第四十一話
UPしました!
今、信長様の本隊と合流して、後方にいる。
俺らはもちろん徒歩だ。馬なんぞ飼えるわけない。輸送用に何頭かいるが、それだけだ。
周りは勝ち戦だと確信しているのか、今までの戦よりも空気が軽い。本当に現金なものだ。これだから尾張の兵は弱兵だと言われるんだ。俺としてはこの空気は許しがたい事だと思っている。相手としては寝返られてはどうしようもない事態だと分かっているが、何とかして侵攻を防ごうと躍起になる事は必須だ。だからこそ、俺の軍だけは浮ついたものを取り除かなければならない。そうせねば、信長様を守る事はできないと思うからだ。
「おーい!お前たち、浮つくのは分かるが、勝って兜の緒をしめよ!油断大敵!心を一つにして殿を助けるのだ!そして、大手柄を立てよう!」
「「「おーー!」」」
よし、兵たちには多少なりとも伝わったと思う。そう思いたい。俺はこういう事でしか守れないからな。
そうしているうちに稲葉山城下付近についた様だ。ここは敵陣に等しい場所であるのか、少しピリピリしている。突入までまだまだだと思うので、少し休ませよう。だが、警戒は厳に。俺も休もうか。
「木下殿、殿がお呼びです!至急お願いします!」
今まさに休もうとしていたところなのに!俺は…、まあ良いか!行こう!
何言われるんだろうか?分かってはいるけど、本陣に呼ばれるなんて初めてのことだから緊張している。柴田様や森様もいるんだよな。その二人がいる事は俺にとって心強い。しかし、快く思っていない方も多くいるので、嫌になる。代表格としては、佐久間様や林様だ。
「木下、只今本陣に参りました!」
「遅いぞ!ハゲネズミ!」
「この度は申し訳ありません!こんな藤吉郎が呼ばれるとは思わなくて。これからの城攻めでは何用でもお使いください!」
「ふん!」
一応は許された様だ。
入って行った時信長様に睨まれたので、もう終わりかと思ったけど、よかった。調子の良い奴めと相変わらず、先に挙げた方はこの仕儀に納得いかないのか、仏頂面であったけど。
評定を聞くことによると、案の定、稲葉山城下を焼く様だ。それにより、城にこもっている斎藤勢を観察する様である。それでも打って出て来なければ、総攻めを開始するという事になる様だ。しかし、それで良いのか?前から信長様に言っていた策を今言わなければ、兵の被害が大きくなってしまう!それだけは避ける必要がある。今言えということか?
「殿、宜しいですか?この藤吉郎に策があります。」
「小者如きが出しゃばるでないわ!」
その様に俺の事を気にくわない武将が言ってきたが、信長様に
「言ってみろ!」
と、促されたので言ってみた。
「はっ!俺はあらかじめあの稲葉山城の形状を探っていました!それがこの絵図です。」
取り出すと、諸将がざわめき出した。当然だろうね。他のにしてみたら、小者如き俺がこんな事をしているとは思わなかっただろう。織田の武将は脳筋タイプが多いから尚更だ。
「先話されていた戦術ではここ井ノ口から総攻めをするという話でしたが、それ一辺倒にしてしまうと、こちらの被害が大きくなってしまいます。相手にとっては勝手知ったる場所であることが一番の理由です。そこで、ここだけ守っておればと油断させ、別口から奇襲をかけるのはどうでしょうか。例えば裏手にある兵糧庫や武器庫を焼き討ちをするのは?」
「これは無謀だ!できるわけない!」
「懸念している事は分かるが、やり方がな…。」
予想通りだ。反対意見が出る事は分かっていた。だってね…。
「この策においては、最短の道である北西側か北側から攻める方が良いかと思いますが、東側の嶺から攻める事を藤吉郎は考えています。あえて最短の道を残す事で相手が自暴自棄にならずに俺達が戦いやすくなると思います。」
この策に感嘆の声が聞こえてきた。ホッとしたわ。この評定で俺の進退が決まると言って過言ではない。後もう一押しだ。
「このハゲネズミの策、見事だ!誰かやってくれるか?」
思った通り、誰も手を挙げない。
そりゃそうだ。こんな首が取れない裏仕事のようなこと誰がするかと。この時点での織田家は首取れが主流であるからだ。
頃合いだな。
「この案を考えた藤吉郎がきちんと全部責任を負って、敵斎藤家を混乱に陥れてみせます!どうぞよろしくお願いします!」
「良いだろう!やれ!」
「はっ!ありございます!やってみせます!」
この案は元々信長様には前々から伝えていた。だから、この一連の流れはある意味やらせである。しかし、ここで忘れてはならないのが俺は信長様の言う事を無視して自分勝手に動いているわけではなく、信長様の要望に応えているだけだ。
これで評定は終わった様だ。
緊張しすぎて腰が抜けそうになった。ふー。
「おーい!木下、ちょっと良いか?」
「少しの間でしたら。」
なんだろう?柴田様。
「先の案、良いものだと思うが、木下できるのか?少しばかり心配してな。」
「そうだ!この三左も思っている。」
こんなに気を遣ってくれて俺としてもありがたい。まさに神様仏様だ。俺はこのお二方をはじめ様々な方に感謝せねば!
「御心労おかけし申し訳ありません!この策はむしろ俺達の様なものがせねば、成功はしないと思います。俺の軍勢は様々な身分の集まりで、特に元商人や元百姓が多いです。だからこそです。ありがとうございます!」
そうか、とこの言葉に納得してくれた様だ。よし始めよう!この戦の後のあれを聞くために。
作者としては四十話で美濃攻めを終わらすつもりでしたが、長くなってしまいました!もうそろそろ終わると思います。真也にとっては答え合わせです。その答えで合ってるのか是非次回ご覧ください!
今日も読んで頂きありがとうございます^_^