第三十四話
UPしました!
前回の戦は美濃の滅びていく砂ににさらなる穴を開けるという観点からいくと織田家の戦略勝ちであったが、信長様は満足していなかった。というのも、今、矢島にいる足利義秋に対して上洛をする約束をしていたからだ。そのためにも美濃の早期攻略は必須条件であり、武勇を見せる上でも大切なことだ。
今、俺は何をしているのかというと、坪内利定に対する正式な安堵状の作成をしている。というより、その現場にいる。坪内氏は美濃を攻める時から調略を行なっており、今回の戦にて味方したことで安堵が認められた。俺がこのようなことをしているということは信長様により認められたということだ。信長様の代理のような仕事だから。
「ここに署名をして頂いたら、本領安堵と相成ります。」
まず、坪内利定が名を書き、そして、俺が名を書く。
「これにて、坪内様は本領安堵となり、この場を終了させていただきます。おめでとうございます。」
「ありがとうございます!粉骨砕身、神仏に誓って織田家にて働きます。」
よっしゃ!この堅苦しい場を離れたい。上役の方って、大変だなと思ったわ。そういう後始末をしているのかと。これは俺にとってすれば相手より緊張した。
この仕事をするとなった時、正式な服装という服装がなかったので、ねねには本当に苦労かけたな。家臣が増えていく中でお金のやりくりが難しい時に。本当に頭が上がらない。
そして、年を越して永禄九年、年初めから織田家と斎藤家の小競り合いはあったものの一向に進行しなかった。足利義秋の仲介もあって、とりあえずは静かになった。が、そんなことでへこたれる信長様ではないので、来たる決戦のために準備を怠らなかった。
そんな時、俺は信長様に呼ばれた。
「礼は良い。どうだ?」
「まずですが、洲俣に御旗を掲げるのは美濃勢を引きつけてからした方が効果的だと思います。そして、六角家とは絶縁になりましたので、伊勢長島へ赴き織田の良き噂を俺が広めようと思います。将となる方がやりやすくなりましょう。」
「ハゲネズミ、当分一人で動け。そして、あの証文がそうであるなら織田家になった。よって、与力としてつける。良いな?」
「はっ!」
つまりは、稲葉山城へ攻め込むまでは単独で工作せよということか。そして、その共として川並衆の蜂須賀様や前野様をつけ、西美濃に圧力をかけよとおっしゃっているのだな。その上で、伊勢長島にも行けということか。体持つかな。
「今、北勢を攻める者を呼んでいる。顔を会わせよ!」
誰かな?多分、鉄砲が得意で忍びのような仕事もしているといわれるあのお方か。実態はどうなのかは分からないというが。
「木下様、目の前にいますよ。」
「うわー!驚きすぎて心の臓が止まってしまうようだった!貴様がそうか?」
「そうです。名は滝川左近といいます。よろしくお願いします。」
「こちらこそよろしくお願いします!俺は木下藤吉郎秀吉です!」
案外、普通そうな方で良かった。前世のwi○iで見た絵よりはマイルドですっきりとした顔立ちをしている。が、どこか理知的なものが漂っており下手したら食われるな。
「さて、殿が北勢をということですが、木下様はどこまでしていますか?」
「俺はあの時気分が高まっていたのか、大演説をかましてしまい、謎の放浪者としてなぜか崇められています。家もそこにある状態です。俺が予測しますに、美濃の龍興は逃げ足が速いので、川をつたって長島にたどり着くと思います。なので、川並衆を稲葉山城下にするので、長島に滝川様の部下をお願いしたい。戦意を消すための工作をしてもらいたいと思います。長々と申し訳ありません!」
「良い。戦意を消すのはお任せを。しかし、長島の民にはどう伝える?」
「それに関しては、今から行って、謎の放浪者になろうと思います。滝川様にお手数おかけします。これも織田家にとって遺恨を残さないためです。」
「そうか。長島の一向門徒を敵に回すと厄介だから、当分手綱を持って欲しい。それに本山まで伝わっていると思いますよ。」
うわー、まじか!本山まで伝わっているとなると、厄介きわまりない。いつかは手を引く必要があるな。俺にとっての足かせになること必須だ。当分と言っていたな…、やったら比叡山の時点で手を引こう。いや、朝倉の前かな?その際は、死んだとしてね。
「今日、ありがとうございます!お会いできて良かったです!ともに織田家を盛り上げていきましょう!」
「はい。」
「では、この場はご無礼つかまつる!」
そういうことだったら、もう行動あるのみだ!俺の屋敷にあの御旗があるから取りに行くとして、早速準備をしよう!
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「左近、ハゲネズミどう思う?」
「元百姓とは思えない発想と知恵ですね。すごいと言う言葉しか思い浮かびません。」
「あはは!さっき、わしがいるのに挨拶するのを忘れておったわ!ハゲネズミらしい。」
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「ただいま!ねね、あの御旗綺麗にしてくれた?」
「しましたよ!多くあって大変でしたよ!でも、お前様のためであればします!忙しそうでしたので、家臣の俸禄は分配しておきました。」
ねねは俺と一回り違うけど、とても大人だ。それに、経済観もしっかりしているので任せきりになっている。
「ありがとう!いまから、旅に出るから!」
「分かりました。気をつけて行ってらっしゃい!」
本当に助かる!時々、俺の嫁さんで良かったんかなと思う時があるけどね。でも、可愛いところがあるから良いんだよな。例えば、
「チュッ!」
「これ!真昼間から!もう!」
これだ。顔を真っ赤にしているのがなんとも愛らしい。言葉には言い表せないが、最高だ。よし、力を補充できたところで。
「行ってきます!浅野殿と堀尾殿は一緒に行く!そして、他の三人はお金の工面と美濃衆の動向を頼む。」
「「はい!」」
「木下殿、紹介したい者がいるのですが、良いですか?」
「良いよ!堀尾殿、誰?」
「知り合いの中村一氏という者ですが、家臣にと思いまして。」
「良いよ!堀尾殿が紹介するほどのお方であれば、間違いない!ありがとう!」
ここで中村一氏が来るとはな。ま、優秀には違いないだろうから良かった。偉人発掘しなければ!山内一豊は今近江か…、長いな。
いつもながら、洲俣に早くついたな。これって、なんかのフラグにしか見えないな。
「蜂須賀様、木下が参りました!」
「おう!相変わらず元気そうだ!今日はなんだ!」
「まず、この証文を読んでください。正式に俺の与力となったというものです。」
「そうか…。良かった!あの時のあれ効いたか。でも、実質変わらんな!」
「一緒に働けて嬉しいです!これからが本題ですが、織田家が戦をした後に、この御旗をこの洲俣に掲げて欲しいと思います。そしたら、美濃の民も喜ぶでしょう。織田家になると。」
蜂須賀様はピンっときたようだ。でも、悔しそうだ。川並衆を俺は使ったからな。すまん!
「良いよ!木下!こうなる事を望んで、川並衆を動かしたな。やっぱすごいやつだ!織田の殿に紹介した甲斐があったもんよ!」
「えっ!なんのことでしょうか?」
話を噛み砕いて言うと、優秀な者だからこのまま商人で終わるのは勿体無いと思い、推薦したようだ。恐らく、自らの地位を上げるためでもあると思うけど。
あ、これで合点がいった。なぜ、あの時の小姓の暴挙が許されたのか。そうか、そうか。殿もグルだったわけ?
「明日、伊勢長島に行くから船貸してもらっても良いですか?お届け物があるので。その例の計画を浅野殿と堀尾殿から聞いておいてください。洲俣に置いておきます。」
もうすぐです!もうすぐです!
洲俣の一夜城もどきができるのが?
今日も読んで頂きありがとうございます^_^