第ニ話
あれから三つの晩を過ごし、体調が良くなった。その間で何となく事態を掴めた。
まず分かったのが、この家においてこの体はは数えで五.六歳で長男のようである。この一点だけだ。
ぎこちないながらも仕事をこなしている。病み上がりの身にはきつい仕事ばかりだ。それもあの男の人のせいである。正直、足はフラフラし、倒れそうになった。その時に限って、
「おみゃー、さっさと動かんかい!」
と、男の人が怒鳴りつけてきた。やめてくれと思う。このしごき何回続くんだよ。身体中痣だらけで心もヘトヘトや。
「おーい!」
女の人-母はお使いを頼んできたのだ。仏様に見えたわ。母自身この状況に対して耐えかねていたので、仕事を作ったようだ。本当に母に感謝しかない。もう逃げるようにその場から去って行こう。
解放された!やったぜー。ここに来て初めて外を調べられるわー。おおよそこの地については大体察しはついてはいたがな。歴史好きの魂に火が点いたわ。
住んでいる村から港までは、当時の人にとっては大した距離ではないと思うが、えらい長いな!しっかし、楽しいわ。えっ、うそここに砦があるやん!携帯があればすぐに撮れるのにな。
そうしているうちに、目的の港に到着した。
この世と思えぬ程、煌びやかで人がごった返しているな。ここに来た醍醐味やし、なんとも言えん嬉しさがあるな。
ここまで繁盛しているとは思ってなかったな。船が思ったよりデカいなー。
正に、真実は小説より奇なりである。
母から頼まれた事を一瞬忘れそうになっとった。危ない危ない。お祭りのようで、ハイテンションになってたわ。忘れんように一番初めに用を済ませ巡ることにしよう。
ん?突如港全体が有名人が来たの如く盛り上がっているな。そこにいるんやな!行こう!人が集まってる所は苦手やけど、行くしかない。それは誰や?かの有名な御仁じゃないか。
うっそ、予想外やわ。確かにあの御仁であるはずやけど想像しているのとは違うな。
あの御仁のチャームポイントであるあの格好していないやん。なんとちゃんとした服装をしてるやんか。うつけを小さい頃からしてると思ってたわ。
この頃の御仁はまだ十歳に満たない幼子であること忘れてたわ。あどけなさが中々かわいかったというのは伏せておくとして、これからあの格好へ変身していくんやな〜。その証拠にうつけの片鱗は存分に見せ始めているな。
-おい、このものはなにであるか?
-これとてもうまそうだ。ひとつくれ。
-うむ、うまい!
と、好奇心旺盛で知識を習得しているようだ。周りの人達に、
「食べる時は、座ってでお願いしまする!」
「勝手に行ってはなりませぬ!」
と注意されているが、どこ吹く風である。むしろ、御仁は楽しそうに商人や街行く人と喋ったり遊んだりしていた。それに対して商人達は微笑ましそうに笑っていた。
合点が行った!あの御仁の原点が!
あの御仁は小さい頃から商人など庶民の人達と触れ合っていたからこそ、様々な人に慕われ、天下寸前まで行ったと。そして、明治になっても、地元の人達から人気があるはずだと。
うわーええなぁ〜!この時代に来た特権や!ん?日が傾きかけているやん!このまま観察したかったが、さすがにまだこの時代に慣れていないから暗がりを歩くのはさすがに怖いな。帰路につくことにしよう。
あの御仁について行きたいな。でも、よく考えてみると、小さい体やでまだ無理があるわ!それ以前に、勉強は一通りできるけどこの時代の学がないと色々ときついな。
あ、そうだこれでいけるな。しかし、あくまで奇策だ。いけるかは分からんけど、やるしかない。
「よし!これからは俺の人生の大博打の始まりや!」
指摘があるかもしれないのでここで説明します!
南蛮貿易についてです。鉄砲が来てから発展したと書いてある書物が多いですが、ここではそれ以前から次第に発展しつつあったとします。
これからもよろしくお願いしますm(__)m