自由奔放
《あー、ついに捕まりましたか。こりゃ死刑確定ですなあ? 岩崎さん》
《そうですね。ですが死刑執行まで7年はかかっているのが現実ですから》
くだらねえ。
さっさとハンコ押してやるっての。
同じ映像を繰り返し垂れ流しているニュース番組に、俺は飽き飽きしていた。リモコンを手に取り、テレビの電源をオフ。
「おっけー、節電完了」
さて、本でも読むか……って全部読んじまったよ。図書館に借りに行くのも面倒だ。できれば動きたくない。最近外へ出るのが億劫になっている。老化のせいか。
「よしっ」
昼寝しよう。金も労力もいらない。こんな素晴らしい暇の潰し方があるだろうか。
目を閉じ椅子の背もたれに体を預けると、すぐに眠気がやってきた。引きずり込まれるように夢の中へ落ちていく。意識が完全に現実から切り離される、その時だった。
「大臣!」
「……ん、仙堂か」
おお、危ない。一度寝ると2時間は起きられないんだよな、俺。
目を擦り、部屋に飛び込んできた男を見上げる。仙堂拓馬、俺の横暴に唯一音をあげなかった秘書官。彼は若干息を切らしつつ、それでも正確に用件を述べた。
「日東新聞の記者が、大臣に取材を申し出ているようです」
「なんだ、そんな事か。お前の方で適当に対応してくれ……」
「それが1ヶ月間の密着取材で、どうしても本人でないと駄目だと」
ああ、なるほど。にしても俺に密着取材とか、命知らずにも程があるな。
だが。
「わかった。会うだけ会ってみよう」
おもしろい。久々に暴れ回ってやろうか。
俺は意気揚々と部屋――大臣室を後にした。