第十二話
UPしました!
明くる日、大事件が起こった。
俺にとって理不尽極まりない冤罪に近い事件であったが、弁明する暇もなく広まってしまった。信頼してくれる人はいるはいるんだけど、それは武士ではない。
「何で?ちゃんと仕事を周りの小者より倍以上やってたのにな〜!もう何が何だがわからん!」
そう、俺はきちんと詰めることは詰めたり、他の小者がやりやすいように整備したりと、陰ながらであるがやることはやってきた筈だった。この国は貧しいながらもいきいきとした所が好きなのにな。親しくなればなるほど厚かましく、おやつに野菜をくれたこともある。
ため息出そうになるわ。また繰り返すのか…。寺と同じことを。寺では同じ小僧の嫉妬が凄まじく、理解者はいたが厄介払いが如く小者として出された。実にくだらない。
城主様の家臣が俺に向かって慌てて走ってきた。その手には文が握られている。
「読め!」
それは城主様からの文だった。
そこには…、
<先の騒動について
お主藤吉郎がきちんと仕事をこなしている 姿は見てきた。その折、斯様な事が起きて残念である。詮議の場を設けようと思うので、奥と表の間にある小部屋に酉の初刻に来い。>
と書かれており、所々優しさがにじみ出ていて涙が出そうだ。よかった!特に小部屋というのはありがたい。小部屋は余り人が通らず、一部の人の間では幽霊の噂が出たほどだ。実は、その部屋は城主様の謀略の場として使われたこともあるから油断ならないけどね。だけどもひとまずは安心だ。
「城主様も考えたんやろうな…」
一応謹慎(?)処分が出ていたので、部屋に引きこもっていたのであるが、そろそろ時間になったようだ。月が出てきた。
あたりには日中の喧騒も嘘のように静まり返り、なんだか視線が痛い。影で見ているようだ。
この異様な状況になぜが度胸が据わっていた。わからないが、まぁどんな罰でも受け入れよう。そして包み隠さず素直に言おう。どうなっても良い。
「お主、面を上げよ。」
「ははー!」
「そんな力まず、楽な姿勢で良い。形は詮議といったところだが、実際は違う。」
「どういう事ですか?」
「小者でありながら、様々な事を考え行動してきたのはちゃんと分かっている。時には泥を被ってでもやってくれた事もある。だからだ。」
とりあえず怒られることもないので安心だ。しかし、ここまでやな。働けるのは。やはり、出奔せなあかんのは定めかもしれんな。史実でもそうだ。
「今、お主には賄賂の嫌疑がかけられている。わしも調べてみたのだが、悪いことは一切合切見つからなかった。良い機会だ。この機に見聞を広める為にも出奔せ。お主の為だ。」
「分かりました。ここまで俺を育てていただきありがとうございます。明日明朝出て行きます!」
俺が領主様に拾われてから六年の時が過ぎた。幸い領主様や城主様に贅沢ながら良くしてもらった。感謝してもしきれないくらいだ。出身国や出自がかなり危ういものにも関わらず信頼してくれた。特に出身国がやばい。側から見たら間者だと思われても仕方がないものだ。その点から見て、上に立つものとしての教義を教えてもらった気がする。
「下がれ!」
「はっ!」
この日が最後か。スキャンダルでというのが少し恥ずかしい。自分の身を自分で守るではないけど、そうならないための担保を用意すればよかったと後悔とともにとても勉強になったな。
「たくさんの事を押し付けるだけではあかんな。もっと人を巻き込まんとね。」
これからは何の後ろ盾もなく過ごしていく事となる。今日までは度重なる幸運によって今の地位を手に入れてきたが、自力で這い上がるしかなくなった。これが戦国時代の醍醐味だと思う人はいると思うけど、中々難しいんだよね。大抵の人は優秀であれば小者として雇ってくれるが、そこ止まりだ。その線引きははっきりしている。どこでもそうだ。駿河や遠江の仲良くなった小者仲間もそうであった。その上は高嶺の花に近い。何とかしてその道筋をつけなければならない。
この国と故郷の国との抗争が小康状態である今、帰るには良い機会だ。これからのことは故郷を見てから判断した方が良い。そんで、そのニーズに応えつつ目立っていけば必ずあの御仁は食いついてくる筈だ。
なんとかなる!
「まぁ、最大の理由としては、村に帰ることにあるんだけどね。どうしているかな?かかや姉さんや弟。それに…」
ここからが試練ですね^_^
神様は乗り越えられない試練は与えないとも言いますしね!