機密書類の話
早くも局地的に話題沸騰のハードボイルド・コメディー小説!「三日月探偵事務所」の第2話を投稿しました!
ここで読者様からの喜びの声をお届けします。「面白いでぇ~す!こんなの初めて。いやん。ウフッ」(佐々木うん子22歳)「三日月龍ってさ、意外とマジでやるじゃん!」(珍梅子17歳)「続きが見たいぞぉ!楽しみじゃんかよ!こんちくしょう!なめんなよ!」(山田りん子32歳)
それではお楽しみ下さい。
※架空の盛り上がりを書いてみました(笑)佐々木うん子さん、珍梅子さん、山田りん子さんは実際しません。
俺は念のために武器を確認した。銃の代わりの手裏剣だ。
探偵の武器は限られている。世界の探偵は銃の所持ができるし警察と一緒になって難解な捜査もできるが日本はまだ無理だ。戦前の探偵は銃の所持はできた様だが今は絶対に不可。
実は俺には手裏剣を生かした特殊能力があるんだ。手裏剣の名人と言っても過言じゃない。高校生の姪っ子に手裏剣の投げ方を教えていた事もあるくらい上手いぜ。ここだけの話、誰にも言わないでくれる? 意外とナイーブな性格で傷つきやすいからさ。誰にも言わないで欲しいんだ。俺さ、実はさぁ、
あっ! 待てよ! 確か依頼人の名前は青柳景子と言ったよな!
その名前に聞き覚えがある。俺は本棚に行き「あ」の項目から人物ファイル帳を取り出した。人物ファイルは探偵になるために密かに長年書いてきた物だ。
俺はファイルを机の上に置いて椅子に座るとページを開いた。
ビンゴだ。
『青柳景子。青柳グループの総裁、トップ中のトップ。青柳グループとは、財界、政治、芸能界、大企業、中小企業、零細企業、株式市場等々、至るところに手を広げている金持ちグループ一家のこと。悪どい事にも手を染めているという噂も聞く。関わると厄介だがそれはお互い様かな。俺は探偵だからな。フフフ。青柳景子の写真を見たことがあるが、美人だが俺のタイプじゃないね』と書いてあった。
青柳景子の年齢は非公開となっているが俺は探偵だからな知っているんだ。58歳だ。俺よりも30以上も年上だ。厄介な相手が初の依頼人というわけか。フフフ、面白い。
依頼人の中にも気にくわない奴がいても当然だ。俺だって人間だ、気にくわない奴を相手に仕方なく話をしたり何度も仕事をしたこともある。結局、そういう連中とは、どこまでいっても分かり合えなかった。波長も性格も合わない人間とは無理に関わる必要はないと悟るべきだ。自尊心を持つ為にもね。
青柳景子は金持ちだ。だが金持ちの人生の末路は大抵不幸せで不幸になる結果、結末になる確率が高いという統計もある。毎日、金だけを追い求めているからか、金しか頭にないからなのかは、よく分からないが、『金は災いの元』というのは真理でもあるんだ。
俺か? 俺は金に目が眩んで自分を見失うような愚かな真似だけはしたくないね。年中、金がないと嘆いてはいるが、人生を嘆いているわけじゃないからね。金持ちは人生の終わりになって嘆くんだ。ある金持ちの最後の言葉は確かこうだ。「私の周りには誰もいない。あれだけ『忠誠を尽くします』と言っていたのに……。私の人生は金に支配されていたと気付いた時には、もう遅いし時間がない。これは情けなくて悲しい人生の末路だ。世界の美しさを真実を知らずに、金に執着だけしかしなかった生き方には誰も憐れみすら抱かない」とね。
金に支配されたら終わりなのさ。
依頼人の用件によっては断る事も考慮しながら話を聞かなくてはならない。
全ては30分後に分かる。
30分後。
再び「チリリリリリリン、チリリリリリリン」と黒電話が鳴った。
「はい、三日月探偵事務所」やっぱりシビれるね。俺は探偵なんだ。ムフッ。嬉しい。
「三日月龍さん、私です。青柳景子です。今、パン治羅ビルの前に車を停めています。直ぐに伺います」
「分かりました。パン治羅ビルの左側に回ると駐車場になっていますので回って停めて下さい。パン治羅ビルの駐車係がいますので、係員にパン治羅ビルに訪れた理由を伝えてくれたら大丈夫です」
「分かりました。ありがとうございます」と青柳景子は言って電話を切った。
俺は黒のジャケット、白のYシャツ、ブルージーンズというカジュアルなスタイルだ。白いスニーカーを履いている。自由に動けるスタイルを維持したい。もちろん、ちゃんとした場所ではキメたスタイルをする。
ノックがした。俺はのぞき穴から外の様子を見た。青柳景子の両脇にはガタイの良いサングラスを掛けたボディーガードがいた。
俺は扉を開けた。
「青柳景子です」青柳景子は深々と頭を下げた。
「どうぞ、そちらのソファーに座って下さい」俺は優しく招き入れた。
「今、熱い緑茶を入れます」
「ありがとうございます」
俺はボディーガードに頷いてから台所へ行き、沸騰したお湯とお茶っ葉を急須に入れて混ぜ合わせると出来上がった熱い緑茶を湯呑みに注いだ。お盆に2つの湯呑みと羊羮を置いた。
「どうぞ」
「まぁ、美味しそうなお茶と羊羮」と青柳景子は言ったが口にはしなかった。代わりにボディーガードの2人が喉を鳴らした。
「それでは早速、お話を聞きましょうか」と俺は言って熱いお茶を口に運んだ。
「熱~!」俺は猫舌だ。急いで羊羮も口に運んだ。
「フフフ、猫舌なんですね。フフフ」と青柳景子は口元に木綿のハンカチを当てながら言った。
「こればっかりはね、仕方ないです」と俺は答えた。
「二人とも、もう良いわよ」と青柳景子は2人のボディーガードに言うと、ボディーガードは頭を下げて静かに扉から出ていった。外で待機するのだろう。
「三日月さん、私を御存知だと思います。青柳グループの青柳景子です。実はですね、最近、私の青柳グループ内で大事な機密書類が紛失してしまいましたの。三日月さん、その機密書類の存在は、ごく一部の人にしか知られていません。失くなったら大変な損害を招く恐れがある重要な機密書類なんです」青柳景子は額の汗を拭いながら言った。
「その機密書類を見つけて欲しいという事ですね?」
「そうなんです」
「機密書類の存在を知っているのは誰ですか?」
「私と主人と娘の3人だけです」
「他にはいませんか?」
「ありえないけれど、もしかしたら、主人の秘書も知っている『かも』ですが、まず絶対にありえない。念のために主人に聞いて確認しないと」
「確実性のある話だけをしてください。誤った話をした場合、予期せぬ結果を導く可能性があります。御主人の秘書の名前は?」
「田崎富男です」
「娘さんの名前と年齢は?」
「青柳マチ子、38歳、独身です」この娘の評判も聞いたことがあった。アッパラパーの頭がイカれた女だという話だ。率直に言うと変な女だという。
「娘さんのお仕事は?」
「花嫁修業中なので現在無職です」花嫁は無理だろう。絶対に結婚はできない。アッパラパーだし男性差別主義者のイカれた女だからな。男性を見るたびに怒鳴るという話だし、近付いただけでツバを吐くし胡椒を振り掛けるという奇怪な行動をするヤバすぎる女だと聞いた。
「なるほど」
「三日月さん、私の依頼を受け取ってくださるんですね。今、手元に50万円を用意しております。どうぞ、お納め下さいませ。その他に経費が掛かればお金は弾みますので」
「分かりました。料金は仕事の順序と大いに関連するので、後日改めて請求致します。一先ず、まず機密書類の存在を知る方々の事情聴取をしたいのです。会えますか?」
「大丈夫です。今日は土曜日なので主人も娘も自宅にいます」
「御主人の名前は?」
「川上英隆です。夫婦別姓です」
「了解。もう1つあります。機密書類の大きさと色は?」
「大きさはB4サイズで赤い封筒に入っています。書類の数は20枚前後になります」
「分かりました。昼過ぎに俺が青柳グループ宅に行けば良いのですね? いや、何処かのホテルで会いましょう。その方がリラックスして話せる。星座ホテルの部屋を用意するので、そこで会いましょう」
「分かりました。青柳ホテルでも良いんですのよ」
「助かりますが距離的に問題がある。パン治羅ビル、青柳景子さん宅の中間に位置する星座ホテルなら問題なしです」
「分かりました。ありがとうございます。では後程。私の携帯番号です」と青柳景子は俺に紙を渡して頭を下げると扉から出ていった。青柳景子は高級な着物を着ていた。
俺は直ぐに星座ホテルにいる友達に電話した。星座ホテルの支配人、野上武夫だ。
「はい野上です」
「よう、武夫。久しぶり」
「おう! 龍! 久しぶりだな。仕事は順調かい?」
「まあね」
「こんな朝早くに一体何の様だ?」
「星座ホテルの部屋を借りたい。依頼人と会う約束が取れたんだ」
「おお! 良かったな! やっとお客様が来たんだな! よし、ホテルの部屋は無料で貸すから来いよ」
「さすが幼馴染み。助かる。昼過ぎに行くよ」
「分かった」
俺は携帯を切って、青柳景子が食べなかった。羊羮を口に運んだ。
読んでくれてどうもありがとうございました!三日月龍をヨロシクお願いします。「三日月探偵事務所」の続きが読みたい、面白そうだなぁ、と思いましたら、下の広告のあとに5つの星のマークを【★★★★★】に染めてくれたら大変嬉しいです。凄く励みになります。どうぞ宜しくお願い致します。