秩序の盟主マリアと混沌の盟主ナルア
「わたしはマリア、遍く秩序を現出するため降臨しました」
「わたし? ナルアって言うんだけど?」
「ふふふ、世界は、無限に混沌とする為に存在している。
でも、絶滅してはいけない、私達は絶無とは違うから。
希望の無いところには、私達も絶望もないのだからね。
人々には出来る限り最大限、無上に絶望してもらわなきゃいけない、してもらうつもり。
その為に、希望は多くてもいい、最終的に絶望の底の底に叩き落とし潰すためには、必要な要素よ。
だから、秩序の勢力はただ邪魔者、というわけでもない。
利用価値のある一つの大きな、私達と同程度の価値ある勢力とも言える」
「この世界? 大概において気持ち悪いですね、吐き気がします。
だから、絶対に救ってあげないといけません。
世界とはわたし自身です、掛け値なしで、わたしはそう直感しますからね」
「奴も、所詮は破綻した存在、死に場所を求めるように、刹那的に生きているんだよ。
ただ己の悦楽と快楽の方向性が、わたしと真逆なだけの、人でない、人間にとっては善い神なんだろう」
「下らない話、一考に付す価値もありません。
見ず知らずの人を救うのに、命を賭けることに、理由がいりますか?
秩序とは、全体の為に、己という一部を100%全て捨てきる事。
そして己が全体の一部として、全体から絶対的な影響力と強制力を受けること。
私は遍く秩序と同価の存在、だからこそ、秩序を最大限現出させることに、一切の戸惑いを持ちません」
「美的感覚が違うのだろう、私は混沌を愛する、ただそれだけだ。
人は死ねばいいし、不幸になり、恵まれない状況で抗い苦しみ、、、。
最後は悲しみに痛みにのた打ち回り、絶望の果てに救われないまま非業の死を遂げるのが最高だろう? そうだろう?」
「彼女は不幸を喜びにするのです、逆に幸福には不快を感じるように、そう出来ている。
わたしは当然、幸福を無上の喜びとします。
この世界に存在する一切の不幸なんて、この世のどこにも無くなればいい、そう本気で想ってますから」
「奴を不幸に落とすためにも、この世は人々の絶望に溢れるべきだろう。
もちろん、混沌とした世界では、数多の絶対的に比する力の集約点、英雄や勇者や聖女など
奴らの秩序の力も飛躍的に高まるだろうがな。
まあ、それでもいいだろう、どのみち秩序が高まった分、こちらだって同じこと」
「でも、本当に、真に救われるべきは、彼らこそです、
その信念は、こんな最悪の最悪に満ちた今でも、絶対の変更の余地がありません。
彼らが世界を愛してくれたら、どれだけ素晴らしいか、わたしには想像する事もできません。
魔王も魔女も愚者の軍勢も、消滅させたくありません。
必ず生きたまま更生させます。
それこそが真なる秩序だと、手にし得る究極の勝利であり希望だと、思いませんか?
例えそれが、致命的な隙を晒すことに繋がっても、最後の本当の最後まで、私は希望を捨てませんからね。
ただ言えるのは、、、わたしはその為に生まれてきた、そんな気が、ずっとずっと昔から確信の領域でするのです」
「嫉妬? ふっ、なにを今更、確かにそれもある。
あのような究極の、それこそ幸福とイコールな存在に、およそソレを抱かない存在は皆無だろ。
そして、わたしは不幸だ、ならば、する事は一つしかない、違うか?」