第十一話
UPしました!
支城に移ってから俺にとって有意義な暮らしを送っている。相も変らず、姑息ないじめを受けているが、もう慣れたもんだ。ほっとけば良い。仕事を真摯に取り組み周りに還元できれば問題無い。
「これお願いいたします!これをする事によって、効率が良くなります!」
「うむ、相わかった。」
「ありがとうございます!」
商人との交渉で丁度良い妥協点で終わった。ふー。
商人といえば…、異動する時は大変だったね。ちょっとした騒動になってしまった。というのは、簡潔に説明すると俺と一緒に行きたいと言い出したのだ。今まで領地の活性化の為になるのなら何でもやってきたが、巡りに巡ってこれか。領主様に警戒されたくないんだよな。これは迂闊だった。よく考えてみると、異動するのはこれも理由の一つだと、この時思ったけどね。俺は思い留めて欲しいので話し合いをし、月一に伺うという事で得心してくれた。今している仕事はその月一の伺いだ。無事に終わって何より。
久しぶりの懐かしい空気に浸ってたかったけど…。
「そう言えば、明日城主様と駿府へ向かわないと行けなかったんだ!その準備もしないといけないから、早く帰らな!」
よーし、現代人ならではや!
走ろう!
あ、最近俺は領民から『鼠猿』と呼ばれている。このすばしっこい走りにこの面を合わせただけの簡単な名前だ。聞いた時は苦笑だったよ。
それは置いといて、
実は、上司である城主様は領主様にとても信頼されている重臣の一人で外交担当者だ。俺は度々城主様の荷物持ちとして駿府や遠江の国衆の所へ行ったことがある。その中で、特に、駿府はこれまで見たこともない様な華やかさで、思わず興奮してしまったな。
「また、行くんだな!今度は区画とか見て、勉強しないとね!」
「何〜?独り言を言っている?城主様がお呼びだ。さっさとせい!」
もう、城に着いたんか。明日のことでいっぱいになってたわ!あかんな!浮かれている場合ではない。
「すみません!直ぐ行きます!」
城主様、また与太話を考えろですか?俺としては既にネタが尽きつつあるやけど…。どないしたらいいんやろうか?城主様という方は大変愉快な方なので、俺の能力を測る様に無理難題を押し付けてくる。これって小者の仕事ではないやんと、突っ込みたくなるが、我慢我慢。あの御仁に仕えるための訓練だと思おう。城主様にとって、俺は娯楽同然だな。
まあ、これでいこう!
「おー、来たか。面を上げよ!」
「ははー!」
「こんな、畏まらんでも良い。ここに来て、三年経ったか?」
「はい、そうですね。」
「うむ。お主は今までの小者よりも出来は良い。出来は良いが、他の小者に妬まれようともここまでする?」
お!今までに無い質問だ。どうしよう。下手に言うと殺されるしな。一見穏やかだが、案外、この城主様は流石外交担当者だと思わせる眼力と鋭いものがある。仕方がない!一か八かや!
「その事に関しては、領主様にも言いましたが、一人でも多くの人が笑顔になればと思ったからです。小者が丁寧に仕事をする事によって、城主様の御家臣が仕事をしやすくなります。そして、そのしやすい事でより士気が高まり、心の余裕ができます。そうする事によって、領民に掛ける時間が増え、終いには…」
「もう良い。お主の考え分かった。そこまで考えているとは思ってなかったわ。疑っていたからな。それは晴れた。明日、来い。」
「はい、分かりました!」
あぶな!疑われてたんか!
とにかく、晴れてよかった。地味にしてようと最初は思ってたんだけど、元気の無い人を見つけてしまうと手を差し伸べたくなる。戦国時代の人に言わせれば甘いけれど、それはあかん事なんかな?これは永遠の課題だと思う。この時代においても、元の時代においても。
その問いに答えられる日は来るのかな。
後日…
うわー!流石だな〜。駿府は東の京と言われるのがわかる様だ。歴史の教科書に載ってた平安京のミニチュア版や!区画を整備するだけでもこんなにも違う事改めて思った。これは、京から公家を呼べるわけだ。たまにそれらしい人達を見かけるけど、戦国の世に逆行しているかの様な振る舞いだ。少し派手すぎる。
そう思うと故郷の城下はまだまだだな。それからも国力の差が分かる。あの御仁よく勝てたもんだな。
「まあ、先の事だけど、そのためにも吸収しよう!損はない!」
思ったんだけど、あの有名な今川仮名目録も見てみたいな。武家の決まり事として領民を納める者としての心構えがしっかりと書かれているからな。その時代に書かれたものとしてはかなり優秀だ。しかし、その目録は機密にされている節があるしな。
今回は初めて俺に自由時間を与えられた。お金はあるので、心行くまで楽しもうとするか。
読んで頂きありがとうございますm(__)m
真也は今の大河は女城主井伊直虎が主役なんだなと分かってますが、始まる前に戦国時代に来たので全く見ていません。