エロティックドクターK
コイツがホントに主人公?という感じです。
この宇宙には、地球から飛び出し、他の惑星でくらすものたちがいる。
殆どの人間が、平和に暮らしている。
しかし、その平和を壊そううとする人間たちもいる。
宇宙海賊や、宇宙テロリスト。
数えきれないほどに、そんな馬鹿どもがいるのだ。
そんな馬鹿な奴らを捕まえるのが、「宇宙ポリス」(スペースポリス)である。
そして、主人公?が所属するのは、宇宙ポリス第9課。
9課というのは、最近できたばかりの、課である。
課というのは、捜査1課、捜査2課、それから、捜査3課ともいうべき、組織犯罪対策課にわかれる。
あとは、鑑定や情報捜査などの特別なものがある。
なのに、ずっと飛んで9課というのは、誰に聞いてもおかしいと思うであろう。
しかし、そうでもない。
この9課は、ある特定の人物が絡んでいると思われる案件のためにできたのである。
その案件というのは、通称ドクターkを逮捕することにある。
このドクターkは、クレイジーで有名だ。
こんなやつ、放っておけるはずがない。
今も、その案件がらみで、主人公ハリー・ジョーンズは追跡中である。
「1時の方角に、艦発見」
「ソナー照合」
「はい。一致しました。通報にあった、宇宙海賊の戦艦です」
「モニターの範囲に入りました。モニターに出します」
「たのむ」
静まり返り、みんなが息をのむ。
ブ~ン
モニターに映し出され、叫び声が、主に女性からあがる。
「きゃ~~っ!!」
「な、なんなのよあれ!!」
「なんであんなのついてんですか、隊長!!説明を要求します!!」
やはりこうなった。
今日は、新人の女の子たちもいる。
こればかりは、慣れてもらうしかない。
「エミ、説明してやってくれ」
「りょうかいです、隊長」
新人の子たちに、どういうことかというのを隊員の一人である、エミ・ブライアン2等巡査が説明している。
新人の女の子たちが、何に驚いていたかというと、海賊の戦艦が人型をしているからである。
だが、人型をしているからと言って、普通は驚かない。
宇宙歴120年の今では、そんなものは珍しくない。
宇宙歴に入ってすぐに、機動兵士として活躍している。
その延長線上に、戦艦もある。
では、何に驚いた?
それは、主砲の位置に驚いたのだ。
主砲は丁度、股間に当たる位置にある。
誰が見ても、ち〇こである。
ドクターkの罪はというと、犯罪組織に武器等(主に戦艦や機動兵士)売った、違法兵器売買。
そして、宇宙公共わいせつ罪だ。
宇宙公共わいせつ罪というのは、先のような戦艦を作る事。
それに乗る事である。
この罪は、どくたーKのために、新しく作られた罪状である。
しかし犯罪者がなぜドクターKの造った、一つ罪が多くつくものをつかったりしているかというと、それは、性能が凄いということに尽きる。
たとえ、ち〇こがついていようと。
かっこ悪いからと、普通のセンスの海賊が一度、それを去勢しようとしたことがある。
だが、去勢は失敗大爆発に終わった。
どうやら、ち〇こは切除すると、艦が爆発する仕組みになっているらしい。
ああ、丁度新人隊員への説明も終わったようだ。
「変態ですねそいつ」
「ほんとほんと」
「あの戦艦、沈めてやる」
新人隊員にも、火が付いたようだ。
しかし、ほんとの目的は、あの戦艦を沈める事でも、拿捕することでもない。
犯罪者を追い詰めると、あの変態がやってくるのだ。
「包囲網完成したようです。隊長」
「よし。宇宙ポリス9課特別機動戦艦エメラルダス発進」
そして、宇宙ポリスは海賊船を、やっとの思いで四方八方から12隻で追い詰めた。
「ようやく追い詰めましたね」
「ああ。半日以上かかるとは、さすがに思わなかったな。暫くはこのままだろう。みんな、交代で休憩を取ってくれ。艦橋には、二人残ればいいだろう」
「は~い。つっかれた~」
「それでは休憩」
「ほ~い」
いま、旗艦が交渉をしている頃だ。
だが、交渉はうまくはいかないだろう。
海賊は余裕で断る。
旗艦の隊長も、それは承知の上だ。
多分、この宙域で、あの変態はこれを笑って、見物していることだろう。
「海賊トラジよ。降伏しろ。降伏すれば、罪を軽くしてやるぞ」
「は~ん、そうなのか?ありがたくて、涙が出てくるぜ。だが、断る」
「なぜだ!」
「なぜっだって。下手な演技はやめろ。わかってるくせに」
艦橋には、エミ・ブライアンが残っている。
こいつは、俺の幼馴染である。
髪型は、ショートカットで、赤毛。
体つきは、中肉中背の、胸は残念だが・・・
マイペースで、優しいところもある、幼馴染である。
「ねえ、ハリー」
「なんだ?」
「今あっち、何やってると思う」
「どうせ、いつもの問答だろ」
「あっ、やっぱり」
エミは、他の隊員がいないところでは、俺のことをハリーと呼ぶ。
俺としては、隊員がいようがいまいが、どちらでもいいのだが。
エミは、その辺はしっかり線を引きたいようだ。
「今回の作戦って、どんなんだっけ?」
「作戦の内容を書いたものを、送ったはずだが?」
「ごめん、めんどくさいから、読んでない」
ハリーは、エミを睨みつけるが、エミはそんなの気にしない。
以前は、怒鳴りつけたり、説教したりとしていたが、何をやっても大して効果がなかった。
今は、ハリーも諦めている。
昔から、いい加減な奴だったなあ。
「しかたがない。今回の作戦はな」
今回の作戦は、とにかくこいつを、9課全艦船で追い詰める。
追い詰めた後は、旗艦の隊長が見せかけの交渉に入る。
そして、いつものように、体調を整えるための休憩を取る。
当然、緊急発進の態勢は整えておく。
最低限の休憩が終われば、そこからが本番だ。
今回は今までにない、大規模作戦になる。
今、包囲しているのは12隻。
1隻、最大4体の機動兵士が搭載できる。
その最大4体の機動兵士が、12隻から飛び立つ。
48体の機動兵士。
それで、あの変態が出てきたところを、捕まえる。
ここからがいつもと違う。
いつもなら警告してからだが、今回は現れたらすぐに、機動兵士は発進。
艦の方からも、攻撃することになっている。
そして、6時間ほど経った頃、動きがあった。
旗艦から、いつでも動けるようにしておけと、命令が来たのである。
艦には、丁度6人いたので、2時間交代で4時間ほど、ハリーたちは休憩が取れた。
「ふあ~~っ。もう、見せかけの交渉は終わりか?」
「はい、隊長。いつでも出られるように、準備をしておけと、旗艦から連絡がありました」
「そっか。もっと寝てたかったな~っ」
「まったくだ。こんな調子で働かされたら、いつか死ぬかもな。ブラック企業か、つ~の」
この男は、宇宙ポリス学校時代の先輩、ダン・スパーク2等巡査。
体つきはがっちりした。アメリカンフットボールでもやってるような男だ。
顔はえらが張って、四角い感じ。
目を隠して口を真一文字にすれば、相当怖いだろう。
しかし、目を出すとそうでもない感じに変わる。
目がたれ目気味で、小さいのだ。
優しい感じがするので、それがいいとほとんどの人が言う。
でも、本人はその目が嫌いらしい。
「隊長も先輩も、真面目にやってください」
「は、はい。ごめんなさい」
コイツは新人の、レイ・イザナミ。
先輩と何かあったのか、いつにもまして機嫌が悪い気がする。
髪は長く腰のあたりまである。
色は、目と同じ黒。
目は少し、吊り上がり気味で、美人だ。
東洋系の顔をしている。
体つきは、胸が大きくスタイルがいい。
でも、聞いた話では、そうとう盛っているらしい。
「レイちゃん、先輩となにかあった。もしかして、いやらしいことしてたとか?」
「どう意味ですサーシャ。私がこんなのと、付き合ってるとでも」
「冗談冗談。そんな怖い顔しないでよ」
これは、サーシャ・エステル。
髪は後ろで一本に結んで、垂らしている。
垂らしているのは三つ編みなのか?よくわからん。
色は茶色。
顔はまあるい感じで、かわいい。
中肉中背の、明るくてかわいい女の子だ。
「たいちょう~」
「ど、どうした」
「いつになったら、発進ですか。なんだか、うずうずしてしまって」
「もう少しだ。ここにいるのが嫌なら、コクピットで準備してろ」
「そうします」
走って行ってしまった。
話しかけてきたこいつは、エメリー・ターラント。
コイツは、正真正銘の、スタイル抜群というやつだ。
前に、胸が邪魔で、操縦しにくい。エミ先輩が羨ましいとか言って、エミに怒られていた。
髪はポニーテル、金髪だ。
そして、こいつは憎めない感じがする、やはり美人だ。
少しだけ性格に、難ありかもしれないが。
「隊長。あとどれくらいで、発進かな」
「1時間くらいかな。緊急のことが起こらない限りは」
「そう。もうひと眠りできるかな」
「おい。寝るくらいなら、お前もコクピットにいって、準備してろ」
エミは、ぶすっと頬を膨らませる。
機動兵士は、後は発進するだけだから、準備と言ってもなんにもない。
さっき、走っていたエメリーは、なにをしているんだろうか。
30分が立ち、それぞれが待機していると、オープン回線でおかしな声が聞こえてきた。
「おまたせ~アフターケアばっちりの、ドクタークララ参上よ~」
ドクターKの声である。
ハリー達、9課の面々に緊張が走った。
「発進用意」
「いつでもいけます」
「ああ。機動兵士も、大丈夫だな。いつでもいけるな?」
「問題なし」
「無問題」」
「こっちも大丈夫」
「こいこい~、ぶち壊してやる~」
ハリーは、最後の答えに若干、不安が残った。
「おい、エメリー。落ち着けよ」
「だいじょぶっすよ。十分落ち着いてるっス」
ほんとかなと疑問に思うが、大丈夫だと自分に言い聞かせる。
それでも一応、ダンにエメリーをよろしくと伝えて置くことにした。
じっと、ハリーは外を見つめていると。
いきなり反応があった。
どこに現れたのかと、ハリーは見渡すが見えない。
「どこに現れた!」
「後方4時の方向。旗艦と、賊の艦のちょうど真ん中です」
「なんだと!!まあいい。機動兵士発進!」
ドクターkの戦艦は、あり得ないようなところに、ワープしてきたのだった。
「ダン・スパーク発進する」
「エミ・ブライアン行ってきます」
流石にこの二人は、落ち着いている。
エミの方は、落ち着き過ぎの感はあるが。
「サーシャ、いきま~す!」
「エメリーいくっす。待ってろこのやろ~!」
やっぱり、新人は心配だ。
特にエメリー。
「大丈夫でしょうか、エメリーは」
「一応先輩には頼んである。後は、信じるしかないな。それより、オートで援護射撃だああ!」
「もう、やってます」
「あっそう。流石だな、レイは」
「ありがとうございます」
「それにしても、今回もふざけた登場だな。変態ドクターめ」
「いつもあんな感じなんですか?」
「まあ、そうだな。いつもあんなだ」
「正真正銘の変態ですね」
レイは、冷たい声で言い切った。
「そ、そうだな」
や、やりにくい。なんで優秀なのにこいつ、俺たちの所へまわされたんだ?
ハリー達は12番艦。9課の末席の艦である。
優秀な人材は普通、旗艦なんかに回されるはず。
なのに、レイはこちらに回されている。
なぜだ!と言いたいが、ハリーも、レイ本人も薄々は分かっている。
協調性の問題だろうと。
「位置はこのままでいいのですか?」
「そうだな。では、微速後退。後は惰性で、停止次第、主砲発射ということで」
「そう言うと思って、いまやってます」
「そうか。えらいな」
ハリーとレイは、モニターに映る、戦況を見つめる。
これだけの数の機動兵士を捌くとは、信じられんな。
普通なら、機動兵士と戦艦なら、機動兵士が圧倒的に有利である。
機動性の差で。
なのに、弾幕だけで捌いている。
「ちっ、これだけの数でもダメなのか?」
「やっぱり、だめなのかな」
「す、すご~っ」
「くっ、近づけないッス。こんちくしょ~~」
ドクターkの戦艦はまるで、毛むくじゃらのおっさんのように、ビーム砲が飛び出している。
そして、人間で言えば、関節に当たる部分に、第二主砲ともいえるものが付いている。
「楽しいですね、博士」
「ほんとに。でも、博士はやめなさい。メグ」
「あっ、ごめんなさい。つい」
「いいのよ。それでは、パーティーのお誘いに、いい加減乗ってあげましょう」
「そうですね」
メグと呼ばれた少女は、助手のメグ・ブライアン。
エミ・ブライアンの姉である。
そして、博士と呼ばれたのが、ドクターk。
クララ・バーンステインである。
切れ長の目。銀色の長い髪。スレンダーな体格。
白衣の中は、赤一色。
オーバーリアクションのため、髪を振り乱して歩く。
ミニスカートからは、中が見えそうでみえない、絶妙ななかなかのエロティシズム。
助手のメグは、同じかっこでうで、ピンク色を着ている。
メグの方は、そんなクララをじっと見つめながら、後ろをついてゆく。
何を考えているのだろう。
格納庫まで歩いて行くと、二人はそれぞれの機体に収まって行く。
「きこえますか、クララ」
「おっけー、バッチリよ」
「それでは、シャフト開きます。まずは、私から行きます」
「おっけーよ~」
クララの戦艦、えんじぇるすたぁ号の、左の鼻の部分から黒い何かが飛び出した。
「きたか」
それは、黒光りしているメグの機体、ディアボロスだ。
それに続くように、右の鼻からは、白銀色に輝くクララの機体、るしふぁーが飛び出してきた。
2機とも股間のあたりが、もっこりしているようにも見えるが、今のところは勃起はしていない。
るしふぁーは、何かきょろきょろとしている。
「えっと、メグの妹はどこかしら」
「あそこです」
ディアボロスが、正面の機動兵士を指さす。
「わかった。あれだけは、落とさないようにするわね」
「ありがとう、クララ」
「どういたしまして。それじゃあれは任せたわよ」
「はい」
「それじゃぁ、たのしいパーティーの始まりよ~っ」
羽の生えたような、二機の黒と白の機体が動いたかと思うと、あっという間に消えた。
9課の機動兵士が捜していると、左右の一番遠くにいた2機が、推進装置と、両手足を落とされた。
そして、次々と落とされてゆく機動兵士。
落とされているのは、配属されたばかりの、新人ばかり。
新人たちは、2機が出てきた時は、すぐに後ろへ下がれと、命令が出ていたのである。
「や、やれらちゃいました~たいちょ~ごめんなさい~」
ハリーの戦艦エメラルダスに、サーシャからの連絡が入ってきた。
「そうか、やられたか。生きているならそれでいい。そこでじっとしてろ」
「バックパックの推進装置やられて、それしかできないんですけど」
「・・・まあ、とにかくじっとしてろ。エメリーからの連絡が無いな。やられていても、おかしくはないんだが」
「下がるのが嫌で、前線に残ってるんじゃないですか」
「ああ~、そういうことか。しかし腹が立つな、メグ姉のやつ」
新人たちは、次々と落とされてゆく。
腕のいいパイロットもいるはずなのに、圧倒的な性能の差である。
それを見ていた、先輩パイロットたちに、旗艦からの通信が入る。
二班に分かれて、迎え撃て。
先輩パイロットたちは我に返り、すぐさま2班に分かれて迎え撃とうとする。
エミ、ダン、エメリーは、第2班だ。
2班で残ったのは、10機。
半分以下である。
その第二班に向かって、白銀の機体がやってくる。
「やってやる。やってやるぞ、こんちくしょ~!」
「何やってんのエメリー。もどりなさい!」
エメリーが、何も考えずに前に出て、ビームライフルを撃ち始めた。
白銀の機体は、あっという間に、まるでそこにエメリーの機体なんかないように、横を通り過ぎて行った。
残りの2班は、体勢を立て直して迎え撃ったが、すれ違う時に2機落とされた。
白銀の機体は、海賊船のところまで行くと、9課のとある戦艦を指す。
その戦艦は、エメラルダス。
ハリー達、9課12番艦だった。
海賊船はハリー達に向かって、全速力で走り出した。
「隊長、全速力で海賊船がこちらへ向かってきてます。それから、えんじぇるすたぁに、動きがあります」
「なに?取り舵いっぱいで、よけられそうか?」
「今やってますが。わかりません」
「そうか。このままじゃ当たると言う事か」
「・・・・」
レイは、思い切り舵を切る。
ハリーは、えんじぇるすたぁの動きを見逃さずに見ている。
このままじゃ当たります。もうだめですと、レイが諦めかけたとき、ハリーは大丈夫。舵を切り続けろと、レイに悔しそうに言った。
そんなことないと思いながら、レイは舵を切り続けた。
あ~あ、短い人生だったなぁ。
そのとき、光とともに衝撃波でエメラルダスは、海賊船の航路からずれた。
数秒後、海賊船はエメラルダスの横を、掠るように逃げて行った。
レイが助かったと、胸をなで降ろしていると、横にいるハリーが叫んだ。
「やられた!あそばれた!」
何のことかと、レイが思っていると、通信が入った。
「はあ~い、はりーちゃん。楽しんでもらえたかしら~」
「うっさいばばあ。よくも遊んでくれたな」
「しつれいな~。あの時、ち〇こ主砲撃たなかったら、ぶつかってたのに。お礼を言われてもいいくらいだと思うけど」
「レイ。通信を切れ」
「はい。わかりました」
「ちょ、ちょっとまって」
通信はきれた。
「隊長、聞きたいことがいろいろあるのですが」
「なんだ。なんでも言ってみろ」
「機動兵士がやられてた時、メグ姉とか言ってましたが、知り合いなんですか」
「ああ、それな。それはな」
そのとき、通信が入り直した。
「それは、私が答えてあげましょう」
声の主は、メグ・ブライアンだった。
「め、メグ姉。いったいどうして?」
「ああ、それはね、その船の通信回線乗っってるからよ」
「なんだと~!」
そのとき、モニターにメグの顔が映し出された。
ここまでくれば完全に、この船は乗っ取られている。
「め、メグ姉」
「久しぶりね、ハリーちゃん」
「ちゃん付けはやめろ」
「はいはい。それじゃ、そこの女の子」
「な、なんですか」
レイは、怖いだのすごいという気持ちが、入り乱れていた。
「なんですかじゃないでしょ。今からあなたの疑問に答えてあげる。ハリーはね、私のことが好きなの」
「そ、そうなんですか?犯罪者がすきなんですか」
「いい加減なこと言うな!」
「ごめんごめん。わたしは、単なる幼馴染」
トリプルAクラスの犯罪者が幼馴染なんて、それだけですごい気がするけど、と思いながらそれは流す。
「それだけですか?」
「なぜ?」
「私の知り合いに、似ているからです」
「誰かなそれは」
「私の先輩です」
三人目の声が割って入る。
「ピンポンピンポンピンポ~ン。貴方の推理は正解です」
「ど、ドクターK」
「ドクターkじゃないの。ドクターく、ら、ら、よ。わかりましたか、お嬢ちゃん。メグも、もういいかな」
「はい。それじゃあ、またね。ハリーちゃん」
「くっ」
「またね、ハリーちゃん」
「ばばあは消えろ!」
「つれないなぁ、ハリーちゃんは」
「うっさい消えろ!」
通信はどうやら切れたようだ。
復活するかもだけど。
戦闘はまだ続いている。
黒と白の機体はないようだ。
「あそばれてるな」
「はい。遊ばれてますね」
ハリーとレイには、表情はない。
ただ、突っ立って、遠くの戦場を眺めている。
モニターを見たくないのだ。
そこには、えんじぇるすたぁ号の股間のあたりから、自分たちを救ったと言えなくもない、ち〇こ主砲がこちらを向いていたから。
一時間ほどすると、戦闘は終わった。
犠牲者はゼロであった。
そして、機体が無事な二人が帰ってきた。
「強すぎるぜ、まったく」
「ほんとに。全く歯が立ちませんでしたからね」
「二人ともおかえり。新人の二人は?」
「予備燃料が無くなりそうだったんでな、とりあえず帰ってきた。後で怒られるかもしれんがな。なんで、おいて行ったんですか~ってな」
「それじゃ、俺が救命艇で引っ張ってきますよ」
ハリーはそう言うと、救命艇で出て行った。
変な空気が流れていた。
ダンは凄く居心地が悪かった。
レイは、エミをなにも言わずに見つめている。
「そんな顔で見ないでよ」
「お姉さんが、AAAクラスの犯罪者って知ってたんですか」
「まあね」
「それじゃなんで、9課になんか配属を願い出たんですか?」
あ、あいつ、こんなことになると思って、逃げやがったな。
「先輩。艦を降りてください」
「それは出来ない」
「なぜですか。先輩なら、どこの課でも大丈夫でしょう。私は優秀な先輩に憧れてました」
「そう、ありがと」
レイは、エミを睨み続けている。
そして、静かだが、どすの効いたような声で、レイが話し出す。
「先輩は、身内を本気で撃つことが出来ますか?」
エミの肩が、ピクリと反応してしまう。
出来るとエミは言ったが、エミの反応を見たレイは引き下がらなかった。
殺すことをためらうなら、早く艦を降りてほしいと。
尊敬する先輩の、無様な姿は見たくないと。
「それくらいにしとけ」
ダンが二人の間に割って入る。
「見損ないました。最低ですあなたは」
「こらこらこら」
「いいんです先輩。事実ですから」
「しかしなあ」
「わたしは、自分の部屋で休憩してきます。ご苦労様でした」
「ちょ、ちょっと待て」
そして、レイは自室に行ってしまった。
「おい、このままでいいのか?」
「いいことはないけど、ゆっくりとでも、わかってもらうしかないです」
こんなことがあった後、30分ほどすると救命艇が帰ってきた。
帰ってきたのは、何故か二人だけであった。
ハリーとサーシャである。
ハリーの話によると、いくら探す範囲を広げても、レーダーに何の反応もなかったというのだ。
しかし、それはあり得ない。
このレーダーは、この宙域くらいは楽にカバーできる性能の物だから。
「どうするよ、隊長さんよ」
「そうですね。闇雲に探しても仕方がないですし。う~ん」
ダンが、エミに目配せをする。
今のうちに、あのことをサーシャにも話しておけと。
エミは、自分の姉がメグ・ブライアンという犯罪者であること。
しかも、AAAクラスで、今戦った相手と言う事を話した。
「ごめんなさい」
「えっ、先輩、頭なんか下げないでくださいよ。自分で捕まえる気なんでしょ。だったら、私は気にしませんよ」
「ありがと」
そのとき、通信が入った。
「あ~あ~。聞こえますか~」
「うわっ!びっくりしたな~も~う」
「隊長さんはそこにいますか~?」
「くっ、わざとらしい。なんか用かばばあ」
「ひどいな~ハリーちゃんは」
「もういい、みんな、ばばあの声が聞こえないように、耳栓をしろ」
ハリー、エミ、ダンの3人は、睡眠のための耳栓をポケットから出そうとした。
サーシャは、指を耳に突っ込んでいる。
耳栓をしようとした時、きっと後悔すると思うけどなあ、という声が聞こえた。
「言ってみろ」
「えっ、なに?」
「言ってみろ」
「きこえな~い」
「教えてください。お願いします」
モニターには何も映っていない。
だが、もしかすると、ということもあるので、ハリーは思い切り頭を下げた。
「よろしい。頭も下げて貰えたし、いいことを教えてあげます」
そして、エメリーの行方が分かった。
クララの話では、ち〇こ主砲に引っかかっていたそうだ。
そして、今は保護しているという。
「くそっ、人質と言う事か。一体何が目的だ!」
「人質って、何考えてんのあんた。こんなうるさい娘いらないわよ。さっさと引き取りに来なさい。座標は・・・」
受け渡しの宙域に着くと、既にえんじぇるすたぁ号は到着していた。
通信の向こうでは、エメリーが泣き叫んでいるようだった。
「だれか~だずげて~ごろざれどぅ~。うわ~!うるさいだまれ!いまから、脱出ポッドを射出するから。
えっ、えっ、どこにつれてくの?こんなか入れ?やだっ、ぜっったいにやだっ!たすけてだれか~!うるさいから押し込んでしまいなさい。うわ~こわい~たすけて~んぐっあがっ・・・・」
「な、なにをした!」
「うるさいから、口にタオルを巻きなおしたのよ。ようやくはいった、あっそう。今から射出するから。もうこんなの、ち〇こ主砲に引っかかることが無いように、気をつけなさい。汚らわしい」
どっちが汚らわしいか分からないが、それで通信は途絶えた。
ポッドを回収して開けてみると、そこには涙で目を腫らしまくった、エメリーがいた。
エメリーを、ポッドから出して、手足のロープを解き、最後に口にまかれたタオルを解いてやった。
エメリーは、大分抵抗したのだろう。
あちこちに傷があった。
それと同時に、爪には血がこびりついていた。
迷惑かけたみたいだな。
大人しくしていれば、縛られたりしなかっただろうに。
「たいちょ~怖かったです~もう少しで殺されるところでした~」
「そ、そうなのか?まあ、いきててよかった。少し長めに休んで来い」
「そうさせてもらいまず~。ひっく」
一方こちらは、えんじぇるすたぁ号。
「いててててて」
「大丈夫ですか、クララ。もう、ひっかき傷だらけですね」
「ホント、いい迷惑だわ。あの娘。今度会ったら、バチこ~ンいわしてやる」
どこの言葉ですか?と聞きたくなるが、メグは我慢をする。
クララは、消毒してくれているメグの顔を、じっと見つめる。
「私の顔に、なにかついてますか?」
「いんや。なにもついてない。綺麗な顔だよ。傷一つないね」
「ありがとうございます、クララ」
嫌みのつもりで言ったのに、ぜんっぜん通じてない。
なんで私に傷ばかり出来て、メグには出来てないの?
「一つ聞いてもいいかな」
「何をでしょう」
「なんであんたには、傷一つないの?おかしいでしょ」
「さあ、私にはどうしてだかわかりません。謎ですね」
クララは、極端な人見知りである。
モニター越しなら、いまでは何ともない。
メグに出会って、少しづつ改善したのだ。
しかし、直接人に会うのはダメらしい。
体がカチコチになるのだ。
今回も、ロープで縛るのはメグが一人でやると言ったのだが、どうしても手伝うと言って。こんな目に会ったのだ。
普通なら避けられるようなエメリーの攻撃を、ガチガチのクララはくらってしまったのだ。
だからと言ってメグは、クララはまだ人見知りは治ってないとは言わない。
取引相手の海賊なんかとは、うまく付き合っているのだから。
そうして、少しづつだが、人見知りの方は直していこうと、メグは思っている。
「いてててて」
「ああ~ごめんなさい」
こうして宇宙の夜は更けてゆく。
それから、余談かもしれないが、ダンにはちょっと疑問に思う事があった。
「なあ、レイ。ちょっといいか」
「なんでしょうか」
「エミのことは、散々言ってたのに、隊長はいいのか?あいつも、メグ・ブライアンとは幼馴染になるんだぜ」
「ああ、そうですね。でも、あんなへっぽこ隊長、私には関係ありませんから」
「そうか。でも、へっぽこは酷いだろ。へっぽこは」
「そうなんですか?」
それを陰から見ていたハリーは思った。
し、しどいよレイちゃん。あんまりだよ。
それを見ていたエミに、ハリーは頭をなでられ慰められる。
「い~こい~こ。あんたは、へっぽこなんかじゃないよ」
「そ、そうなのかな」
涙がこぼれそうなハリーに、エミは言い聞かせる。
「あんたは、やればできる子。出来る子なんだよ」
「ほんとに?」
「ホントホント。あたしを信じなさい」
エミは、無い胸を叩く。
「うんわかった。信じる」
「そう。そして、がんばりなさい」
「うん。ぼくがんばる」
いかがでしょうか。久しぶりの短編です