未来が変わる?
俺は実は赤ん坊だった・・・?
いやいやいやいやおかしいだろ!?これは夢だ!いやなれ。夢になれ。いくら母さんにそっくりとはいえこの人が暖かいのは気のせいだ。
母さんみたいにくるくるしたくせっ毛なのもそれが鼻に当たってくしゃみしそうなのも全部夢に決まってる!腕に火傷の痕もないしなにより母さんは俺が12の時に死んでる!!
「大丈夫。こわくな〜いこわくな〜い、ママはここにいますよ〜〜」
夢だ!これは夢・・夢・・
「こわくな〜いこわくな〜い」
夢・・・・
・・だめだ。
この温もりは夢じゃない。心にじんわりと広がるこの暖かさは夢じゃ感じられない。毛先がくせっ毛でくるくるしてるのも首元に大きなほくろがあるのも母さんの特徴だ。それに懐かしいこの香り・・。火傷の痕がないこと以外は完全に母さんだ。
でも、ということはつまり・・これは・・現実
「おーいママー」
のっそりと巨体が近づいてくる。あれは・・・父親だ。頭部と眼鏡以外ほぼ変わってない。
「ママありがとー。後は、僕が引き受けるよー」
「はーいパパ。ゆうちゃんをお願いねー」
温もりが離れちょっとベタついた暑さになる。
あれ、こっちの方が柔らかいぞ・・?
「ゆうちゃ〜んパパだぞ〜〜べぇ〜〜ろべろべろぶぁ〜!!」
「キャッキャキャッキャ」
ぶぁ〜!!!」
「キャッキャキャ」
「ぶぁ〜!!!!」
「キャー」
つばがすごい。
「ママ〜、トイレ行くからゆうちゃんちょっと置いとくね」
「は〜い分かったわ」
長かった………
父親から解放されたのはそれから20分ほどたってからだった。
扇風機の規則的な風が心地良い。
そういえばあの母さんにはなぜ火傷の痕がないのだろう。そこだけが気になる。
もしかしてこれから火傷してできるのか?
「は〜〜いゆうちゃ〜〜ん」
料理中なのにこっちに来た。
右腕に火傷の痕は…やっぱないよな。
「もうそろそろごはんでちゅからね〜〜。もうちょっとまっててくだちゃいね〜〜」
顔をむにむにされる。
…これ、母さんだからされて嬉しいやつだな。
母さんすごい笑ってるし。こっちもなんだか癒されるな…
ふと、遠くから大きな音が聞こえる。マグマのような何かが煮えたぎった鈍い破裂音。これは…
「きゃっ!!鍋!火!火!止めないと!!」
慌ただしく母さんが鍋の元へとんでいく。
鍋、鈍い破裂音、母さん……火傷!?
くそっ距離が遠いからよく見えない。
もしやこれが原因で母さんは火傷するのか!?助けないと!!
「きゃあっ!」
母さん!!?どうしたの母さん!!!!
母さん!!!!!!!!
「あうわあああーーー!!」
そうだった。俺、赤ん坊だった………
「大丈夫かママー!!」
あれは父さん!?
「助けるよママーーー!!!!」
父さん!!!!!!!!
「あうわああーーー!!!」
数時間後
「ゆうちゃん心配かけてごめんね、ママもう大丈夫だよ!」
そう言う母さんの腕には火傷の痕が…なかった。
母さんの悲鳴は吹きこぼれた熱湯への悲鳴だったらしく火傷などはしてないらしい。
だが父さんは足を火傷をした。火を止めようとした際に吹きこぼれた熱湯が足にかかってしまったらしい。
父さんは足の治療に専念してる。在宅の仕事だから支障はでないらしくてまだよかった。
でも…俺の記憶とかなり違う。父さんは火傷したことないって昔言ってたし足にもそんな痕はなかった。
未来が変わったってことか?なんで??
「…きいてるゆうちゃん?ママね、すごいうれしかったんだよ〜」
嬉しい?……何が?
「ゆうちゃんやっとしゃべってくれたんだもん。今日のゆうちゃんなかなかしゃべってくれないからママどうしたのかなって心配しちゃった。」
そうだ。今日俺は考えたりしててずっと喋ってなかった。今までとの違いに戸惑いを感じてたのか。
「ゆうちゃん今日は楽しかった?」
「あうあー!!」
「そっか!よかった〜!じゃあ今日はもうねむねむしましょうね〜〜おやすみ〜〜」
今日のことで母さんは疲れていたのだろう、あっという間に眠りについた。
それにしても母さんがそんなこと思ってたなんてな。分からなかった…
待てよ?俺が喋らないことによる戸惑いが母さんが火傷する未来を変えたってことか?
つまりここは…ただの過去ではない?
そういえば白いあいつ、生き直しがどうだって言ってたよな。
ここはつまり…2度目の人生ってことか?
断定はできないがそれに近いのかもしれない。
とりあえず俺は赤ん坊らしく振る舞わねば。巡りに巡って今日以上に悪い事が起きるかもしれない。
俺はそう心に強く誓った。