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三日月探偵事務所

久しぶりです!執筆再開は新作という形にしました!宜しくお願いします。楽しんで頂ければ嬉しいです✨

 俺の名前は三日月龍(みかづききりゅう)。私立探偵だ。今年の真冬の3月に三日月探偵事務所を開業した。それから3ヶ月、1人も依頼人が来ていないというとんでもない事態に陥っているんだ。あはははは。幸いにも三日月探偵事務所のあるパン治羅(チラ)ビルのオーナーの1人である治羅山珍助(ちらやまちんすけ)さんの御厚意によってだ、お家賃はリーズナブルな金額になっている。


 他にも色々と治羅山珍助さんからの温かい援助を受けているわけなんだ。実にありがたいね。三日月探偵事務所はパン治羅ビルの5階の奥にある薄汚い扉にマーロウの言葉「タフでなければ生きられないよ。優しくなければ生きる資格がないんだよ」と画用紙に書いた言葉が目印の場所にある。この言葉に飽きたら「ようこそ、三日月探偵事務所へ。三日月龍をヨロシクな」という言葉を画用紙に書いて貼り直すつもりだ。

 

 探偵の仕事だけでは確実に生きてはいけないので夕方5時過ぎから土方の仕事もしているんだよ。お陰さんで毎日肉体疲労のために筋肉痛さ。あはははは。体を動かすというのは気分転換になるね。ストレスの解消にもなる。仕事仲間も陽気な奴等らばかりさ。歯のないおっさん、女装したままのおっさん、左腕がないのに器用に道具を使いこなすおっさん、ずっと独り言ばかり言っているおっさん、等々、バラエティーに飛んだ連中の集まりなんだ。まあ、一癖も二癖もあるというわけさ。


 土方の仕事はキツいし大変だけど国道72号線の道路と国道24号線の道路は俺が作った。どうだ凄いだろう? あはははは。

 

 俺は趣味でハードボイルド小説を執筆しているんだ。ネットの投稿サイトで見れるよ。ペンネームは秘密だ。拙い文章だからさ、見られるのが恥ずかしいし照れるからね。もっと文章力を上げて自信がついてきたら全てをさらけ出して披露したい。今はまだまだ修行中さ。でも、ジャック・ケルアックは「文章力を信じるな」と言っていたっけ。「言葉に近い文章を吐き出し捲れ」とも言っていたね。ありがとう、ジャック。俺はジャックの言葉を取る。ジャックの言葉だけを信じて執筆するよ。

 

 俺は54丁目に自宅があるが最近は事務所で寝泊まりしている。いつ依頼人からの連絡がくるか分からないからね。ちなみに電話は黒電話だ。凄いだろう。ビビるだろう。フィリップ・マーロウっぽいだろう。もはや黒電話はアンティークだ。どうしても探偵事務所を開業したら黒電話を使いたかったんだ。


 俺は事務所の掃除や模様替えを頻繁にしていた。依頼人の居心地良い部屋を心掛けることに努力を傾けていた。他には、連日、駅前に言って「三日月探偵事務所。依頼人の御相談を承ります。御用件の方はパン治羅ビル5階。電話番号✕✕✕ー✕✕✕ー✕✕✕✕、三日月龍まで。宜しくお願いします」と書いたチラシを200枚配り歩いたりしていた(俺は諦めずに3ヶ月間もチラシを配っている)。


 喫茶店や文房具屋さん、ペットショップやスナックや魚屋さんにまでチラシを置かして貰っているし、勝手に電柱にも貼るし、家やマンション、アパートのポストに入れたりもしていた。涙ぐましい努力はしないとね。探偵のプロフェッショナルなんだからさ。足で稼ぐことも大切だ。

 

 そんなこんなで6月の朝4時頃の事だ。

 

 俺は事務所のベッドで寝ていたら黒電話の音が鳴った。俺は寝惚けて目覚めて体を起こして「ようやくなのかい! ようやく依頼人からの連絡なのかい!」と大声で黒電話に向かって言ってから不覚にも二度寝をしてしまった。

 

 二度寝ってさ、最高に気持ちいいんだよね。なんでさ、二度寝って気持ちいいんだろうかね? 俺の場合、二度寝をしたくて二度寝になりたくて二度寝のために寝ている節もあるからね。黒電話よ、許してくれ。

 

 午前6時に目覚めた俺はパンツ一丁で黒電話の周りを行ったり来たりした。夢かもしれないなと思い始めた矢先に「チリリリリリン、チリリリリリン」と懐かしの音が鳴り響いた。俺は急いで受話器を取った。

 

 「はい、こちら三日月探偵事務所」ワオッ。カッァァァ、嬉すぃ~。燃えてきたよ。体が熱いよ。言いたかったセリフに体が震えてきたぜ。本当に嬉しいよ。 涙がちょちょ切れそうだ。

 

「もしもし?」と若い男性の声が聞こえた。初の依頼人は男性か。WOMAN、女の子、美人だったら良かったのにと、正直、思ったけど依頼人に悪いから直ぐに気持ちを打ち消したけど、やっぱり美人の依頼人の方が良いのになぁという気持ちは否定できなくて捨てきれなかったけども、探偵のプロとして気持ちに蓋をして冷静沈着に依頼人に応対をした。

 

「はい、こちら三日月探偵事務所です」

 

「電話を代わります」と男性は言った。

 

「すみません。もしもし? 三日月探偵事務所さんですか?」代わった声は、若い女性だった。


「はい、こちら三日月探偵事務所」俺は最初のトキメキは薄れたが3回も同じ答え方をした。美人の声は分かる。言葉に艶と品があるからね。紛れもなくこの声は美人に入る。

 

「三日月龍さん、ですよね? わたくし青柳景子と言います。御相談がありまして、電話では言えないので今からそちらに伺っても宜しいでしょうか?」

 

「分かりました。御待ちしております。場所は分かりますか?」

 

「パン治羅ビルの5階ですよね? ずいぶん変わった名前のビルですね」

 

「昔は、最初、パイパイビルという名前のビルだったんですが、住民から子供たちが「パイパイビルってオッパイみたいな名前だぁ~」と一日中騒ぐという苦情が届きまして、パイパイスキスギビルに変更して再び住民から苦情が届き、3度目の正直でパン治羅ビルになったという滑稽でチャーミングな歴史あるビルなんですよ」と俺は治羅山珍助(ちらやまちんすけ)さんのお話をそのまま伝えた。

 

「フフフ。戦って勝ち取った名前なんですね」

 

「あまり深く考えなくても良いですよ」

 

「そうですわね。それでは今から30分後に車で伺います。駐車場はありますか?」

 

「あります」

 

「それでは、後程。失礼します」

 

 俺は黒電話の受話器を置いて部屋のカーテンを開けた。

 

 日の出が眩しい。俺は急いで服を着て緑茶を飲むために台所へ行きお湯を沸かした。お湯が沸くまでの間、部屋の換気をするために窓を開けて街並みを眺めた。俺はソファーに座ると黙って時計を見つめた。

読んでくれてどうもありがとうございました!三日月龍をヨロシクお願いします。「三日月探偵事務所」の続きが読みたい、面白そうだなぁ、と思いましたら、下の広告のあとに5つの星のマークを【★★★★★】に染めてくれたら大変嬉しいです。凄く励みになります。どうぞ宜しくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 読みました! パン治羅ビルの変遷が分かって良かったです。
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