第六話
UPしました♪
男が寺へ向かおうとしている頃、真也はいつものように雑務に追われていた。
「あ〜、もう、他の子らは修行して雑務を少しだけでいいのに何故せなあかんのやー!」
という様に地が出でしまう程てんてこ舞いな感じである。
だから、同僚に助けを求めようとしたのだが、
「お前が働いているという事実だけで面白いものよ!」
「あんたの助けなんて聞いたるものかー」
拒絶されるばかりだ。ここに至るまでこの様な扱いをされ続けてきたのであるが、ここまで我慢できたことを褒めて貰いたいと思っている。気がおかしくなりそうだ。
父にまで馬鹿にされた顔が、ますますコンプレックスとなって刻まれたわ。もう嫌になる。こんなことが起きない世ができたらな!
そうしていると…、
向こうの方から、
「おーい!!」
と、慌てた声が聞こえた。濬芳様が呼んでいるようだ。
いつも冷静なあのお方が珍しい。
何が起きた?急いで濬芳様の方へ向かおうとしよう。
事情を聞くことによると、まぁ〜驚いた。
領主様がこの寺に来るということである。突然である、今夜の晩御飯的な。
先触れによると、
<一、今から一刻半後に寺に向かうこと
一、寺に小僧として励んでいる猿づらの者を呼ぶこと
一、寺の今後のこと>
が書かれていたようだ。
これに絶賛混乱した。
ここに来て何回目の驚きだろうか、目がき◯し師匠のようになっていただろう。これは他の人には見せられん。
呼ばれることしたかな。あれか?それか?
しかし、直ぐに切り換え、領主様に会うための服装や本堂を神速の如く整えよう。それからだ。
ついにその時を迎えた。
「大義である。面を上げよ。」
命令されたので顔は上げなあかんな。時代劇を体験するとこになるとは。あ、見るからに戦国武将な厳つい男だな。典型的だね。
領主様が先に口を開いた。
「ここに来た理由は、後ろにいる小僧のことであるが、まずこの寺についてである。民衆にこの寺がどう思われているか、ご存知かな?」
「いいえ、とんと存じ上げませんが。」
と、濬芳様はとぼけてみせた。
この場にブリザード吹き上げてるな〜。関与したくないけど…、
本当にに自分の事で来たのか!驚きを通り越して何も言えないわ。
空気がだんだんと悪くなっているな。正直逃げ出したい。しかし、身体が動かない。くそっ。
「本当にですかな。民衆は分かっていますよ。本当は蓄えがあるにも関わらず…、寺としての本業を忘れ…、という事があったと聞いていますが。」
「なっ!」
と、領主様の言葉に周りの僧が色めき立っている。それは仕方ない。心当たり俺でもある。僧のスキャンダル。
「何のことか言っていませんが、心当たりはおありで?」
「いいえ、何のことか…」
冷や汗をかきながら答える、濬芳様。
このやり取りが数回繰り返された後、
「何も知らず存ぜぬで突き通すおつもりか。ならば、どうなるか分かっておろう?」
領主様が脅しをかけてきた。
ザ、戦国時代やな〜!!怖っ!急に背中が寒くなったわ。
それに対し、
「仏様を蔑ろにするおつもりか!何なら…。」
濬芳様は挑発するように言った。
なぜ今ここで?
「何なら、なに?戦うというのか。仏様は殺生はいけないというのにか?まぁ〜、いい。率直に言う。その小僧をいただきたい。」
「何故ですか!この子はとても優秀なんですよ!」
濬芳様は思わず舌打ちしてしまったな、それに苦い顔をしているな。
「だからこそである。それとも、また話をぶり返したいのですかな?」
濬芳様は熟考した後、
「はい、分かりました。」
今後の寺のためにも利があると思い渋々承諾をしたようだ。
「今度は無いですぞ。」
と領主様は恫喝した。
蚊帳の外にされた感じはしたが、取り敢えず仕えることができてラッキー!
領主様は真也の方に向き、
「そこの小僧、しっかりと励め!」
と睨むように言った。
それに、半ば気圧されたがしっかりと返事をする事ができた。良かった。
「その名を何と言う?」
正直迷ったが、歴史を変えたらと思うと怖くなったので、こう答えよう。
「ここでは日吉と呼ばれておりましたが、名を改めます!木下藤吉郎とお呼びください!」
「木下藤吉郎、小者として励め!」
やったー!バンザイ!な真也です!!
やっと寺を出ることができました(祝)
次は…小者編です!
どうぞご期待ください^_^