第九話
UPしました!
俺を始め下々の者は無事に年を越せるかなと思っていた矢先にとんでもない噂が飛び込んで来た。
それは、
織田が近々総攻撃を仕掛ける
という事である。
戦はすぐには無いとしても、まぁついに来たか。小者生活をしてから年を二回目を越そうとしている。つまり、こういうことであろう。
小者になってから様々な出来事が起きた。敵対していた勢力の城を落としたり、家臣に裏切られて息子を敵方に奪われたりとしたっかもんじゃ混乱していたが、こちらが次第に優位になっていたな。そうしているうちに宗主様の手が伸び影響力が大きくなっていたのであるがな。
その手腕に正直宗主様に対してゾッとしたし、何よりもその側近が何よりも恐ろしい。この国なんか宗主様の奴隷のようなものだ。
戦が起きるとなれば、俺は荷駄の手伝いをされられている。まだまだ小さく戦に行くことはできないので、主に贔屓にしている商人や領内の庄屋との掛け合いが仕事だ。この時ほど仲良くしておいてよかったと思ったことはない。
そして、いつものように、
「戦が起きると噂がたっているが、いつものようにお願いします!」
「戦が起こるとしても卯月か皐月あたりとなるでしょうから、その時に。」
「それまではいつものように読み聞かせをしていこうと思います!」
と、いざ戦になってもいいように素早く荷駄を手配できるように調整したり時には忖度したりしよう。今、できることは何かと考えようか。ここで動いていて、戦に出られない分貢献しようか。よし、仕事が始まるのはまだ先やな。
が、その時であった。
領主様からの命令書が届いたのだ。
え?今、商人との交渉順調に進んでいたのに。なになに…、
<此度の戦に荷駄隊の伍長として従軍せよ>
そう命令書に書かれていた。
マジか。ついに戦に出ることになったのか。寺でやっていた鍛錬を毎日欠かさずやってたが心配だ。足手纏いならんやろうか。
心臓がバクバクとなって止まらんわ。それもそうだ。いくら戦国時代に馴染んだからといって、平和ボケの性根は変わらない。実戦部隊に配属されなかったのは幸いであるが、荷駄隊は全軍における命綱であるため狙われる確率が大いにあることは間違いないな。
荷駄の伍長としての仕事内容よく分からん。前世では小説などで書いてあったが、所詮は空想だ。だから、先輩から学ぶこととしよう。しかし、所詮は小者だ。侮られないようにしっかりと任務を遂行しよう。人生は勉強だ。
現実はなかなか上手くはいかない非常に非情である。
今日の仕事を素早く終わらした時、
ぶっちゃ
突然天から糞尿をぶち撒けられたのだ。今までは殴る蹴るの暴力が主なリンチであり、このようなことは初めてだ。リンチをされても、決して弱音を吐かず黙々と、他の小者を刺激せずに過ごして来た。
俺の処遇ー小者でありながら伍長になったことをうらんでるんやろうな。仕事を真面目にやっていくことが出世に繋がるのにと、哀れみの気持ちにもとうの昔になっていたが、どうしようもないな。どうしたらいいかな。
この場を落ち着かせるために言おう。
「今日は何の仕事をしたらいいですか?いくらでも承りますが。」
その時である。
「おい!お主ら何をしている?」
領主様が声をかけてきたのである。
「「「領主様、今日もご苦労様です!」」」
「藤吉郎がまたヘマをしましたので、教えていたのです!」
「小者としての心構えを再び叩き込んでいました!」
などと有る事無い事言っていた。しかし、ついに雷が落ちた。
「この馬鹿者が!!この一部始終を見とったわ!何をしらを切ろうとしている?」
「誰かある!」
真也以外の小者をお縄にしたのだ。急な出来事に何にもできないのはこのことか。唖然としてしまったわ。
領主様は俺にこう言った。
「お主の働きは目を見張るものがある。ありがたいと思っている。だからこそ、今回の戦に形式上伍長としての仕事を与え、それを儂に最大限できる御恩としたのだが…」
うわー、小者ごときにこんなに目をかけてくれていたとは。そう思うとなんだか涙が出てきたわ。
「ありがとうございます!ありがとうございます!」
何度も言った。
今までの努力が少し報われ、感無量な心地に浸るしかないわ。
「此度のことが起きないように、戦の後は此の城の支城であるここに移ってほしい!決して左遷ではない。お主のことを考えてのことだと心得てほしい!」
「はい!」
決まった時は大変やったけど、無事に初陣を迎えたな。
「ワクワクしてきたわ!!」
いつもどこでも殴る蹴るのリンチを受けている真也ですが、報われる時が来るのだろうか…