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プロローグ

ファンタジーは勝手が分かりませんね。

「…え?」

なんだこれは。思考が一瞬停止する程の衝撃だった。

「……へ?」

御垣ゼイは、困惑していた。

目の前に美少女がいる。とびきりの美少女だ。目鼻立ちはすらっと整っており、それでいながら『剥き出しの』肢体は小さく収まっていて、清潔そうな白い下着がとても似合っている。小さな美人、といった風格だ。

彼女の化粧台だろうか…そこには、華美ではないが綺麗なティアラが置かれ、数々の化粧品も並んでいる。かなりの身分だな、とゼイは思った。

そのくりくりとした目が、ゆっくりとゼイを捉える。ゼイという男が目の前に居るのにも関わらず、彼女は右手を上げ、白い下着に包まれた身体を隠すわけでもなく、あんぐりと開けた…それでもまだ小さいが…口に当てた。

「蒼の…使い?」

その声が聞こえるかどうかの刹那、ゼイは背後にあったドアを叩くように開け、部屋を出る。

しん、と部屋が静寂に包まれる。

「…本当なのですか、お父様」

赤毛の少女が、ポツリと呟く。

彼女の右手には、青い石がはめられた指輪が光っていた。




「死ぬかと思った…」

御垣ゼイは、酒場のカウンターでため息をついた。

彼は今、赤いTシャツに黒ズボンという服装の上から適当に拾ったマントを羽織り、追っ手の目をまぬがれていた。学ランは腰に巻きつけており、少々暑苦しいが我慢するしかない、とゼイは腹をくくった。

いきなり王女らしき人の目の前に現れ、そこから無言で逃走したのだ。当然護衛の兵士には気付かれたし、メイドにも気付かれたし、門番の兵士にも気付かれた。そこから追ってきた兵士の目を眩ます為に、急場凌ぎでこんな奇抜な格好になるしか無かったのだ、と心の中で言い訳をした。

「なんだい若造、長旅で疲れたか?」

浅黒い肌をした店主とおぼしき人物が、コップを片手に笑いかけてくる。

「あー…そんなとこだ」

店主から水を貰い、それを一気に飲み干す。

「長旅だった…本当に」

精神的な意味で、とは言わない。

「しかし珍しいな、こんな時にわざわざ旅とはね」

「こんな時、とは?」

隣に座っていた、赤ら顔の男が話しかけてくる。それに疑問を投げかけるゼイ。

「だってよ、まさに戦争になりそうだっていうのに、よく来るもんだよ」

「戦争!?」

「おー、この国が蹂躙されんのよー…」

酔っているのか、イマイチ要領を得ない男の話にゼイが混乱していると、代わりに店主が答える。

「…ウチの国が、他の国に戦争をしかけようとしてるって難癖を付けられているのさ。大陸一ひ弱な国を、海、森、砂、白の四ヶ国で袋叩きにしようって魂胆だ」

「…」

ゼイは押し黙る。

「んで、当然ウチの国王は戦争を回避しようとした。そしたらよ、あいつら四ヶ国は下衆な条件を提示してきた」

「下衆?」

ああ、と店主が頷く。

「まず、この国を四ヶ国の属国にすること。国を四分割して、それぞれの支配下に収めるのかね」

二本指を立て、その内の一本を折り曲げる店主。

「…もう一つの条件は?」

ゼイの目の中で、立てられた一本の指が揺れた。

「国王の一人娘であるラフィリア様を、森の国の王子と結婚させること」

「…政略結婚か」

「国王のお考えは良く分からない。だが、おそらくは…森の国と親密になれば、大陸一の軍隊の味方になれるかもしれない…って話なんだろうな」

「中々に難儀な話だな」

水を飲み干し、店主にお代わりを頼む。「ついでに、何か一品作ってくれ」と頼むと、店主は店の奥にある厨房に引っ込んだ。

「…そうか」

酒場の喧騒の中で、ゼイは呟く。

「…イラつく話だ」

ポケットに入っていた銀貨をいくつかカウンターに置き、ゼイはその場を立ち去った。

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