第二十八話
真也、はっちゃけ過ぎましたので、ごめんなさいm(__)mここで謝っておきます。
俺は猛烈に頭を下げている。
「ねね、本当だって!本当に殿の命を受け、旅に出るんだよ!分かってくれ!」
「いーや、お前様のことですから、口先の上手いお前様のことですから、何かあるんでしょう?今朝もあのような有様で帰ってきて。」
これじゃ、外に出られないよ!これでは計画に支障が付いてしまう。どうしたら良い!さっきからずっと殿の証文の表を見せているのだが、一向に信用してくれない。なぜこうなった!
「確かに、何も言わずに行ったのが間違いだった!だが、仕様がなかったんだよ!本当にすまん!これからは気をつけるから!」
「まつ様からもお話は聞いています。なので、今回は許します。今回はですよ。頑張ってきなさい。」
その言葉とともに餞別も渡してくれた。生活が苦しいはずなのに。それにしても良かった!この危機は乗り越えられた!
「ありがとう!では、行ってきます!」
このようにまるで逃げるかのように出てきた。怖かった。この一言しかない。今現在、何をしているのかというと…。
「なぁー、ここらって一向宗なんだよな?」
「そうやに!とてもありがてー坊さんがよ、いつも念仏を唱えてくれるんや。」
「そうか。ありがとうな!ここに家建てること許してくれて。」
そう、ここ伊勢長島に拠点もとい家を建てている。
何故、このように歓待を受けるようになったのでしょうか。それは、長島の願証寺での出来事だった。
俺は元は農民だから、それらしく行っていたのだが、思わず大演説をかましてしまった。世の憂いびととして。本来なら、お忍びで建てるつもりだった。ま、これでも今後を考えると丸だ。
その演説というと、
「今から百十数年前、今日の都にて大きな戦が起きてしまいました。それにより、全国各地にその火種は飛び散り、今現在の様相となっています。俺達百姓は食べるものも着るものも少なく、戦に駆り出されるばかり。しかし、俺達は前に歩いていかなければならん。そのためにも、ひとを信じるまたひとを助ける、これこそ真の他力本願ではなかろか!俺達それぞれ、家族や仲間という集まりがある。その人の為、この好きな武将の為、なんでも良いが、生きて生きることこそがそれに対する真の他力本願につながるのではなかろうか!悲観的にはなる気持ちは俺にはわかる。だが、俺は悔しくとも前を向いてきたしひと助けをしてきた。だからこそ、こうやって皆に出会えた。極楽浄土というのは生きているこの瞬間しか味わえん。俺は皆が大好きだ!決して死ぬことはならぬ!生きろ!」
というものをやってしまった。やっちゃったよ!長島自体が俺側になってしまったよ!願証寺まで。なんてこったい!どう殿に報告すれば良い?
こりゃ、伊勢長島一向一揆、これで少なくなるだろう。それは良かったけど、今思うと恥ずかしいったらありゃしない。できれば、穴に入れたい。
「あの言葉、心に沁みました!生きることこそが真の他力本願だ!という言葉や。そう生きてみようと思います。」
「そうか…。俺は極度のお人好しだ。だから、勇気が出たとか言われると嬉しいな!照れ臭い。」
この言葉で確信した。この長島の民は石山本願寺からなんと言われようとも、反乱は最小限になるな。良いのか、悪いのか、分からんけど、なるようになれ。絶対、本願寺の大元は早めに陥落してみせる。
もうすぐで家が完成するな。まさか、たった一日という期間でできるとは思いもせんかった。これは俺に止まって欲しいという合図であろうな。しかし、ごめんだけど、次にいかなければならない。
「なぁ、皆、聞いてくれ!俺は放浪者だ。次の所へ行かなければならん。寂しいであろうが、さらばだ!ここが一番の故郷だ!」
「そうだ!そうだ!ここがお前の故郷だ!また帰ってこい!」
「待ってますぞ!」
「生きる勇気が湧いてきました!ありがとう!」
ありがとな!皆よ!また会える日は分からんけど、絶対行くからな!
とお別れして、その翌日蜂須賀様の元へ行こうとした時に、信長様から書状が届いた。簡単に訳すと、
<呆れてしまうわ!でも、よくやった!>
だ。これで安堵した。理由としては、長島は本願寺の故蓮如上人にゆかりがあるからな。これは無下にはできない。
「蜂須賀様はいらっしゃいますか?俺は木下藤吉郎です!」
「木下か!最近顔を見せないから、心配したぞ!入れ!」
とりあえずは表面的には敵ではないようだな。だが、調略したといっても油断はならん。斎藤の手は伸びている可能性だってある。
「俺は木下藤吉郎秀吉と名を改めました。そして、晴れて武士となりました。ここで過ごした日々は絶対忘れません。ありがとうございます!」
「おー、良かったな!おめでとう!」
「さて、此度は美濃攻めの事について話をしにきた。当家は織田の味方か否かをお尋ねしたい。まずはこの証文を。」
蜂須賀様は長考し始めた。証文には本領安堵とその加増が書いてある。
今、斎藤家は龍興体制になってまだ日が小さく混乱している。が、織田家は美濃攻めに失敗ばかりだ。これは悩みどころだろう。
「では、この様な案ではどうだろう。一先ずは蜂須賀家を始めた川並衆は斎藤家につくのは。そして、その恭順の際に洲俣に拠点を置くのと斎藤家当主の側近斎藤飛騨にこの許可をいただくとともに、その謝礼として洲俣での売上の何割かを献上するということを言いましょう。斎藤飛騨が重要な人物です。さすれば、美濃における重要な拠点にて大きな商売もできます。どうでしょうか。」
「これは間者になれというのと同じことではないか?」
「いやいや、俺は美濃の珍しい物が欲しいんですよ!あ!違う、違う!これは販売活路を広げて欲しいからです!例えば、俺が始めた解決屋を美濃にて始めて欲しいんです!尾張発祥とかいってね。そうすれば、川並衆の評判を上げることができます!ただし、あの三点組は除外をお願いします。これは殿からの伝言です。」
「そうか!お前はまだこの川並衆のことを考えてくれたんだな!ありがとう!最初の言葉覚えておく。屋敷に必ず届けさせる。」
緊張したけど、なんとか納得させられた。交渉って、騙し騙しの所があるな。織田木瓜の御旗に関しては後だ。解決屋をやるというのは尾張の評判を上げる事によって、織田家についた方が良いと思わせる事にある。
「な、木下。良い嫁さん貰ったらしいな!おめでとう!酒ので行かないか!」
「いいですね!この川並衆と織田の繁栄のためにも乾杯しましょう!」
さすがは川並衆だ。酒の用意は早い!
「それでは木下の祝言祝いに乾杯!」
「「「乾杯!」」」
めっちゃ、楽しいな!それに旅に出ているという設定であるから、いくらでも飲めるな!ねねめっちゃ怖いし…。
次回予告
またしても、真也はねねに怒られ、たじたじです。果たして何が?!(予定変更あるかも)
読んで頂きありがとうございます!