第1.5話
ノ「いつもの小数点ですね」
ア「おとなしく一話にまとめればいいのにね」
ヴァ「作者に多くを期待してはいけません」
俺たちは蒼牙盗賊団。盗賊団と言っても7人だけの小さな集団。
それも結成してから約一年の素人集団。
盗賊団とは名ばかりで、ゴロツキが群れているだけ・・・まあそれが今の俺たちだ。
でも俺たちだっていつまでも素人のままじゃない。
役割分担もフォーメーションも十分に形になってきた。
とはいえ、そんな俺たちがすぐに盗賊団としてやって行けるほど世間は甘くない。
この国はそれなりに治安が良い。10貴族と言われる奴等が各地を管理していて、こいつらがまた強いことこの上ない。
何でも血を濃く受け継いでいる家系で、精霊を俺たちに比べてうまく扱えるんだとか。
それに下手に手を出すと国が動く。
厄介なことこの上ない。
大きな盗賊ならともかく、俺たちなんかじゃ歯が立たない。
護衛も数人しかつけない本当に小さな商隊の襲撃や盗みを繰り返す日々。
そんな時、俺たちにチャンスが舞い降りてきた。
このインハルテ領の端、山脈を境に北の帝国と隣接している小さな村が何かに襲われて壊滅状態だって。
たまたま襲った商隊の男から聞き出した情報だ。
娘を人質にとって問い詰めるとすぐにはきやがった。
男の話では最北にあるその村に月に一度の行商に立ち寄ったところ見るも無残な姿にその形を変えていて
戦々恐々としながらも村に足を踏み入れるとあたり一面に血痕があり急ぎ引き返してきたんだと。
すでに何かに荒らされた後だったんだろう。
しかし町がそこまで荒らされていたってことは俺たちと同じタイプの人間の仕業ではないはずだ。
町ごと荒らしちまったらお宝を回収できなくなっちまうからな。
Sランクか新種の魔物でも現れたか?
まあ、男の話を聞く限り危険はすでになさそうだ。
てなもんだから、俺たちが残されたお宝を頂いちまおうって相成ったわけだ。
どうせ、死人が持っていてもあの世じゃ使えないんだ。
俺たちが有効活用してやろうってんだ。
他の奴等に先を越されてもいけないからな。
俺たちはすぐにその村に向かうことにしたよ。
ああ・・・もちろん商隊からは娘とと馬車を積荷ごと頂いたけどな。
娘は奴隷市でそれなりの値で売れるんだこれが。
一応他の奴等殺しはしなかったんだ、良心的だろ?
何も持っていなくても・・・一番近い村まで生きてたどり着けるかもしれないだろ?
俺はそんな自信ないけどな。
日が数回昇った頃に俺たちはその村に着いた。
まあ・・・聞いていた以上に酷い有様だった。
だが俺たちにとっちゃありがたいことにそこらかしこに武器や防具が散らかっている。
それに崩れた民家を掘り返すとそれなりに金も出てきた。
小さい農村ではあったがそこまで苦労も無くこれだけの物が手に入ったんだ。
実にツイてる。
それに数人だが金持ちが混じっていたのかそれなりの装飾が施されたネックレスやイヤリング、指輪も出てきた。
なかにはどうしても外れなくって、身体ごと切り落としたのもあるが。
そういうのを専門に扱う奴等だっているしな。
問題ない。
一通り村を回っ他頃には、日も暮れてきていた。
しかたないので俺たちは村の近くで一夜を明かした。
ちなみに魔物の類なんて影さえ見当たらなかった。
そうそう、例の娘だが、ちょっと痛めつけてやったら静かになった。
もちろんそこまで酷いことはしてないぜ?
大事な商品だからな。
その翌日俺たちはちょっとした好奇心から村の近くの平野を訪れることになる。
というのも、昨日村の探索をしているときに崩れずに残っていた高台のような場所にのぼってな、見回すとその一辺だけ草の一つも生えてない場所を見つけたんだぜ?
気にならないほうがおかしい。
今にして思えば浮かれていたんだろう。
蒼牙盗賊団を結成して初の大収穫だったからな。
俺たちはそこで少し早い昼食をとることにする。
仮にあの商隊の男が近の村にたどり着いていたとしても・・・いや、順調に進んだとしても着くのは今夜ってところだ。
もう少しくらいゆっくりしたってかまわないだろう。
もちろん一応見張りはたてておく。
と、飯の準備をしていると見張りをしている男が何かいると騒ぎ出す。
俺はそいつと一緒に何か見つけたって言うほうに足を向ける。
なんだこいつ・・・女?何でこんなところで、それも裸で寝てんだ?
息も絶え絶えと言った様子だ。
もしかしてさっきの村の生き残りか?
それなりに整った顔をしている。
奴隷として売り払ったらそれなりの金になるだろう。
かといって生かしておくのは危険・・・か。
連れ帰るか、さっさと殺しちまうか。
俺がそんなことを考えていると期待に満ちた目で声を掛けてくる。
「おいっ、俺が見つけたんだ。かまわないだろう?」
まあ・・・そうだな。
すでに十分な儲けはあるんだ。
危険な橋を渡る必要も無い。
それにみんなストレスも溜まっている。
ここら辺で一発楽しむのも悪くはないかもしれない。
「好きにしろ。ただし、まだ殺すなよ?」
「分かってるって」
俺はみんなに伝えるためにこの場を後にする。
それに人がするのを見て楽しめるほど俺はまだ外れてはいない。
すこし距離を空けた頃・・・悲鳴が聞こえてきた。
元気な奴だ・・・ん?悲鳴?
俺が振り返るとーードサリーーと足元に何かがとんできた。
そこにあったのは・・・頭?
それもよく見知った、この一年間一緒に仕事をしてきた見間違えるはずの無い仲間の顔があった。
顔だけがあった。
驚きに声が出ない。
向こうを見ると先ほどまで倒れていた女が口元に血を滴らせゆっくり・・・フラフラとおぼつかない足取りでこちらに近づいてくる。
俺はその女に剣を向ける。
盗賊が好んで使うククリナイフと呼ばれるタイプの武器だ。
無手の女に・・・とは思うが仲間が殺されているんだ油断は出来ない。
女にその刃を向けゆっくりと後退する。
この女からは何か嫌な感じがする。
しかし、俺の意識は数歩下がったところで消えることになる。
一瞬、数秒にも満たない時間だったと思う。
女から意識を逸らしてしまったのが悪かった。
しまった、と思ったときには手遅れだった。
すでに俺の目の前には女がキスできるほどの距離まで迫っていた。
そして・・・。
この日俺たち蒼牙盗賊団は誰に知られる無く、本当にあっけなくその幕をおろした。
割と王道系ファンタジーのノリになりつつあるのではないでしょうか?
でもこの先もそうだとは限らない!
それが作者のクオリティー。
よろしければ今後ともよろしくお願いします。