第三十二話
UPしました!
「ご無礼つかまつる!俺は織田上総介が家臣木下藤吉郎秀吉である。竹中半兵衛様に是非御目通り願いたい!」
すぐに開くかな?それとも捕まって殺されるかな?めっちゃ緊張するわ〜。だが、竹中半兵衛はそんなことする様な相手ではないことはわかっているが、心の臓が鼓動を打っている。
門番を見てみると、開ける素振りを見せている。でも、油断は禁物だ。
しばらく待っていると普通に開いた。という事は何もない様だ。
城内に入ってみると、やはり戦に行く様な慌ただしさや物々しい雰囲気が漂っている。俺に対しては敵意は半々の様だ。おそらく、厳命されているからだろう。
緊張からか待っている時間が長く感じた。
「面を上げてください。」
「はっ!」
竹中半兵衛は見た感じ、物優しい印象を受けるが、底の見えない何かがある。じっくりと観察したかったが、ここは戦場だ。
「私の名は竹中半兵衛重治と言います。この城において外交の任をつかせて頂いております。」
「俺は織田上総介が家臣木下藤吉郎秀吉と申します。此度は貴様に興味があり、ここ稲葉山城に参りました。これが殿の証文です。」
ん?読んだ瞬間、眉間にシワが寄ったな。竹中半兵衛にとって、殿の証文はどう写ったのだろうか?興味が全くないのか、もしくは興味があっても切り捨てるのか。どうだろう。俺としては興味を持って欲しいが、後者だろうな。此度の事件の目的とその実利が全然違うからね。
「これには乗りません。申し訳ありませんが、お帰りください。」
「どうしてかをお聞きしたい。俺としてはこのまま戦にならず美濃を取れたら、多少の反抗はあると思いますが相互としても兵を余り損なわずに済むと思いますが、違いますか?」
「私の考えている命題とは違います。一つは殿の意識を改めさせる事。一つはそもそも美濃を落とすためのものではないという事です。わかりますか?」
質問に質問が返された。これが交渉の天才とも言われる所以か。だけど、竹中半兵衛は大事な事をあえて隠している。俺はその部分について述べたかったけど、この覚悟を決めた目を見ると何も言えない。いや、そうした方が尾張にとっても良い事だ。
「竹中様の信念にはとても胸が熱くなりました。だが、これだけは言います。俺は民の皆さんの笑うのがとても好きなんです。元百姓ですが、安定した暮らし何にもない暮らしが欲しいと常々思っていました。だからこそ、俺はその心を持った殿に仕えようと思ったのです。だから、この言葉だけは覚えておいて欲しいと思います。本日はありがとうございました!」
「木下様のお帰りです。」
やっぱ、あかんかったか。俺は分かっていたから、きっぱり切り捨てることができた。果たして殿はどうなんだろうか。まあ、竹中半兵衛の言葉を聞いたら納得してくれるだろうな。今日は良い収穫をした!
後は帰るだけだ。その前に堀尾殿と浅野殿を回収せねばならない。堀尾殿はもうすでに帰り支度は万端だ。早い!優秀すぎる!
「木下様、これが大体の稲葉山城の絵図です。」
「ありがとうな!本当に助かった!今度どっか行こうか!」
思わず笑顔で答えだが、堀尾殿は満更ではない顔をしている。嬉しそうだ。
さてと、中濃を見て回るついでに浅野殿をつかまえるとして、これからの組み立てをしなければ!この事件によって一部の人間を除き殆ど信頼を失っただろう。そして、何よりも解決屋が動いている限り尾張発祥であるという事実は消えないから、住民流出は避けられない。大きく見積もって、二から三年だろう。
考えいるうちに中濃に着いた。もちろん堀尾殿とも楽しくこれからのことも合わせて話してたけどね。
俺達は二刻程ブラブラしてたが、向こうから声が聞こえてきた。
「おーい!」
「浅野殿!どうであったか?」
「動揺が大きいようです。ですが、堂洞城の岸や関城の長井は静かでした。」
そうか…。岸氏は分かるにしても、長井氏は斎藤義龍とは不仲が噂されていたけど何故だろうな。どっちにしても、今回のふるい分けで分かったな。
「浅野殿、足早いな!堀尾殿と話してたけど、どっか行こうか?殿に報告してから。こっそりと。」
「ありがとうございます!ですが、こんな事したら、ねねが起こりますよ。」
「分かった!ねねには知らせるから。心配するな!」
にしても俺としては良い笑顔なはずだったんだけどそんなにニヤニヤしてたかな?浅野殿ちょっと引いてた。
よーし!今日中には清洲に戻ってきた!浅野殿、堀尾殿、ねねに言っといて!
「どうであったか?」
「本人は首を縦に振りませんでした。美濃は主な所を挙げるとすれば堂洞や関、鵜沼は固く閉ざされ沈黙してました。」
「で、あるか。」
良かった〜!久々に聞けたよ、この言葉。俺の心は元通りになったようだ。そんな気がする。
「蜂須賀についてはまだ美濃に置いておきます!」
「うむ。」
「殿、お願いがあります!俺に織田木瓜の御旗の使用権限をください!無礼を承知ですが、挫く為にも必要です!」
「分かった!後にする。」
後にするということは、今はまだだけどそのタイミングではないからまだだ。ということか。
「ありがとうございます!失礼しました!」
よっしゃ行くぞ〜!
「兄じゃ、今日から小一郎、名が長秀になったから。木下小一郎長秀。これまでのが認められて殿からもらった。」
「えっ!」
秀吉と長秀兄弟の名前の由来
私の解釈です。秀吉は信長の父信秀の秀と信長の幼名吉法師から取ったと思います。それほど、目をかけ、期待していたのでしょう。そして、なんだかんだ言って、信長は父親の事を尊敬してたと思います。長秀は信長の長と秀吉の秀から取った。つまり、秀吉と同様に目をかけていたことがわかると思います。それと同時に秀という文字を一族の名前として使っても良いという事を伺わせでいるような気がしてなりません。
違っていたらすみません!教えてくださいm(__)m
今日も読んで頂きありがとうございます!