第二十一話
早めの時間のUPです!
「よーし、俺がこの石垣普請の頭となった木下藤吉郎だ。よろしくお願いします!」
ここでの挨拶が明暗を分けるといっても過言ではない事は間違いない。が、今までの普請で全員が疲れ果てて、目が死んでいるように見える。こういう時は、ちゃんと寝かすことが必要だな。しかし、期限は十日だ。もたもたしては足りるものも足りなくなる。
幸い資材は前任者のが残っているので、ありがたく使わせてもらおう。これだけでも俺の負担は減る。
「お前たち、出身の所別に組になって集まってほしい!」
この手は俺にとっては使い古された手だ。商人時代にもやってた事だからな。前世では適当に分けて作業をはじめても問題はなかったが、戦国時代である今水利問題で揉めている所が大いにあるので纏まらないのも当然である。素早く作業を終えたい時にこの問題は邪魔になる。
お!なんか、丁度十組で各百人前後で偶然集まったよ。こんな奇跡ありえん。めっちゃやりやすい。たすかるわ!
「お前たちの組の中で頭を決めて、その頭は早くこっちに来て!作業説明をするからな!」
作業説明といっても単純なことを話すだけだ。石積みの職人さんに石垣のことを任せるだけで、後は人事配備をするのみに絞ればなんてこと無い。その間に石垣の勉強をさせてもらおうか。いくら城の知識があろうとも生の声を聞かなければインプットはできてもアウトプットはできない。
だけどな、ざわざわとしているだけで、決まるのが遅い。今の時点では信頼もクソもないので疑心暗鬼に陥っているのに違いはないな。今までの頭が、言っては悪いけど、あらゆる部分でやりすぎたからな。
「なあ、木下よ。今から何をするつもりか?出身別に分けるという創意は見事だと得心した。その次を楽しみにしているのだが。」
丹羽様が理解を示してくれたのは嬉しい。まあ、それは商人時代でやってきたことだから既に知己であると思うけどね。それに、その次に繋がるものが無ければ創意を出してもただの宝の持ち腐れだ。その次か…、なんて言おうかな。
「即ち『欲』ですよ!」
「欲か…。それはどこから引き出そうと思っておる?」
さすがはあの信長様に使えている丹羽様だ。一言言っただけで理解している。
「大変、丹羽様には申し訳にくいことですが、お力をお貸しください!これが無ければ全てが成り立たなくなります。」
「申してみよ!」
「お金、いや銅銭五百枚を借銭してくれると嬉しいのですが。」
これはさすがに無理かな?
こんな大金貸してくれるわけない。いくら丹羽様でも勘定方から貰い受けるのはな〜。薪のやつで勘定の難しさ知ったし。
丹羽様の眉間にシワが寄って難しい顔をしている。
「丹羽様、無理には言いません。難しそうであれば領内駆けずり回ってでも集めて、この普請を成功させてみせます!素晴らしい城にしてみせます!この木下にご期待ください!」
ここ戦国時代に来て、何回目になるか分からない土下座だ。もう百回は軽く超えているだろう。俺はどうせ武士の方から見たらどこの骨か分からん下賎の身だ。これも仕方がない。
「頼んでみよう!任せておけ!」
え!マジでか!まさかやってくれるとは!
「ありがとうございます!この普請、何が何でも、俺の頭に石が振ろうとも、槍が刺さろうとも、必ずややり遂げてみせます!」
この嬉しさに思わず笑顔になってしまった。少し安堵した。万が一借款してくれなかったら、どん詰まりだった。昔から貯めたお金では到底足りない。いわゆる、捨て身の方策だ。
「待っておけ!すぐにでも勘定方から引き出してみよう。」
と言ってから、城の方へ行ったな。これにはもう丹羽様には頭が上がらんな。
こうしている間に、全組の頭が集まったようだな。
「よーし!お前たち!耳のクソをかっぽじってよく聞け!いいか。まず、組の中で二手に分れろ。そして、どちらかが寝てください。つまりは、昼間組と夜間組に分けて作業をするということです!そしたら寝る時間はあり、体の力が漲って早く終わらせることができます!」
そして石積みの職人さんの配置だな。
「石積みの職人さんには既に話は通してあるので、配置された職人さんと仲良くしてください!」
話とは簡単なものだ。たった一つ言っただけだ。
先に言ったように専門家でもないので、下手に出しゃばることはできない。
だから、
隣をよく見て石を積むことを心がけること。
を守ることを約束した。
そうしているうちにも丹羽様は両手に袋を抱えて戻って来た。
「丹羽様ありがとうございます!」
丹羽様の顔を見たが、ちょっと疲れがある。交渉尽力してくれたんだな。嬉しいわ!勘定方は頑固者が多いからな。
さてと、
「全員聞いてほしい!ここにいる丹羽様はお前たちに何ができるかと、ここに来てからずっとお考えであった。だから、俺は提案した。この普請を一番に終わった組はお金をもらうことができるということだ。そして、丹羽様の両手に袋を抱えている。ということは…」
「「「おーーー!」」」
察したのかめっちゃ盛り上がっている!良いぞ!
「だが、作業している時に悪さをしようとした時点で、例え一番になったとしても、お金をもらえる資格は無くなるからな!ここに鬼よりも怖いと言われる俺の友人、源七を呼んでいる。だから、早く丁寧に励んでください!」
「「「はい!」」」
これで始まった石垣普請、うまくいくかは俺にかかっている。隣にいる源七は先の言葉で拗ねているが、やってくれる奴だ。そして、この場にはもう一人呼んであるんだけどね。
ここが真也の最初のターニングポイントと言えるでしょう。是非とも頑張ってほしいものです。
今日も読んで頂きありがとうございますm(__)m