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「ふっ、冬樹はいつもそう言うな」


目の前で呆れたように、微笑ましそうに私を眺めるこいつは東藤千鶴。

ちなみに言うなら、私も名字は東藤だ。


「まあ実際、そう思ってるし」


そんな千鶴に肩をすくめる私は、東藤冬樹。

学校中に知れ渡っている私たちの関係、それは兄弟だということ。


大袈裟にいってはみたものの、特に変わった関係ではない。

強いて言うなら、血が繋がっていないということくらいか...


別段仲が悪いわけでもなく、かといって常に一緒に居るわけでもないが、中々に楽しく良好な関係を築けていると思う。


「ま、冬樹の初恋が親父って言うくらいだもんな。今更か...」


そう、今更。

私の初恋は千鶴のお父さん、現私の父でもある治美〈ハルミ〉さんだ。

かっこいい。もはや今も好いているかもしれない。あの渋さ、あの紳士っぷり、大人な対応。

何を隠そう私はそう、


「私がオジサマ好きなことくらいは誰もが知っていることだろう?」


「...はぁ、昔っからだもんなぁ」


私が今の東藤家に引き取られたのが五歳の時だから、千鶴とも長い付き合いだ。

私が年上好きということは別に隠してもいないので、千鶴どころか、治美さんの奥さんである明さんも知っている。治美さんが好きなので第二夫人にしてくださいってお願いした現場にもいたはずだ。

因みに明姉さんはあらあら~とのほほんとした笑みを浮かべているだけで、一人あたふたしている治美さんが凄くかわいか...可哀想だったことはよく覚えている。


「うん、このままいけば千鶴はきっといいオジサマになれると思うよ」


心のままに本音を言うと、苦虫を噛み潰したような複雑な顔をしながらそっぽを向く千鶴。

昔は無邪気に喜んでいたけど、千鶴もそろそろ反抗期なのかな。


「嬉しいような嬉しくないような...はぁ」


最近千鶴のため息が増えてきたように思う。

千鶴の妹として(といっても数ヵ月しか離れていないが)悩みを聞いてあげるべきなのだろうか?


「千鶴の悩みはなんだい?」


遠回しに聞いても伝わらないだろうと思い直球で聞いたのに、私の言葉を聞いた千鶴は力尽きたかのように項垂れた。


「お前は...はぁ。俺の悩みは昔から変わんねぇよ」


「...そうか」


しかし、千鶴の悩みは何も千鶴に限った話ではなく、むしろ東藤家全員に共通しているものなのではないかと思うのだけど。しかも私はあまりコンプレックスを感じたこともないので相談には乗れない。


「千鶴の名前は、千鶴が思うほど女の子らしくはないと思うぞ?」


「...はぁ、もうそれでいいや」


精一杯のフォローにも千鶴諦めたようにため息をつくだけだった。


「私は千鶴の名前、好きだがな...」


思ったままにそういうと、千鶴はしばし固まって頭を抱えてため息をついた。

やはり私には千鶴の悩みを解決することはできないらしい。





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