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うきぐもがたり  作者: towa
第二章 竜の国――嵐を呼ぶ婚儀
7/25

其の四 最悪の初夜

黒くなった視界が明るくなったことに気づき、示詩は瞳を動かした。

瞼は閉じられていて、どうやら眠っていたようだということは分かったが、ではなぜ眠っていたかという答えは出てこない。

だが次の瞬間、示詩ははっとして目を覚まし、横になった体勢から起き上がった。


「気がついたかい」


声が聞こえた方を向くと、黒塗りの文机で何かを書いている座龍の姿があった。

机の脇に置かれた二つの灯籠によって仄明るく照らされた室内は、先ほど案内された黄色で埋め尽くされた部屋とは違うことを表している。

深い焦げ茶色の木造の壁は、示詩に、故郷である赤社の離宮、園恋宮を思い起こさせた。


「陛下…私は…」


座龍の落ちついた執務態度を見て、先ほどの野卑な様子は夢だったのかとほっと胸を撫でおろした示詩は、よほど己が疲れていたことを知った。

だが、こちらを見てにやりと笑ったその顔には、婚儀の席での優雅さのかけらもなく、示詩は撫でおろしたばかりの胸が一気に逆撫でされたのを味わい、顔を青ざめさせた。


「疲れてるところ、ごちゃごちゃと言っちまって悪かったな。この通り反省してるから許しちゃくんねぇか」


じわり、と手に汗が滲む。

夢、などではない。

やはり歳火国王の本質は、この野蛮な口調と態度そのものだったのだ。


「陛下…」


その呼びかけに何も答えないまま、座龍はそつのない動作で大股で示詩の方へ歩み寄ってきた。

大柄な座龍は、今日はじめて目にした竜ほどでないにしろ、たっぷりとした威厳と圧倒的な迫力に満ち満ちていた。おそらく、幾多の戦場をくぐり抜けてきたであろう経験と知識とが、この若い国王にそれらを与えたのだろう。

示詩はそんな座龍の威圧されるような雰囲気を肌でビシバシと感じながらも、冷静に分析していた。

示詩は、今更になって、自分がとても抜け出せそうにはない虎穴に頭から突っ込んでしまったような感覚を覚えていた。

百戦錬磨とも言われる軍事国家の長を相手に国家転覆を企むとは、いかにも無理難題なことのように思われてきてしまう。

しかし、それでも示詩は身がすくむ己の弱さを叱咤しながら、ことの経緯についての釈明を求めた。


「私は、一体どうしたのでしょう。ここはどこなのですか」


示詩の青ざめた顔を見下ろしながら、座龍はしゃがみこんで、寝台の上で身を起こす示詩の顔までぎりぎりに近寄って言った。


「あんたは、俺の話の最中にぶっ倒れちまったのさ。だから俺が寝所に連れてきて寝かせた」

「国王陛下みずから?」

「誰も控えさせてなかったからな。ちなみに、最初にあんたと会った所は、あれは客間だ。それも各国のお大尽なんかを呼ぶ時のとっておきの、な。あんたがあんまり強く寝所だと信じ込んで反応するもんだから、ついからかったんだよ」

「からかっ…」


示詩が絶句していると、座龍はさして悪びれもせずに「すまん、すまん」と謝った。


「寝所に入る前に、あんたには話しておきたいことがあったんだ。確か寝所へ案内する前に、客間へ通すように伝えろと言っておいたはずなんだがな」

「あ……」


示詩はまたも犯した己の失態に歯がみする思いだった。

示詩が座龍の態度に絶句してる間、家臣の者から受けていた説明に、そのことが含まれていたことは明らかだった。

だが、ここでどれだけ悔やんでも過ぎてしまったなら仕方がない。

それより、まだこれ以上胃の縮む話をさせられるのか、と身を構えたところ、座龍が安心させるように穏やかな笑みを見せたので、示詩はこちらから話を切り出すことにした。


「この私に、これ以上何をお望みになることがございますの?あなたは私を身一つにすることに成功し、そして赤社国に対しては十分にその力を見せつけることを成功させたではありませんか。…一体、何を企んでおいでなのですか?」

「へぇ…」


忌憚のないその疑問に、座龍は思わず目を見張らせた。

ただの高慢ちきで鼻持ちならないガキと思っていた小国の姫が、思いのほか色んなことに勘を働かせており、それがあながち間違ってもいなかったからだ。

座龍はご褒美を上げるかのように、頭を二回ほど撫でて答えた。


「俺が姫さんと赤社に何を望んでると、あんたは思うんだ?」

「……私がここへ嫁したことが、人質という役目をもってしているのは分かっておりましたわ。けれど、歳火国は私たちに対してそれ以外の要求を望みませんでした。代わりに軍事技術の提供、貿易規定緩和、こちらが涙を流して喜ぶような援助の数々を申し出た…私はこれを、体のいい脅しだととりました」

「ふむ。こんだけ条件をよくしてやったんだから、文句を言わずに言うことを聞け…ってな具合にかい?」


座龍の赤い瞳が、面白そうに光を宿した。


「ええ、そうですわ。我が国がこちらの国勢に劣ることは火を見るよりも明らかなことではございますが、それでも対外的には四竜連合国の一員ですもの。赤社に敬意を払わねば歳火は対面を保てませんわ。ただでさえ軍事国家として名を馳せているところへ、礼儀も分からぬとなれば、他国へたちまち隙を見せることになることでしょう。そうならぬよう、かつ、私たちに脅しをかけるには、赤社を骨抜きにした方が話が早い、そういう思惑があったのではと考えましたの」

「…こりゃ驚いたな。その綺麗な形の頭は、ただの飾りじゃねぇようだ」


その呟きは、示詩の推測がほぼ正解で間違いないということを示唆していた。

だが、座龍の素直な驚きの声に、示詩はかっとなってその事実を見過ごした。


「私を愚弄しておりますの!?」

「いや、褒めたつもりだったんだが、気を悪くしたなら謝ろう。すまねぇ」

「……それで、私の質問には答えて下さらないのですか、陛下」


まるで暖簾に腕押しするように手ごたえのない座龍の態度に拍子抜けし、示詩は本題に戻ることにした。

このまま自分の調子を崩されてはまた言い様に丸めこまれてしまうと懸念したのだ。

そんな示詩の様子を面白そうに眺めながら、相変わらず座龍は近距離を保ったまま、探るような眼で己の妻となった少女に笑みをよこした。


「いや、そこまで分かってるんなら話は早そうだな。それなら姫さん、あんたは何が望みだ?」

「え?」


またも質問に質問で返されてしまった示詩は瞬時に怒りを沸騰させたものの、座龍がますますこちらへ寄って来るのでやや後ろに退いた。

今まで気づきもしなかった距離の近さが、この時になってようやく示詩に相応の緊張感をもたらしていた。


―――考えて見れば、私、このように近くで男性を見たのははじめてだったのだわ…


突然どぎまぎとし始めた心臓を押さえるように胸に手をあてて、示詩は鼻先三寸の位置にいる座龍をただ見つめた。

だが、そんな示詩のときめきなど知る由もない座龍は、お構いなしにずばずばと本題に入り始める。


「この国の妃となる自覚はあるかい?」

「妃の役目は分かってるか?」

「この歳火の国風は、あんたなら分かってるよな」

「許せるか?」


心臓を高鳴らすのも忘れてあっけにとられた示詩を置きざりに、座龍は矢継ぎ早に質問を浴びせてきた。

知性など感じさせないその遠慮のなさに怒りを覚えたところへ、座龍はとどめとばかりに最後にこう問うた。


「そんで、俺の隣に立つ自信は、あるんだろうな?」


示詩の怒りは、とうとう膨らんで弾けた。


「この私が、その程度の覚悟もなしに嫁いでまいると思いまして!?愚弄なさるのもいい加減になさいまし!!」


気持ちいいほどのその啖呵のきりっぷりに、座龍は笑って膝を打った。


「よし、言ったな!そんだけの威勢がありゃこっちも安心して任せられるってもんだ」

「は?任せる、とは……」


にやり、と意味ありげな笑みを示詩に向けた座龍は、そのまま腰を上げると、寝所の入口まで行って扉を開けた。

重厚な鉄製の黒い扉がギィっときしんだ音をたてて開かれる。

すると入口の向こうには、明りを手にして暗闇に浮かぶ小さな少年の姿があった。

薄暗い廊下でさえなお輝く朱金の短髪、そして、こちらを射ぬくほどの強さで見つめている若草色の瞳を見ていると、示詩にわずかな既視感を覚えさせた。

それは…


「息子の竜脊りゅうせだ」


座龍をはじめて見た時と、良く似た感覚だった。


「今年で七歳になるが、中々手をつけられん悪餓鬼に育っちまってな。少々てこずるとは思うが、よろしく頼みたい」

「ご、ご子息がいらっしゃいましたの…!?」


どこの情報にもなかったそれは、初耳だった。

いや、この場合は寝耳に水といった方が正しいだろう。


「ああ、ちっとばかし込み入った事情があって、他国には伏せてあったんだが…正真正銘俺の子供だ」


示詩は、眩暈のする思いでそれを聞いていた。

子持ちの男の妃になるなど、どれほど位が高くて見目好く優しく逞しい殿方であれ、嫌だ。

それも、「いたらない息子だが、よろしく頼む、母上」などと、にこりともせずに挨拶するかわいげのない子供の母親など、絶対になりたくない。


―――なれるはずがありませんわ!


倒れずに済んだのは、二度と失態を見せたくはないという意地の成せる業でしかなかった。

それがなければ、示詩はすぐにでも卒倒していただろうと思われた。

怒りも、頂点を極めると悲しみと近しい感情になるものか、と示詩は思った。


(初夜も迎えぬまま…子持ち…。この私が…嫁いですぐに他人の………母親ですって?)


―――冗談じゃない!


「ご、ご、御冗談も、ほどほどにしていただかなくては困ります!私は、確かに陛下の隣に立つ覚悟はあると、この口ではっきりと申し上げましたが、それが他人の子を育てることと同義とは、夢にも思っておりませんでしたわ!失礼ながら、ご了承いたしかねます!」


あんな、引っかけの様な手口で言質を取ったつもりでいるのなら大間違いだ、と示詩は鼻息も荒く主張したが、相手はなんの痛みも感じてはいないようで、涼しい顔でこう言ってきた。


「そんなら、さっきのあんたの覚悟っていうのは、撤回するってこったな?」

「なっ…!」


したり顔でいう座龍は、まるで示詩の反応を予想していたかのように苦も無く弱点をついてきた。

示詩は、自分の決断を曲げるのが、ことのほか苦手なのだ。


「自信たっぷりに、あんなに強く啖呵を切ったってぇのに、それをもう翻すのかい。……案外に、根性がねぇお姫さんだったんだな」

「うっ…!」

「残念ですよ、示詩殿」


座龍は、嫌みたらしく、出会った当初の慇懃さで、示詩の心を揺さぶるセリフを投げつけてきた。

ここで「やはり…」と意見を翻しては、座龍の思うつぼだ。

だが、自分の意地を張りとおしたところで、もはや己の希望に沿う道は用意されていないことに、示詩は気が付いてしまっていた。

示詩の脳裏には、一歩、また一歩と自分から遠ざかっていく王位簒奪計画の図が、ありありと浮かぶようだった。

国王ですら御するのが至難の業でありそうなのに、その上息子がいては、もはや己の望みは、計画倒れとなりそうな状況を示していた。


―――已む無し、か。


どの道嫁いできてしまった手前、朱に交わるほか仕様がないのだ。

その上、言質もとられている。

示詩は渋々、とても苦り切った顔で、挨拶をするため軽く身支度を整えた。


「よ…よろしく、お願い申しあげますわ、陛下、…竜脊様」


よろよろと寝台から立ち上がると、一礼し、歯噛みしながらそう口にする。

竜脊はそれを受けて、生意気そうな大きい釣り目を、つっと動かしただけだった。

こんな子供には絶対によろしくなどしたくはなかったが、示詩はつい先ほど、言ってしまったのである。


―――この私が、その程度の覚悟もなしに嫁いでまいると思いまして!?愚弄なさるのもいい加減になさいまし!!


座龍の、おそらくは「母親になる覚悟はあるか」といった意味を含んでいたであろう質問の数々に対して、「あるに決まってるだろう」というような返答をしてしまっていたのだ。

それが例え、卑怯極まりない罠のようなものだったとしても、示詩はそれに気付かずに了承してしまった。

気位の高い示詩から「やっぱり無理です」なんていう言葉が出るはずもなく、結果として、示詩はまんまと歳火国王・座龍の術中にはまってしまったのである。


「おお、了承してくれたか!そうこなくっちゃあな」

「……私に、その役割を負わせるためにこの婚儀を企てたのでございましょう」


示詩のたっぷりの皮肉を、座龍は笑っていなした。


「すまねぇな。こいつには生まれた時から母親がいないもんで、侍女頭や侍女たちに任せておいたんだが、なにしろ言うことをきかねぇもんで、格別わがまま放題になっちまった。そんで、手を焼いた周りのモンから正室を娶れって毎日のようにせっつかれて、うんざりしたところに、家臣からあんたのことを聞かされた。赤社の姫さんなら、教養も身分も申し分ねえ、おまけに連合国一の美貌ってのを聞いて、二つ返事で決めちまったのよ。…しかし、これほど度胸の据わった姫さんとまでは聞かされちゃいなかったからな、運がよかったってなもんさ」


ご機嫌な様子で語りかけてくる座龍とは裏腹に、示詩はどんどんと自分の気持ちが沈んでいくのを味わっていた。

つまりは、手に余る子供のしつけ係を探していたところ、隣国に売れ残った姫がいて丁度良かった、と。

示詩には、座龍の言葉はそう翻訳されて聞こえてきた。

ぴくぴくと柳眉が跳ね上がるのを自覚しながら、示詩は我慢ならずにこう言った。


「それでは陛下、私たちを必要以上に威嚇したあれは、なんだったのでしょう。黄峰などという格別足場の悪い道を使わせてわざわざ遠回りをさせたり、騎竜兵を使って急に目的地を変更させたり、伴の者を一人残らず国へ返したり…私を竜脊様の為に召喚させるためとはいえ、それほどの趣向を用意なさったのは、他に思惑があったためではございませんの!?」


悲鳴のような示詩の問いかけに対し、座龍はあっけらかんとこれに応えた。


「そりゃあ、さっき姫さんが言った言葉の通りだ。ようは、こっちが上だってことを十分に分からせる必要があったんだ。そうじゃねぇなら、大した見返りもなしにこっちの貢ぎモンをくれてやるわけにはいかなかったからな。…ああ、だが、黄峰を使って遠回りさせたのは、それとは別だったな」

「なんですの!?」


せめてもう少しまともで大きな理由が欲しいと、示詩は優雅さも意識せずに息巻いた。

そうでなければ、あまりに自分が惨めに思えたからだ。


「ここが、しょっちゅう戦をしてんのは知ってるだろう。特別警戒地域もコロッコロ変わるのがこの歳火って国だ。お姫さんが街道に出るその日に、ちょうど賊がうろついてるって情報が入ってな。賊といっても、盗賊なのか、反乱を起こした奴らか、それとも敵国の軍なのか、そんときには何にも分かっちゃいなかった。あんたらに事情を言わなかったのも、もしかしたらその賊の間者が紛れ込んでるかもしれねぇと警戒したためだ。だから、ちと辛いとは思ったが、街道を通るよりは、ひとけのねえ山道を通らせた方が安全だと判断して、あんまり日もねぇから騎竜をよこしたのさ」


それは、非の打ちどころのない、いたって正当性のある理由だった。

だが、その事実は示詩を落胆させるばかりだった。

それでは、つまるところ、示詩は竜脊の世話をするためにあのように辛い思いをして山道を通り、お世辞にも華麗とは言い難い婚儀を我慢し、この野卑で遠慮のない国王の元へ嫁がされてきたということになる。

茫然としていると、座龍は竜脊に


「さ、お前はもう寝る時間だ。部屋に戻んな」

「まだ眠くない」

「眠くなくても子供は眠らなくちゃならねーんだ。それが仕事だからな」

「父上、あの人が俺の母上か」

「そうさ。俺はこれから母上に用があるから、お前はもう戻れ。そうしたら、竜の卵を明日見せてやろう」

「ほんと!?約束だぞ!!」


などといって、うまく言いくるめて自室に下がらせた。

その会話からも、示詩は男親の頼りなさというものを既に感じてしまっている。

いかな百戦錬磨の偉大なる王とはいえ、自分の息子には存分に甘くなってしまうようだった。


「そんじゃ、姫さん。行くとするか」

「突然、どこへ行くというのです」


目の前に大きな手のひらを差し出してきた座龍に対して、示詩はにべもなく言った。

この夫には、もはやかけらも親しみを抱けなかった。


「どこへ、とは野暮なこったな。婚儀を挙げた夫婦がその晩やることといったら、一つしかねえだろう。ここはあんたの寝所だからな、俺の部屋へ行って、広々とした寝台で愛を交わし合おうじゃねぇか…」


座龍がやに下がった顔でぬけぬけとそんなことを言ったので、示詩はとうとう堪忍袋の緒がきれた。


―――パシィッ!!


座龍に向けられた手の平を思いっきり払い落とすと、示詩はつりあがった目で喧々囂々と言い放った。


「おことわり、申し上げますわ!国王陛下!私、今日は疲れ切っていてとてもそんな気分ではございませんの、陛下を満足させられるとも思えぬゆえ、このまま休ませていただきます!!」


示詩の物凄い剣幕に圧された体で、座龍は払われた手をさすりながら、「そ、そうかい。それもそうだな」と言ってさほど残念な素振りも見せずに自室へ戻っていった。

取り残された示詩は、自分で言った手前表面には出さなかったが、そこであっさりと引きさがる座龍にもまた、腹を立てた。


「この、花も恥じ入るほどの美貌を誇る私を、初夜に一人になさいますの!?」


思わず口に出して叫んだが、虚しいばかりだったので本格的に寝入る準備をすることにした。

部屋係を呼ぼうとも考えたが、それすら億劫になるほど疲れ切っていたので、全ては明日に任せ、怒りも明日へ持ち越すことにして、寝台へ倒れこむように寝そべった。

薄れていく意識の中で、示詩は、あの生意気な目をした子供を懐柔してやる、と密かに決心していた。

そう、半ば諦めの方向へ向かっていた示詩の王位簒奪計画は、怒りを持ってして息を吹き返していた。

転んでもただでは起きないどころか、状況が窮すれば窮するほど、この姫は燃え上がるようだった。


―――待ってなさい…私をこけにした償いはきっちりとお支払いいただきますわ!


示詩が眠りの中でそんな熱意を燃やしているとき、別の部屋では、「へっくしゅん!」と違う場所で同時にくしゃみをする父親と子供の姿があったなどとは、もちろん誰も預かり知らぬことである。











第二章 竜の国――嵐を呼ぶ婚儀・了



せっかくの初夜がこのありさまですよ…

甘くなるのはいつになるやら…

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