801号室
今日1日で3話も書きました!
三日月龍をよろしくお願いします!
俺は作戦を練ることにした。事情聴取をする場合、相手の証言が二転三転もするからだ。嘘の証言のために無駄な労力を果たして神経がすり減らされる事もあるのだ。念入りな準備と対策だけはしないと痛い思いをする。相手の裏の裏の裏の裏くらいまで読まないといけない。思考と推理力と観察力が物をいうのさ。
観察力を駆使して思ったのだが、先ほどの青柳景子の控え目な物腰や態度が妙に気に掛かる。ゆったりと落ち着いていた事に何か違和感があった。後で、もう一度、集中して青柳景子を観察してみよう。
よし、作戦の準備だな。先ずは話を聞く順番だ。
1川上英隆(景子の御主人)
2田崎富男(英隆の秘書)
3青柳マチ子(景子と英隆のイカれたバカ娘)
この順番が重要になってくるなぁ。
問題は最後の青柳マチ子だ。マチ子は厄介だぞ、と繰り返し心の中で呟く。イカれた女を相手にするのは仕事上だけにしたい。まず会話にはならないと思うね。甘やかされて育った温室育ちのお嬢さんだ。ワガママな糞ガキがそのまま大きくなったら手におえない。余程、慎重にしないとデタラメだけを吹き込む可能性が高いからね。気を付けないとな。
ネットで青柳マチ子の姿を見たが、奇抜すぎて目が痛いんだ。怪獣が現れた! と叫んで避難したくなる風貌をしていた。青柳マチ子に対しての蔑視でも差別でもない。事実、現実を伝えているだけだ。ヤバい奴はヤバいのだ。早く今日という1日が過ぎないかなぁと祈るばかりだよ。早く風呂に入って風呂上がりのメロンソーダを飲みたいね。夜が待ち遠しいよ。
昼過ぎ。午後1時。気温26℃。快晴。
俺は星座ホテルのラウンジで幼馴染みの野上武夫と話していた。武夫は星座ホテルの若きヒーロー、最年少で支配人に選ばれた男だ。すかしていて頭の切れる頭脳明晰な男だが、中学3年生までお母さんと一緒にお風呂に入っていた程のマザコンぶりの事実は隠せない。「おかあしゃ~ん、おかあしゃ~ん」と言いながら母親に甘えていた武夫の声も脳裏に残っている。
「武夫、よろしくな」
「部屋は8階の801号室だ。鍵は開いているよ」
「良い部屋の番号だな。感謝するよ。ありがとう」
「僕に連絡をくれたら、これからもその部屋を使っていいよ」
「本当かい! それは助かるね。感謝します」
「頑張れよ!」
武夫は俺の背中を叩いた。
「三日月さん」
声の主は青柳景子だった。景子の後ろには御主人の川上英隆と秘書の田崎富男がいた。
「お嬢さんは?」
「すみません、少し遅れています。叱っておきますからお許し下さいませ」と景子はゆったりとした口調で言った。
「分かりました。それでは部屋に参りましょうか」俺と他の3人はエレベーターに乗り込んだ。扉が閉まる瞬間、武夫は俺を見てピースをした。
エレベーター内は激臭だった。青柳景子は大丈夫だったのだが、無言の川上英隆と田崎富男の体から、ウンコまみれのドブのような臭いと、ウンコと腐ったチーズが混じったような臭いと、ウンコを踏んだような足の裏の臭いと、汗まみれの脇の下からウンコのような臭いと、ウンコが溢れた便所のような半端ない恐るべき加齢臭がした。ウンコに浸からないとこんな加齢臭にはならんよ。まったくよ。
俺の喉に痛みが来るし、目や鼻にも来ていた。老いるとは悲しい現実を突き付けられるね。来る前にシャワーを浴びるとかして欲しいよな。ここは星座ホテルだ。部屋に着いたら「シャワーを浴びてくれ」と川上英隆と田崎富男に言おうかな? いや、勘違いされたら困るよな。「ウンコ臭いな。加齢臭が酷いからシャワーを浴びてくださいよ」と紳士的に言った方が良いかな?
青柳景子はウンコ臭い加齢臭には慣れているんだな。顔色1つ変えていないもの。毎日、旦那と一緒にいたらウンコ臭い加齢臭に慣れるのかもな。しかし本気でウンコ臭いな。ウンコ臭くて鼻がもげそうだわ。
チン♪
エレベーターは8階に到着した。
俺は801号室の扉を開けて中に入った。部屋いっぱいにバラの香りが漂う。俺は何度も深呼吸をした。生き返ってきたよ。あはははは。武夫、ありがとうな。
「なかなか良い部屋じゃないですか。青柳ホテルよりは品格が落ちますがね」と初めて川上英隆が嫌みったらしく話した。
一気にウンコ臭い加齢臭が押し寄せてきたので俺は窓を開けることにした。
青柳景子は俺の様子を見て口元だけで笑っていた。
夏で良かった。秋か冬だったら確実に気絶していたね。
部屋は全部で3部屋あった。
今、俺がいる大部屋の様子はこんな感じだ。
真っ白な絨毯が敷いてあり、バニラ色の壁紙はレンガ模様を型どっていて、映画やドラマに出てくる天井のサーキュレーターが音もなく回り続けていて、テーブルの上にはバラの香りがする高価なルームフレグランスが置いてあった。リラックスできる空間が武夫の御好意によって用意されていた。武夫、ありがとうよ。
小さなテーブルを挟んで2脚の回転椅子があった。とても高価な代物だった。俺は青柳景子に向かって「今から事情聴取を始めます。順番に1人ずつ話をしたいので他の方は隣の部屋で待機して欲しい」と言った。
俺の話を聞いていた御主人の川上英隆と秘書の田崎富男は緊張した面持ちのまま突っ立っていた。窓を開けたままなので部屋の空気は新鮮さを保っていた。ウンコ臭い加齢臭はするが随分と和らいでいた。
「それでは最初に、川上英隆さん、お願いします」と俺は言って回転椅子に座った。川上英隆が向かい側の回転椅子に座ると黙って俺を見つめた。
青柳景子と田崎富男は隣室に行って扉を閉めた。
どうもありがとうございました!また明日も投稿出来たら良いなぁ✨頑張ります!読んでくれてどうもありがとうございました!三日月龍をヨロシクお願いします。「三日月探偵事務所」の続きが読みたい、面白そうだなぁ、と思いましたら、下の広告のあとに5つの星のマークを【★★★★★】に染めてくれたら大変嬉しいです。凄く励みになります。どうぞ宜しくお願い致します。