道化の唄
ちょっと淡い恋愛物です。。。
道化は人を喜ばす
道化は常に笑顔のメイクを塗りたくっている
道化は笑顔の達人だ
それでも心の奥では笑顔じゃない
道化は人を笑わせるために今日も町でパフォーマンスをしている
そんな道化に一本の汚れのない真っ白い花を渡す子どもがいた
休憩中の道化の横に座っている小さな小さな女の子
彼女は一体どうして花を?
道化の心の中には少女への不信が渦を巻いている
それでも道化はいつでも笑顔でいなきゃいけない
嬉しそうにしているフリをしながらその花をもらう
日が暮れだすと少女は小さく手を振りながら家に帰る
少女は次の日もその次の日もまたその次の日も、やめることなく毎日花を持って来る
少女はいつしか女性へと成長した
そして道化はいつしか信頼を彼女に寄せていた
そんな毎日に幸せを覚えつつあった道化に悲劇が起こる
彼女が突然こなくなってしまったのだ
始めは風邪を引いたのだと思っていた道化
しかし何日も何週間も待ち続けても彼女はやってこない
よぎる不安
そして道化は彼女の家に行こうと考えた
だけど道化は何一つ彼女のことを知らなかった
どこに住んでいるかなどはもちろん、名前さえも知らなかった
道化は初めて道化の仮面をハズして泣いた
そして気付く
道化はただ横に座っている彼女に恋をしていたのだと
自分はまだ心がある人間であったのだと
道化の涙で笑顔のメイクは落ちていってしまう
ポタリ ポタリ
道化の上に影が重なる
道化が顔を上げると真っ白な汚れのないハンカチと
大好きな彼女の心配そうな顔が
道化は未だに笑顔のメイクを塗りたくっている
それでも以前と違うのは彼の心の中に誰もを笑わせ、町中を笑顔一杯に咲かせたいという思いがあるということ
それと大好きな彼女がいつまでもそばにいてくれている、ということ
道化の気持ちになって読んでいただけたら幸いです。。。