでいましたよ」富男は少し思い出せた事に喜んでいるようだ。
「田崎さん、2人が話していた場所は?」俺は両手を組んで前屈みになって富男を見つめた。
「川上様を迎えに車で家に行きましたら、玄関先で景子さんとマチ子さんが話していました。2人とも私が車で来たことすら気づいていませんでしたね。私は運転席から手を振ったりしたんですが」田崎は恥ずかしそうに笑った。
「夢中になって話し込む……。深刻さを物語っているかも、ですね」俺は目を閉じて緊張している首を揉んだ。いくらか楽になるとベッドの上にある小さなテーブルを見つめた。
「ところで何でベッドの上にテーブルがあるんですか?」田崎は横を向いて言った。
「放物線を描いての着地なんですよ」と俺は言って小さく笑った。健気に見える小さなテーブルだけが俺の味方に思えてきた。
「田崎さん、他に思い出したことがあれば遠慮せずに言ってください」俺は変わらずに田崎の顔を真剣に見つめていた。
「あまり言いたくはないのですが、最近、川上英隆様と奥様の喧嘩に出くわす事が多々ありますかね」富男は面目ないというような情けない顔をした。
「喧嘩の原因は分かりますか?」
「他所様の夫婦の事は他人が口を出しちゃいけませんよ。喧嘩の原因も分からないですね。長いこと一緒に暮らしているとつもり積もった物が決壊することもありえますから。夫婦の問題は難しいです」
「確かにね」
「本当に夫婦関係は難しいですな。私の女房もね、新婚の頃は愛しくて可愛かったんですがね、今じゃ大仏パーマしか似合わない仏頂面のおばさんになっちゃってさ、悪夢を見ているみたいなんですよ。突然、不機嫌になるし、突如、荒れ狂うしでさ。揺れ幅が定まらなくてね、もう私も何だか訳が分からなくなってしまって。腫れ物に触る感覚を女房に持ち始めてますな。会話らしい会話も無くなったし、女房にビクビクしながら生きているのが辛い感じにもなっちゃってね」田崎富男は一気に話した。余程ストレスを抱えているのだろうね。
「大変ですね」
「三日月さんはご結婚は?」
「独身です」
「羨ましい。イケメンで独身なら人生楽しいでしょ?」
「それなりに楽しいですね」
「あらま、否定しないんですか? こりゃ一本取られちゃったかな。参った、参った。がははは」富男はずっと笑い顔のままなので、今の笑い声を聞いても心から笑っていないように見えてきた。
「まあね、今回の騒動の原因は川上様が奥様から紛失した物について激しく問い詰められているんじゃないですかね」
「歳を取ると物忘れが酷くなる方もいますからね」と俺は言って目を閉じた。
生まれつき笑い顔の表情を絶やさずに浮かべる人がいるが、確実に田崎富男はこのタイプだった。読み取るのが困難に見えるがそうではない。1落ち着きのない笑い顔、2あざけるような笑い顔、3後ろめたい笑い顔、4嘘の笑い顔というものがある。他にもパターンはあるのだが犯罪者の表情に共通する基本的な笑顔は、この4つだ。今の田崎は4の嘘の笑い顔に限りなく近いものがある。
微妙なタイミングのズレ、紙一重の時間が符合するのか、しないのかに掛かってくる綻びを見つけてしまった俺の気持ちは高ぶっていた。どんな小さなことも見逃してはならない。
「分かりました。また田崎さんにお話を伺う事があるかもしれませんが、今日の所はこれで結構です。ありがとうございました。田崎さん、青柳景子さんを呼んできてくれますか?」俺は直接、景子に事を聞こうと思った。
「分かりました」田崎富男は安堵して立ち上がり隣室に行こうと後ろへ振り向いた時だった。襟首の部分に綿のような物が付いていた。色は白で大きさは小指の先ほどの大きさだった。俺は綿の種類を確認しようと目をこらして見たのだが、ハッキリとは分からなかった。
ありがとうございました!ハードボイルド小説って面白いですよね。もっと色々と読んで勉強します!次回もお楽しみに!
読んでくれてどうもありがとうございました!三日月龍をヨロシクお願いします。「三日月探偵事務所」の続きが読みたい、面白そうだなぁ、と思いましたら、下の広告のあとに5つの星のマークを【★★★★★】に染めてくれたら大変嬉しいです。凄く励みになります。どうぞ宜しくお願い致します。