プロローグ
スキル……この世界では最も重要視されている。 スキルの弱い者は失格スキル……もしくは無能と呼ばれている。
魔力、魔力強度も重要視はされているものの、補えるスキルが存在するので基本は『なかなか魔力も、強度も高いお子さんですよ。 将来に期待だ』 と言われるだけ。 だがそれも前提が良い場合だけだ。
その最も重要視されているスキルは遺伝が強く関係していると言われており、遥か昔魔王討伐と言う偉業を成し遂げた勇者パーティーの一族は、今は王族となっておりなかなか良いスキルを全員が持っているとも言える。
そして王族が出来ると同時に、スキルの強いものが貴族認定されていった。 それも今では三大貴族『オルコット』『エドモンド』『エンフィールド』が全貴族を統一しており、王族に最も近い地位にいると言われている立場だ。
三大貴族の最大の使命は『北領・オルコット』『東領・エドモンド』『南領・エンフィールド』 とその地域全体を統一することだ。 けれどもどこの直轄領でも無い西領は3大貴族の中で、どこの家が直轄領にするか揉めている状態であったがオルコット家に生まれた子供によって拮抗がいとも容易く崩れてしまう。
生まれながらにして最強。 秀才を持った子が生まれたからだ……
それは昔の勇者にも匹敵すると言われているスキルでもあり、魔力、魔力強度も常人の数倍はある。 まさに勇者の生まれ変わりとも言っても良いくらいの才能だった。
それを知った王が『ブラム・オルコット。貴殿に西領を任せる事にする』と全領主のいる前で宣言した。 その事により今まで、400年間くらい保っていた拮抗が崩れるきっかけとなった……
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それから五年後……
オルコット家には新たに命が誕生した。 勿論その生まれた子には誰もが期待している。 いや……期待していた。 と言った方が正しいだろう。
生まれた子供には『アル・オルコット』 と名付けられた。 まだスキルを確認はしていないが、強いスキルを持っていると確信していたのだから……
だがその確信は思わぬ形で裏切られる事になる……
ベッドで横になっているカミラの部屋にドアのノックが三回鳴り響く。
「カミラ様。 司教をお連れしました。 至急お話があるとの事でお連れしました が、よろしかったでしょうか?」
「えぇ。 構いませんよ。 二人とも部屋に入りなさい」
「子供を預けているメイド達はどうしますか?」
「ドアの前で待機させておいて。 この話を聞くのは2人で十分です」
「畏まりました。 では失礼致します」
部屋に入る際に執事と司教は深いお辞儀を行い司教は『単刀直入に行かせていただきます。』 そう言いながら深く、深く頭を下げる。
「カミラ様。 わたくし達ではこの文字を解読することが不可能の様でして申し訳ございません……ましてや、こんな事例は今まで一つもございませんでして……」
司教にカードらしき物を手渡しで渡される。 それを執事が受け取りベットで寝ているカミラの手元まで持ってきてくれる。 そのカードにカミラは自分が間違っていないか確認するように何度も、何度も見直していた。
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【名前】 アル・オルコット
【魔力】 350
【強度】 300
【スキル】 Promocii kreskon・Magia aŭtomata reakiro・Konscio・Magia potenca manipulado・Akcelita pensado・Rompita limo・Kompleta atributo-toleremo
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「何よ……これ」
魔力、魔力強度は生まれながらにして才は持っていると言えるだろう。 だがカミラが目を疑ったのはそこではない。 『スキル』の欄に書いてある文字だ。
今までこのような文字が発見されたこともないし、この世界のものとも言えない文字……
「このスキルの欄に書いてある文字を解読できる文学者は居ないの?!」
今までの落ち着き方が嘘だったかの様に声を荒げ司教に問いただすが、司教は布らしき物を手に持ちそれを額に当てるながら申し訳なさそうに答える。
「申し訳ございません……この文字を解読できるのは、恐らく誰も居ません……」
「そ、そんな訳ないでしょ!!」
カミラは自分が無理を行っているのは重々承知だろうが、家柄の関係上『無能』を出すわけには行かないのだ。 もしも、この状態でアルを表舞台に上げようものならこの五年間で三大貴族の中に付いて居た差が埋まってしまうことを知っているから。
いや、それは建前だろう。 カミラは自分が無能を産んだなんて他の貴族には知られたくはなかった。 それだけは絶対に世間に公開できる訳が無い…… 出来る筈がなかったのだ。
予想外の出来事で冷静さを欠いていたカミラだったが、流石は貴族だけあって冷静さをすぐに取り戻していた。
「貴方達は事故処理をしなさい。その子は"流産で亡くなった事にして、隠し子として少し育てます" 勿論ですが、このことを一切口外することを禁じます」
「はい。 承知致しました」
執事は深いお辞儀をして、カミラにだけ聞こえるような声で今後の事を聞いた。
その言葉に不敵な笑みを浮かべたカミラに執事は何事も無かったように茜色に染まりきった部屋のカーテンを閉めようと窓に向かって歩く。
「あぁ、部屋のカーテンは閉めなくていいわ。 今は少し夕焼けを眺めたい気分でね……」
カミラは夕焼けに照らされながら窓の外を眺めていた。 その際に頬に流れていた涙に執事は気が付いていたが、気が付いていないような素ぶりで司教と共に部屋を後にしようとする。
二人はドアの前まで行くとお辞儀を行い『失礼いたしました』 と言いながら部屋を出た。
執事はカミラの不敵な笑みで意味がわかったのかドアの前で待機していたメイド達に子供を密かにある場所に連れて行く様に命じる。
そう。まるで自分にはやることが残っているかのように……だ。
ここまでの観覧有難うございます。 次の投稿予定の目処はまだ立っていません……申し訳ございません。