第4話「襲撃」
今回は調停者の竜様の視点です。
名前?彼女は今のところMOBキャラなんだ。。。
キャラ設定が少しあるだけのただのMOB。
いつか・・・いつか彼女にもスポットが当たる日が!!
視界に標的を捉えた。
距離にして約200メートル。
私はそれを観察する。
腰まで延びた白い髪、ただ一人防具を一切つけず黒い軍服を着ている。そして・・・彼の腰にかかる禍々しいと言う言葉では足りないくらいに穢れた剣。
聞いていた特長に合致している。
10年ほど前から世界の理を乱す実験を行っている男。
これまで多くの獣人を送り込むも戻ってきたものは皆無。
「やっと見つけた・・・こんな所に長居はしたくないから・・・、速攻で決めさせてもらうわ。5秒もあれば十分かしら」
私は身に宿した竜としての力を解放する。
5秒。それは今の私が彼を殺すのに必要とするであろう時間。
今、力を解放したのに1秒。
男を殺すため、彼女本来の腕も顕現させるのに2秒。
距離を詰め、切り裂くのに2秒。
加減なしに跳んだのが悪かったのだろう。
私が先ほどまでいた民家は跳んだ際に発生した衝撃派によりあっけなく崩れる。
後5メートル。この男を始末したら残りは獣人に任せてゆっくりと・・・!?
先ほどまで私に気付いた素振りもなかった男がいつの間にかこちらを笑いながらみている。
目が合った・・・気味が悪い。
「ずいぶんお待ちしたんですよ。待ちくたびれてしまったではありませんか。人を焦らすのがお好きなんですか?」
気付かれていた!?
でもそんなことは関係ない、これで終わりなんだから。
超音速のスピードを乗せ放たれる神速の技。
私の持つ最速にして必殺の一撃「竜爪一閃」。
逃れる術はない。
しかし、私の爪が彼をいまにも引き裂こうとした瞬間、男と私の間に小さな影が現れていた。
それは、あろうことか私の一撃を受けとめる。
「なっ、今のを止めるって言うの!?」
私は驚きを隠せない。
それがココに現れるまでソレの接近に私は気付かなかったのだから。
それに”受け止めたられた”・・・という事実。私は久しく感じることなかった感情が湧き上がってくるのが分かった。
受け止められた・・・つまり私の動きに、それも”後出し”で対応できるスピードと実力、そして、同族である竜の鱗をも砕く竜爪の一撃を耐える何か。
最高じゃないか。神、魔との戦い以降出会うことのなかった強敵との遭遇。
私はその強敵の姿を確認すべく距離をとる。
立ち上がった砂埃のせいで容姿は確認できなかったが、それは私の肩ほどしかない小柄な体躯をしている事が分かる。
やがて砂埃も収まってきたころ、なおも余裕を崩さない男と、その男の横に控えるように立つがたいの良い赤黒い鎧の騎士風の男、そして生気の抜けた顔でこちらを見るボロを纏った少年の姿が現れた。
「それで・・・せっかくの楽しみを邪魔するほどの用はなんなのかな、ヴァルトヘルト隊長殿?」
ヴァルトヘルトと呼ばれた騎士風の男は答える。
「ノイラート様、獣人の殲滅完了しました。」
「そんなっ!?」
私の叫びなど聞こえないかの用に彼等は話を続ける。
「そんなことでわざわざ?」
「いえ、本国より一度帰還するようにとの伝令を受けました。どうやらアレの実用化の最終チェックを行うようで、閣下からの直々の命だとか」
「そうですか・・・閣下の命であれば逆らえませんね。」
今回の私の標的であるノイラートと呼ばれた男は私を見やり、声をかける。
「残念ですが、私にはあなたのお相手をする時間は無いようです。変わりに彼を置いていくので勘弁してください。彼は今回の実験の私の最高傑作にして最高欠作。退屈はさせません」
「それを私が許すとでも?その男の言っている事が本当なら獣人の敵も取ってあげないといけないしね」
私は世界に許可されている上限まで竜の力を解放する。
この男を逃がしてはいけない。この男を見てからというもの警鐘が鳴り止まない。生かしていてはならない、存在を許してはならないと本脳が訴えかける。
私は目の前の三人を同時に屠るべく斬りかかる。
先ほどと速さこそ変わらないものの、繰り出す一撃のうむ破壊は圧倒的に違う。
先ほどまでの顕現とは違い、腕のみではあるものの本来の竜としての力を宿す・・・言うなれば召喚。
その一撃は国一つ易々と破壊する力を持つ。
このあたりは焦土になるだろうけど・・・この男を逃してはそれ以上の荒廃が生まれる。
私の一撃は彼らを肉片一つ残さず消し去る。
そのはずだった。
しかし、竜としての本来の力を解放しているはずの私の一撃を軽々と受け止めるものがいた。
うつろな目をした、先ほど私の一撃を止めた少年だ。
「ははは、彼は強いですよ。今回の実験の最高傑作であり、最高欠作なのですから。それでは、後は任せますよ。またあえる事があれば、次は最後まで邪魔されずに楽しみたいものです」
言い残し、ノイラートとヴァルトヘルトが消える。
反応は・・・まだ追える。目の前の少年をすぐに始末さえできればまだ追いつけるか。。。
私は目の前の少年に意識を集中させる。
これで何合目になるか、私は少年と切り結ぶ。
すでに逃げた二人の気配は私の近く範囲から消えている。
彼と戦切り結ぶうちに気付いた事がいくつかある。
一つは、彼が私の攻撃を受け止めるのはその左手のみ。また、受け止めているように見えてはいたが正確にはそうではないようだ。斬った先からすぐに再生され、威力を殺されているという事。
二つ、確定ではないが超再生は左腕だけに適応されているようであること。その証拠に、左腕以外なら普通に斬れる。すでに彼の右手を切り落としてからだいぶ立つのに一行に治る気配は無い。
そして最後に・・・彼に流れる血が私でさえ知らない何かであるということ。ただそれが非常に不安定であることだけは見て取れる。人間の赤い血のはずなのに、呪、精霊の残滓を感じる。
血液から精霊の残滓を感じるなんて魔物くらいしか・・・。
とそこまで考え、私はやっとのこと答えにたどり着く。
「ひどいことするわね。あなたを残していったのもあなたの身体がもう持たないと分かっての事・・・か」
私が呟くと同時に彼の姿がブレ始める。
限界が来たのだろう。
血の結合による力の衝突。その余波による肉体の崩壊。
その身体は形を維持することもできず解けるて消える。
まあ・・・これだけ混ぜられれば短時間とはいえ私に対抗できるか。
私はこの場を後にする。
逃げた二人を探すため。
大体の方角は分かってる。
ある程度近づいたら気配で分かるはずだから問題は・・・ないはず。
「急がないとね」
私はすでに液状化している彼に背を向ける。
と、その時だ。
液状化し、すでに死んでいるはずのソレが動き私を取り込む。
「そっ、そんな。動けるはずが・・・」
振りほどこうとするもすでに遅く、それに触れた部分から私の身体は溶かされていく。
鱗を顕現し、守りを固めようと、そのわずかな隙間から進入し、私を溶かし続ける。
すでに抵抗する力も無い。
徐々に溶かさていく激痛に意識を失うことさえ出来ず、死を迎えるそのときを待つことしか出来ない。
私は約一日をかけて溶かされていった。
その日、私は死んだ。
調停者とは竜の中では一つの役職のようなものです。
現在3柱の調停者が存在します。
調停者である竜が何らかの理由により失われた場合にのみ、別の竜が眠りから覚め、その役割を引き継ぎます。
細かな設定は徐々に明らかに・・・なるといいな。。。