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Foolish Wars シリーズ

Foolish Wars 『ドローン・ウォーズ』

作者: 書い人(かいと)

 無人機(ドローン)同士の戦いではキリがない。

 どこかで人間を叩く必要がある。

 大抵、今の人類というものは支配圏の中心部に、堅い城塞のような都市を築いて身を守っている。

 ちょうどその城塞都市国家では、南方の支配圏が落ち、全方位が敵の陣地になってしまった。

 その国は当然、各敵国の総攻撃に遭うこととなった。

 各敵国の動きは至極当然、暗黙の了解で今だけは中心部の国以外と戦うことはせず(支配圏の外では、当然その限りではないが)、ドローン部隊の総攻撃を行うこととなった。

 起死回生の一手として、城塞都市国家は特殊な実験兵器を試験から本格採用した。

 各国のドローンは人、命を載せないため、乱暴に扱われていた。

 ドローンが動けなくなったとき、大抵は自爆装置が作動するが、あまりにも多く粗製乱造気味に作られたドローンの中には爆発しない不良品も混ざっていた。

 都市国家は自爆しなかった敵ドローンの各タイプ、ほとんどを回収できた。回収には、都市国家の保有するドローンが使われた。

 即座に都市国家の調査班が動き、自律プログラムを完璧と言っていいほどに調べ上げた。

 『都市国家の陥落は時間の問題だな』と、周辺の各国全てがそう思っていた。

 無用な争いを避けるための線引き、支配圏の分割統治案が出る中でその都市国家は新兵器を投入した。

 新兵器の名は『ゾンビーズ・バイト』という。 

 その都市国家は飛行ドローンなどから、多数のミサイルによる攻撃を各所で行った。

 まずは、数百発ほど。

 非常に小型の、対人ロケット弾程度の大きさのミサイル群は、敵ドローンに着弾する直前で爆発。ミサイル弾頭からさらに、鋭利な飛翔体を火薬の力で打ち出して分離・分解、落着した。

 この飛翔体こそ、『ゾンビーズ・バイト』の本体だった。

 飛翔体――『ゾンビーズ・バイト』が敵ドローン部隊に多数着弾する。

 敵国のドローン部隊は完全自律駆動型だが、システムに若干の不備があった。

 一定数のドローンからなる、ドローン部隊を率いる指揮官(コマンダー)ドローンの存在である。

 これは配下に指定したドローンユニットを調整、指揮するための優先プログラムを載せたドローンであり、各ドローンはコマンダー・雑兵を問わずデータがリンクされている。

 ゾンビの牙が侵食する。

 『ゾンビーズ・バイト』はゾンビに噛まれた人間のように、敵ドローンの中枢神経のような人工知能を(おか)し、完全にシステムを乗っ取り、掌握(しょうあく)した。

 データリンク開始。

 走査(そうさ)完了。

 敵コマンダードローンの位置を確定。

 その都市国家はプログラムの不正アクセスを認識させないようなプログラムすら組んでいた。

 その『噛みつき』がどれだけ恐ろしいものかを気づかせることなく、敵のドローンをまるごと奪う気なのだ。

 さらに一〇〇〇発の小型ミサイル『ゾンビーズ・バイト』が航空機や地対地・地対空ミサイルシステムから放たれる。

 全て、コマンダードローンのみを狙った攻撃だ。

 『感染』したコマンダーと配下の部隊がそれぞれ動きを反転させ、今度は敵国へと前進・進軍を開始したのだ。

 この時点では、都市国家の完全勝利に思えた。

 映画のゾンビと違うところは、ゾンビになった後でもまだ元に戻せるというところだった。

 敵国の優秀な電子即応部隊が『ゾンビーズ・バイト』の解析を進め、即座にウィルスの除去プログラムを作ったのだ。

 多少は死人が出たが、各国の城壁でドローン部隊はまた反転した。遠隔操作用の電波を浴びて、すっかり元通り、元気が良くなったドローンたちだった。

 都市国家は『ゾンビーズ・バイト』の開発主任と担当官らに拳銃の銃口を突き付けて、不眠不休で新しい乗っ取りプログラムを開発した。

 アップデートがなされ、新しく用意された小型ミサイルがまた数百発発射された。

 敵国も半分は愚かではなく、対抗策として電子部隊を戦車に載せ、後方の移動式遠隔操作車両でデータをいじくれるようにしていた。

 都市国家も半分は賢く、いつでも乗っ取りが解除されたドローン部隊を再支配できるように、個人携帯用の『ゾンビーズ・バイト』ミサイルランチャーを担いだ歩兵や、最終的に破壊できるようにドローン以外の部隊も増員されていた。

 今度のプログラムはドローン同士が確実に同士討ち(フレンドリー・ファイア)をするように仕組んでいた。

 ドローン兵力が激減し、敵各国が人の兵力を動員した。

 陸空で大規模戦が繰り広げられ、消耗戦(しょうもうせん)となった。

 都市国家の『ゾンビーズ・バイト』の開発班は過労により倒れたことにより反逆罪で死罪を言い渡され、敵各国の電子即応部隊は戦火に散った。

 残り数千発が用意されていた『ゾンビーズ・バイト』は全て小型核弾頭に交換・転用され、周囲一帯を味方部隊ごと吹き飛ばし、戦線は全て吹き飛んだことをもって全て崩壊した。

 これ以上続けるのはリスクが大きすぎる、と敵各国に判断され、都市国家は延命することとなった。

 なお、戦後処理の条約では『ゾンビーズ・バイト』に類する兵器や、超小型ミサイルへの核兵器の転用は絶対に禁止する旨が、その戦争に加わった全ての国で締結されたという。

 しかし条約違反がなされることを恐れ、各国では徴兵令が下されて、AIによらない通常部隊が別の戦線に派兵されて、死人を増やしたという。

 なぜ、頑なにドローンを使わないのか。

 この戦争に加わらなかった外周の敵国の者たちは首を傾げた。

 無論。

 その外周の敵国とやらは、条約の外側だった。


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