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「私は千鶴を恋愛の対象として見たことはなかったよ」
真顔で当然のように話す冬樹に声をかけることのできる猛者など存在しなかった。
ひどく顔を歪めている千鶴に同情することすら憚られるほど。
一同は思った。
いい話っぽかったがそもそも冬樹の恋愛対象はおっさんだった、と。
「...だが、まあしかし」
そんな千鶴と一同の様子に気がついているのかいないのか、冬樹は変わらぬ表情で考えるように口を開ける。
「人はいつかは年を取る。千鶴となら、オッサンになるまで一緒にいても後悔はしないだろう。」
そういって晴れやかな顔をした冬樹は千鶴を笑う。
「しかし、なんだ。私も他人のことを言えない趣味ではあると思っていたが、千鶴も中々だな!」
脳内でそれぞれのエンディングテーマが流れそうになったところで、またもやよくわからないことを言う冬樹。
終わりっぽかった。絶望からのハッピーエンドって感じでまとまりそうだった。
千鶴も冬樹の一緒にいても後悔はしない宣言で、瞳を潤ませるほど感極まっていた。
微妙な空気のなか、冬樹以外の全員が頭上に疑問符を浮かべて固まっている。
「まさか、千鶴が妹好きとはな...私と血が繋がっていなくてよかったな?」
「...なんか違う」
呻くようにきつく目を閉じて呟く千鶴の生命力はもはや無い。
無垢な表情で口を開く冬樹に突っ込む気力のあるものなど残っておらず。
「...もうなんでもいい...冬樹、好きだ。末長く付き合おう」
「おう、先は長いな。千鶴の成長が実に楽しみだ」
なんとも適当な感じで付き合うことが決定した2人なのであった。
その日学校中の誰もが思った。
2人に普通の青春を望むのはまず無理だろう、と。
しかし、本当に大変なのはこれからだったのはこの時誰もが想像していなかった。
千鶴の最大のライバルは父、治美。
男性陣はこれからもよくわからない気苦労をしていくとかいかないとか...
彼らの行く末に幸あれーー