はじまりのはじまりのおわり
【そしてはじまり】
しばらくして、夕暮れに染まりきった校舎から二人の影が出てきた。
よく見てみると、手の辺りが合わさっている。
「カラスマったらまだ顔真っ赤っか~。」
「ユキノが手を繋ぎたいとか言うからだ。」
「あっははは。わがまま聞いてくれてありがと!」
「あいよ。ま、俺も嬉しいしな。」
「……私まで恥ずかしくなってきたじゃない。」
「俺だけ恥ずかしがらせようっていうのが間違いなんだよ。」
「ふーんだ。ねぇ、そろそろ名前で呼んでくれて
もいいんじゃない?」
「今更呼びにくい。」
「ク・ロ・キ君。私の名前はなーに?」
「上目遣いはやめろ。んんっ、その、ウサミ。」
「えへへー。ウミじゃなくてあの時の愛称で呼んでくれるなんて嬉しい。」
「気恥ずかしいから使ってなかっただけだ。」
「これでやっと、何となく感じてた壁が無くなった気がする。」
「そんなの作ってないぞ。」
「そう感じるときがあるのー。私はずっと名前で呼んでたのにさ、カラスマひどい。」
「そう言われても良く分からん。でも、あんな昔の事覚えてたんだな。もう忘れてると思ってた。」
「忘れられるわけがないじゃない。あの時カラスマがくれた言葉が、今の私を作ってるんだもの。」
「くさいセリフだぜ。」
「んもう、何それ。雰囲気ぶち壊し。」
「俺は、ウサミと偶然会った時からずっと好きだった。だから、次見かけたら気づいてもらえるように、会った時につけてたイヤーカフスをずっとしてるんだよ。」
「いっ、いきなりね。どっちがクサいのよ。」
「お返し。」
「むぅ。私も大好きだよ、カラスマ。」
寂しがり屋の雪うさぎは、いつも一緒に居てくれる黒からすを見つけて幸せのようだ。